鈴木宣弘×森永卓郎 日本を直撃<物価高>。食料を外国に売っている場合じゃないと各国が輸出規制に走り…鈴木「万が一核戦争が起きれば日本に餓死者が」

(左)鈴木宣弘 (右)森永卓郎

(写真提供:講談社)
農林水産省の発表によると、2022年度の日本の食料自給率(カロリーベース)は38%だったそう。そのようななか、「いざ食料危機が起きたとき、大都市の住民は真っ先に飢えることになる」と訴えるのは、経済アナリストの森永卓郎さん。そこで今回は、東京大学特任教授・鈴木宣弘先生と森永さんの著書『国民は知らない「食料危機」と「財務省」の不適切な関係』から一部を、お二人の対談形式でお送りします。

* * * * * * *

【写真】鈴木宣弘さん「日本のように食料自給率が低い国は、食料が買えなくなる危険がある。一番怖いのはそこだと思うんですよ」

アメリカより物価が上がる日本

森永 ウクライナ戦争で、「食料なんて海外から輸入すりゃいいんだ」じゃダメだってよくわかったはずです。

2023年6月の日本の消費者物価指数は、アメリカを上回りました。あれだけインフレだと騒がれているアメリカより、日本の物価上昇率のほうが高かったんですよ。

なぜそうなったかと言えば、食品価格の上昇が日本を直撃しているからです。

これまでは食料をガンガン輸出していた国でも、戦争の不安や、気候変動による干ばつの影響などに直面すると、まず自分の国で必要な分を確保しようとする。いまや世界中がそうした行動に出ています。

輸入ばかりしている日本

森永 そうなると当然輸出に回す食料が減り、値段が上がるので、輸入ばかりしている日本が一番被害を受ける。

いまさかんに危機感が煽(あお)られている「有事」には、これと同じことが、より極端なかたちで起きるのです。

『国民は知らない「食料危機」と「財務省」の不適切な関係』(著:鈴木宣弘・森永卓郎/講談社)

鈴木 森永先生のおっしゃる通りです。

世界中の国が、食料を外国に売っている場合じゃないと、輸出規制に走っています。その結果、食料価格が上昇し、簡単に買えなくなりつつある。

値段が上がるだけでは済まず、いずれは輸出してくれなくなることも考えられます。

食料が買えなくなる

鈴木 インドは世界2位の小麦生産国ですが、ウクライナ戦争の影響で、小麦価格が上昇したことで、国内の安定供給のため小麦の輸出を禁止しました。

それに加えて、2023年7月、インドは米の輸出も禁止してしまいました。

小麦の輸出が減り、価格が高騰すると、代わりに米を食べようということで、代替需要が発生します。その影響で今度は米の価格にも上昇圧力がかかってくる。いま世界の食料価格はそんなふうに連動して上昇している。

インドの動きを見て、これは危ないということで、同調する国が増えています。いま世界で食料の輸出規制を行う国は30ヵ国を超えています。

この動きが広がると、日本のように食料自給率が低い国は、食料が買えなくなる危険がある。一番怖いのはそこだと思うんですよ。

世界のどこかで核戦争が起きれば日本人は飢え死に

森永 もっと極端な状況だって考えられるんです。

いまロシアが暴走してウクライナ戦争において核兵器を使用することが懸念されていますが、プーチン大統領が核兵器を一発でも使えば、世界の食料事情は一変してしまう。

核戦争が始まれば、どの国も自分たちの食料確保が最優先になる。もうだれも食料を輸出しようとしなくなります。

鈴木 『世界で最初に飢えるのは日本』でも紹介しましたが、核戦争が起これば、世界の物流が止まってしまいます。核爆発による破壊と被爆の影響を抜きにしても、それだけで日本は飢えてしまうのです。

アメリカのラトガース大学が核戦争による餓死者数を試算していますが、それによれば、核戦争で世界貿易が止まった場合、日本の餓死者は0.72億人~1.25億人となっています。

※本稿は、『国民は知らない「食料危機」と「財務省」の不適切な関係』(講談社)の一部を再編集したものです。

ジャンルで探す