ホンダ「N-BOX」が首位を死守! 24年7月新車販売、ついに見えてきたN-BOX“常勝の条件”とは

N-BOX連続首位

N-BOX(画像:本田技研工業)

N-BOX(画像:本田技研工業)

 全国軽自動車協会連合会(全軽自協)は8月15日、2024年7月期の軽四輪車の通称名別新車販売台数(確報)を発表した。

 発表によると、6月に続いてホンダ・N-BOXが首位を維持し、2位はスズキ・スペーシア、3位はダイハツ・タントと、トップ3の顔ぶれは変わらなかった。

 本稿では、わずか1か月で首位に返り咲いたN-BOXが、今後もこの地位を維持できるかどうかを探り、その成否に影響を与える要因について分析する。

販売台数は前年比13%増

過去1年間の販売台数推移(上図)、過去1年間の販売比率推移。ともに全軽自協の公表資料を基に筆者作成(画像:小城建三)

過去1年間の販売台数推移(上図)、過去1年間の販売比率推移。ともに全軽自協の公表資料を基に筆者作成(画像:小城建三)

 2024年7月期の軽自動車新車販売台数は、前年同月比で12.9%増の14万1980台となり、8か月ぶりにプラス成長に転じた。軽乗用車も前年を約10%上回る10万9020台を記録した。

 ランキングの1位から3位までの車種と販売台数は次のとおりだ。首位のN-BOXは1万6500台を販売し、前月比で1.8%減となった。2位のスペーシアは前月比5.2%増の1万3703台、3位のタントは前月比5.4%増の1万2576台で、前月と同じ順位をキープした。N-BOXは前年同月比では7.9%減となり、2024年4月以来のマイナスを記録したが、2か月連続で首位を維持している。

 これら3車種の過去1年間の販売台数の推移(図)を見てみると、N-BOXは販売減から回復できず、スペーシアは販売が乱高下しながらも下げ止まり、タントは力強い回復から一服感を見せている。

 直近の2か月では、販売傾向に明確な上げ下げが見られず、こう着状態といえるが、この傾向は3車種間の販売比率を比較しても同様である。

 N-BOXとスペーシアの販売台数差は、前月の4378台から3427台に縮まり、1000台近く差が縮まった。9月の決算月を控え、両者の台数差はさらに縮まる可能性がある。また、タントは認証不正以前の販売水準に近づいている。タントのモデルチェンジは2025年5月に予定されているが、現在の販売水準を維持できるかが、認証不正による生産・出荷停止からの

「回復の指標」

となる。

普及台数は過去最多

乗用車ベスト15 前年同月比(画像:全国軽自動車協会連合会のデータを基にMerkmal編集部で作成)

乗用車ベスト15 前年同月比(画像:全国軽自動車協会連合会のデータを基にMerkmal編集部で作成)

 全軽自協は8月5日、2023年12月末時点の世帯当たりの軽四輪車普及台数を発表した。普及台数は100世帯当たり

「54.49台」

で、2023年の54.28台から2年連続で増加し(0.4%増)、算出可能なデータとしては“過去最多”となった。これにより、国内市場で軽自動車の普及が着実に進んでいることが示された。

 都道府県別の世帯当たり普及率(世帯当たりの台数)では、1位が長野県、2位が鳥取県、3位が島根県、4位が佐賀県、5位が山形県で、いずれも1.0を上回った。特に長野県は5年連続で1位を維持し、普及率は

「1.04」

となっている。

 また、トップ5以外でも普及率が0.9以上だったのは、福井県、山梨県、新潟県、和歌山県、沖縄県、徳島県、宮崎県、富山県の8県であり、地方を中心に軽自動車が日常の移動手段として広く利用されていることが浮き彫りとなった。

一方、普及率が低い都府県トップ3は、1位が東京都、2位が神奈川県、3位が大阪府で、いずれも

「0.3以下」

となっている。このことから、都市部では自動車よりも公共交通が主な移動手段として定着していることが確認できる。

ホンダの販売重点地域

2023年通年の販売台数およびシェア(左図)、2024年1月から7月累計の販売台数およびシェア。ともに全軽自協の公表資料を基に筆者作成(画像:小城建三)

2023年通年の販売台数およびシェア(左図)、2024年1月から7月累計の販売台数およびシェア。ともに全軽自協の公表資料を基に筆者作成(画像:小城建三)

 普及率では地方が都市部を上回っていることが明らかになったが、都道府県別に販売台数やシェアを分析すると、

「ホンダの販売重点地域」

が見えてきた。2023年の販売台数が多い都道府県は、1位が愛知県(8万6709台)、2位が埼玉県(7万2194台)、3位が静岡県(6万1647台)、4位が福岡県(5万6969台)、5位が千葉県(5万4959台)だった。この5県の合計販売シェアは、

・スズキ:29%
・ダイハツ:29%
・ホンダ:23%

となっている。

 一方、普及率が高い長野県、鳥取県、島根県、佐賀県、山形県の販売シェアは、

・スズキ:31%
・ダイハツ:30%
・ホンダ:21%

で、ホンダは販売台数が多い地域でより高いシェアを獲得している。

 さらに、2024年1月から7月の累計を分析すると、販売台数が多い5県でのシェアはスズキ(40%)、ダイハツ(14%)、ホンダ(23%)で、普及率が高い5県のシェアはスズキ(43%)、ダイハツ(13%)、ホンダ(21%)だった。

 ホンダの全国平均販売シェアは約22%だが、販売台数が多い地域でのシェアが高いため、これらの地域での販売に重点を置いていることがわかる。一方、スズキは全国平均の販売シェアが42%に対して、販売台数が多い地域では40%で伸び悩んでいる。

 ホンダの軽自動車販売におけるN-BOXの販売比率は約8割で、販売の大部分を担っている。今後、ホンダが

「販売重点地域で好調な販売を維持できるかどうか」

が、N-BOXの成功に大きく影響する。軽自動車の月間販売ランキングは今後も注目されており、N-BOXが首位をいつまで維持できるかがひとつの焦点となるだろう。

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