渋滞の事故リスクは、いつもの「40倍」以上! ベストな回避術は何か

渋滞と事故

渋滞中の高速道路(画像:写真AC)

渋滞中の高速道路(画像:写真AC)

 NEXCO中日本管轄の高速道路においてリニューアル工事が行われている。中央道、名神、長野道、東名などの各高速道路は通年で工事が進行中だ。工事の影響で渋滞が発生すると事故が起きる可能性もあり、渋滞情報から目が離せない状況である。

 内閣府が発表した2022年度の交通安全白書によれば、高速道路における事故類型別の事故発生割合は、車両相互事故が全体の92%を占めている。そのうち追突が

「72.0%」

とダントツで多い。法令違反事由も前方不注意と動静不注視で合わせて67.1%と過半数以上だ。低速域での事故が顕著に多いことが分かる。

 また、阪神高速道路の「阪神高速道路の交通安全対策 第3次アクションプログラム2017‐2021」には、阪神高速道路における渋滞時の事故リスクは

「非渋滞時の8倍」

と報告されている。NEXCO西日本も2024年3月27日のニュースリリース内で、渋滞発生時の死傷事故率は非渋滞時の

「40倍」

としている。このように危険と隣り合わせな渋滞は積極的に回避したいところだ。

渋滞回避がいい事づくしなワケ

渋滞ピーク時間帯の回避効果(画像:NEXCO中日本)

渋滞ピーク時間帯の回避効果(画像:NEXCO中日本)

 渋滞時の事故リスクは高い。渋滞回避の最大のメリットは、事故に遭う可能性を低下させることだ。安全に目的地に到着できなければ本末転倒である。

 NEXCO中日本は過去の所要時間実績に基づき時間帯をずらすことにより、渋滞を避け所要時間が短縮される例を報告している。

 例えば、2019年1月2日に東名高速道路(上り線)静岡ICから東京ICまで利用する場合、静岡ICの通過時間を15時から6時にずらすことにより、約2時間の短縮が可能と説明している。渋滞を回避することにより、所要時間を短くできるのだ。

 渋滞に引っかからないということは、渋滞に巻き込まれた時に感じるストレスを経験しなくて済むということになる。

 加えて、サービスエリアやパーキングエリアでの混雑も避けられる。もちろんトイレも混んでいない。長距離ドライブをストレスフリーで過ごせるのであれば、渋滞回避のメリットは大きいだろう。

最新渋滞回避術

「渋滞回避サンクスキャンペーン」(画像:NEXCO中日本)

「渋滞回避サンクスキャンペーン」(画像:NEXCO中日本)

 渋滞回避は事故回避とともに

・時間
・ストレス

を軽減するなど、いいことづくしであることを紹介してきた。では、どうすれば、効果的に渋滞を回避できるのだろうか。やはり一番は、各高速道路会社が運営するサイトで渋滞予測情報を確認するのが手っ取り早い。

 例えばNEXCO中日本のドライバーズサイトを見てみると、リアルタイム交通情報や渋滞予測カレンダーの閲覧に加え、渋滞予測を加味したルート検索を行える。渋滞ポイントも確認できるうえ、工事の規制情報なども閲覧可能だ。事前にこうした情報を収集して渋滞回避するためのプランをたてることができるのだ。

 NEXCO中日本が実施している渋滞回避のための「渋滞減らし隊キャンペーン」「渋滞回避サンクスキャンペーン」や「料金調整(ETC)」を活用するのもいいだろう。詳細はウェブサイトを確認してもらいたいが、渋滞減らしたいキャンペーンを実施している東名リニューアル工事東京IC~東名川崎IC間では事前登録の上、工事期間中に対象ルートを5回走行するごとにQUOカード1000円分がプレゼントされる。

 さらに、ナビなどに搭載されているVICSも活用できる。VICSは渋滞や交通規制等の道路情報を、FM多重放送やビーコンを利用してカーナビに送るシステムだ。リアルタイムで情報更新されるので心強い。道路情報だけでなく災害や気象条件等による規制情報なども提供されている。最大約200kmの範囲で情報を受け取れる。そして、

「プローブ情報」

と呼ばれる、車両の走行情報を活用することもできる。ETC2.0では、自動車メーカー各社が保有しているデータを元に交通情報が総合化され、ナビと連動して情報提供されているのだ。ETC2.0では最大1000kmの広範囲で情報収集が可能だ。

未来の車は渋滞知らず

渋滞中の高速道路(画像:写真AC)

渋滞中の高速道路(画像:写真AC)

 日進月歩の渋滞回避に役立つ情報提供システムだが、今後の鍵は自動車と交通インフラのIoT化だ。現在すでに多くの車はプローブ情報を発信している。自動車と交通インフラはすでにインターネットとは切り離せない状態にあり、情報のリアルタイム化がさらに進めば、より正確な交通情報を即時共有することが可能となる。

 そのうえで、自動運転技術の進歩も欠かせない。自動運転車両が周囲の車から発信される車両情報を取得し、自動運転に反映させることにより渋滞自体を緩和させることが期待できる。サグ部(下り勾配から上り勾配に変わる凹型の構造を持つ場所)の渋滞など、人間の運転によって発生する渋滞に対して、自動運転は効果的な解決策と言える。自動運転車にAIが導入されるようになれば、どんどん情報を吸収して学習し、運転技術を向上させていくことができるだろう。

 これらの実現には解決しなければならない問題が多い。しかし、自動運転技術とAIによる自動車の進化と普及は、すぐそこまで迫っているのだ。現に昔はマニュアル車が普及していたが、近年は多くの人がオートマ車を運転している。これは、「少しでも運転の負担を軽減させたい」というドライバーが多いことにもつながっており、渋滞回避に貢献できる自動運転も“ストレスや負担を軽減できる技術”として、魅力的に感じる人も多いはずだ。

 本稿では渋滞回避がいいことづくしであることを取り上げたが、将来的には、渋滞は

「前時代的な話」

だと笑われる日が来るかもしれない。

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