「えっ…オフィスなの?」 本社移転から1周年を迎えた日本ミシュランタイヤの「進化」を見に、群馬の新オフィスへ行ってみた

日本ミシュランタイヤの本社機能移転から1周年の「進化」を実際に現地で知ることができる、記者発表会が開催されました。

「つながる」「出会う」「ひらめく」空間・場所がテーマのPARK棟

 日本ミシュランタイヤは2023年8月、日本における事業開始の地である群馬県太田市へ本社機能を移転しました。2024年10月には、コラボレーションを創出する新社屋「PARK棟」の開所式が行われたばかりで、人・利益・地球の価値創造のもとに社員が提案する自由な働き方を実現するため、今後さらに進化が加速していくことを感じさせます。

正門をくぐるとすぐに見えてくるPARK棟は、「つながる」「出会う」「ひらめく」のすべてができる空間・場所がテーマ

正門をくぐるとすぐに見えてくるPARK棟は、「つながる」「出会う」「ひらめく」のすべてができる空間・場所がテーマ

 今回、日本ミシュランタイヤの本社機能移転から1周年の「進化」を実際に現地で知ることができる、記者発表会が開催されました。

 正門をくぐるとすぐに見えてくるPARK棟は、「つながる」「出会う」「ひらめく」のすべてができる空間・場所がテーマとなっており、みんなが楽しく集まれるようにという社員の思いを取り入れて設計された建物となっています。建築コンテナを採用した立体的かつ個性的な外観は、それだけで一歩先の自由な働き方が想像できるように感じました。

 中に入ってみると、壁や仕切りがほとんどなく、大きな吹き抜けの開放感ある空間と、そのまわりと上階に小さなスペースを多く配置することで、立体的に人の視線が交わりやすい工夫が感じられます。小上がりのような和室もあり、日本人にはホッとひと息つける場所、海外から来た人には日本文化に触れてもらえるようなスペースとなっています。

 このPARK棟は環境にも配慮したデザインや施工となっています。その特徴として、部材点数を削減するシンプルで無駄のない構造としていること、部分的に下地処理のみで内装を仕上げ、壁紙や接着剤を廃してメンテナンスのしやすさに配慮していること、シルバー塗装の外装や屋根処理によって、遮熱効果を高めていることなどが挙げられます。設計・施工は群馬県内の事業者に発注しており、輸送時のCO2削減などにも配慮したとのことでした。

そもそもなぜ群馬県に本社機能を移転した? その理由とは

 そんな心地よい空間で行われた記者発表会は、冒頭で日本ミシュランタイヤ社長の須藤元氏より、移転1周年でわかったさまざまな「進化」が語られました。

記者発表会にて登壇する日本ミシュランタイヤ社長の須藤元 氏

記者発表会にて登壇する日本ミシュランタイヤ社長の須藤元 氏

 そもそも、本社移転に至った経緯としては、コロナ禍を経たことが大きかったといいます。コロナ禍以前は東京本社に130人、群馬に240人が在籍しており、勤務地をベースとしたキャリア選択となっていたことや、複数拠点による分散投資、知財の分散、他部署との交流や協業の機会が少ないといったジレンマを抱えていたのです。

 しかしコロナ禍を経て社員はリモートワークをマスターする一方で、対面で仕事をすることの価値を再認識。きっと、ポストコロナでは新しい働き方ができるはずだということと、災害等によって都市機能が停止した場合のリスクも懸念されていたことから、本社移転を決断しました。

 実は群馬県は関東の中で最も震度4以上の地震の回数が少なく、過去10年間で罹災(りさい)世帯が最も少ないというデータがあるそうです。

 台風の影響を受けにくく、全国で水害と土砂災害が最も少ないレベルであることから、群馬県は事業継続率が高いと判断。都心からも通える距離であるということも決断を後押ししたようです。

社長が語る、移転1周年でわかったさまざまな「進化」とは

「進化」の1つめは、人の尊重ということで、部署横断型意見交換会や快適なオフィスをつくるための勉強会などを行い、部署間協業の活性化が進んでいることです。

 社員300人が参加した「ワクワクフェスティバル」などさまざまなイベントを行い、どの部門がどんなことをやっているのかを互いに知ることでキャリアパスが広がっているといいます。これによって「集合知」を結集した意思決定ができるようになっていることは大きな進化だと感じました。

日本ミシュランタイヤの新オフィスに展示された同社製タイヤ

日本ミシュランタイヤの新オフィスに展示された同社製タイヤ

「進化」の2つめは利益の尊重ということで、2024年の物流問題に群馬大学や近隣企業と産官学で取り組み、成果を確認できたことです。CO2排出量を見える化し、自動リポート生成によって整備作業者と運行管理者の間で同じ認識が持てるように。

 繁忙期前の計画的なタイヤ購入や交換につなげる可能性や、緻密な管理で効率的に摩耗末期まで使い切ることの重要性を示しています。これによって、人にも地球にもやさしいソリューションを可能にできることを確認したといいます。

「進化」の3つめは地球への尊重で、持続可能な事業展開への取り組みを社内だけにとどまらず、地域の子どもや学生、企業や自治体とともに広げていけること。地域とのつながりが増え、人材育成やボランティア活動に取り組むことで、ダイバーシティとインクルージョン、サステナビリティへの意識が着実に高まっているといいます。

 また、移転前にはなかったという「ビジネス以外での協業」が行われたことも進化といえそうです。同じ群馬県太田市に拠点を置くSUBARUから、日本ミシュランタイヤのイベントへの応援参加やフォーラムでのトークセッションなどがあり、そういった取り組みを今後も積極的に行っていきたいと語っていました。

「群馬から世界へ」 働き方が変われば、ユーザーに届く製品がよりよくなる

 続いて人事部 デベロップメントパートナーの武内良憲氏より、新たな働き方に関する社内アンケート結果が発表されました。移転前の働き方と比較した満足度や、ワークライフバランス、設備や環境などについて、すべての質問で半数以上が「満足・非常に満足」と回答。

 とくに、勤務形態が部署・個人に任される現在の働き方に関して「上司から信頼されていると感じられる」「自身の業務マネジメントスキルを成長させる機会になる」といったポジティブな回答が多かったことが印象的でした。

新社屋内の和室スペースに腰掛ける筆者のまるも亜希子

新社屋内の和室スペースに腰掛ける筆者のまるも亜希子

 こうした快適な職場環境を整えるプロジェクトはまだまだ進行中であり、PARK棟の活用や、信頼された社員が自主性をもってコラボレーションを広げていくという「ABW(Activity based working)」を用いることで、今後も進化し続けていくことが語られました。

 発表後にはPARK棟の見学ツアーがあり、実際に2階やテラスまで見てまわることができましたが、こんなに開放的で視界と風通しのいい建物は見たことがないと感じたほど。おいしいコーヒーがいつでも入れられるカフェスペースがあり、数人でワイワイと話したいときはもちろん、ひとりで考えごとをしたい時にもぴったりのスペースもあるところが魅力的です。

「群馬から世界へ」という言葉の通り、社員ひとりひとりが生き生きと豊かな日々を育むところから、私たちユーザーに届く製品がよりよくなり、自動車業界をリードする企業としてのさらなる成長も望めるのではないでしょうか。

 5年後、10年後の日本ミシュランタイヤがどこまで進化していくのか、今後も注目していきたいと思います。

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