米国人、実は「中国EV」に興味津々! 40歳以下のなんと“8割”が支持、米企業の調査で明らかに バイデン100%輸入関税は効果があるのか

米国の購買欲

BYD「シーガル」(画像:ユーザー3204)

BYD「シーガル」(画像:ユーザー3204)

 2024年5月22日、米国の調査会社オートパシフィックが、中国ブランドの電気自動車(EV)購入に関する調査結果を発表した。これは、同社が隔月で実施しているガソリン価格の影響に関する調査の一環として行われたもので、調査対象は米国在住で自動車を所有している18歳から80歳までの約800人だ。

 調査の結果、中国ブランドのEVには一定の許容度があり、購入意欲を示す人も一定数いることがわかった。現在、米国では中国ブランドのEVは販売されていないが、仮に販売された場合、一定の販売台数が見込めることが明らかになった。

 米国市場への参入を狙う中国自動車メーカーにとっては“追い風”となる調査結果だが、米国政府は8月1日から中国製EVの輸入関税を現在の25%から100%に引き上げる予定だ。

 米中貿易摩擦の収束が見えないなか、中国自動車メーカーが市場参入を成功させるには相当なハードルがあるが、今回の調査結果をもとに、米国人が抱くEVの理想像を探ってみた。

中国EVに興味津々の若者

オートパシフィック調査結果。生産地が米国生産と米国/中国以外の購買欲に関する調査結果(画像:オートパシフィック)

オートパシフィック調査結果。生産地が米国生産と米国/中国以外の購買欲に関する調査結果(画像:オートパシフィック)

 調査結果によると、中国ブランドのEVを「必ず」または「おそらく」購入すると回答した人は36%で、この数字は40歳以下のミレニアル世代とZ世代では

「76%」

に上った。一方、60歳以上のシニア層で同様の回答をした人の割合は26%にとどまり、若い世代でも中国ブランドに抵抗のない層が増えていることがわかる。

 米国ではまだ市場に出回っていない中国ブランドのEVに高い購入意向を示した40代以下の若い世代は、インターネットやSNSを通じて、各中国自動車メーカーがどのようなEVを販売しているのか、その実態を把握した上で好意的な回答をしたようだ。

 また、EVの生産国に関する質問では、すべての年齢層で「米国で生産されたEVを購入したい」と回答した割合が「米国外で生産されたEVを購入したい」と回答した割合を上回った。中国の自動車メーカーが米国の隣国であるメキシコやカナダでのEV生産を増やすと予想されるなか、「バイ・アメリカン」が支持されていることがよくわかる。

 この結果が示しているのは、EVを選ぶことがスマートフォンを選ぶことに似てきているということだ。従来のようなクルマの機能面よりも、

・エクステリアデザイン
・インテリア
・コネクティビティ
・操作性

などを重視する傾向が強まっているのだ。実際にディーラーに行かなくても、ネットで多くの情報を収集できるようになったことも、こうした傾向に拍車をかけている。

情報漏えい懸念も価格魅力

プライバシーの懸念に関する調査結果(画像:オートパシフィックホームページ)

プライバシーの懸念に関する調査結果(画像:オートパシフィックホームページ)

 一方、中国ブランドのEVについては、情報漏えいなどプライバシーへの懸念があることもわかった。

 全世代で、7割以上の回答者がプライバシーへの懸念を示している。今後、EVはスマートフォンやスマートウオッチなど、家庭内で使用されるさまざまな電子機器と連携して使用されることが予想されるため、個人情報の流出に対する懸念が高まっていることを裏付ける結果となった。

 また、これらの回答は、バイデン政権がTik Tokの利用を制限した動きとも呼応しており、中国製品に対する警戒感が米国消費者の間に広がっていることを示唆している。

 中国ブランドのEVを購入したい理由については、価格が魅力的という回答が最も多く、Z世代のような経済的に余裕がない層の購買意欲が高いことを示している。

 とはいえ、未発売の中国ブランドEVへの関心も高いという調査結果が出ており、SNSやインターネットの普及によって、世界各国の距離が大きく縮まっていることを証明しているようだ。まさに

「イッツアスモールワールド」

だが、裏を返せば、米国の消費者の間でEV購入意欲が高まっていることを示しているともいえる。今回の調査結果は、手頃な価格がEV購入の刺激に効果的であることを明確に示している。

米市場に潜む需要

BYD「シーライオン」(画像:iMoD公式)

BYD「シーライオン」(画像:iMoD公式)

 中国の自動車メーカーは、米国隣国でEVの生産体制を整備し、米国市場への参入機会を探っている。中国ブランドのEVが米国市場に参入するのは時間の問題だと認めざるを得ない。

 米国政府が高い輸入関税を課したとしても、低い製造コストで生産する中国自動車メーカーの競争力にかなわないことは明らかだ。

 一例として、比亜迪(BYD)のEVラインアップには

・小型EV「シーガル」
・クーペスポーツタイプ多目的車(SUV)「シーライオン」

があり、価格は1万2000~2万5000ドル(約180万~400万円)を達成している。米国で販売されているEVの平均価格は約6万ドル(約960万円)なので、BYDのEVに100%の輸入関税がかかったとしても、競争力は維持できるだろう。

 いうまでもなく、中国の自動車メーカーはこの調査結果を歓迎している。米国市場に一定の需要があることを知った彼らは、これまで以上に米国市場への進出を加速させるに違いない。

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