東京‐名古屋をかッ飛び! JRバス最速「新東名スーパーライナー」はどれくらい速いのか

高速バスでは珍しい急行、特急などの種別がある東名ハイウェイバス。中でも東京~名古屋間を無停車で結ぶ「新東名スーパーライナー」は、超特急より上の「直行」です。どのくらい速いのでしょうか。

高速バスの老舗

 我が国の高速バスは、1964(昭和39)年に名神高速道路が開通した際、国鉄と民間業者が名古屋~京都・大阪間で運行開始した「名神ハイウェイバス」を最初とします。その東名高速版である「東名ハイウェイバス」は東京駅~名古屋駅間を結び、運行開始は1969(昭和44)年。2024年で55年となりました。

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東京駅~名古屋駅間を結ぶ東名ハイウェイバスの直行「新東名スーパーライナー」(2024年9月、安藤昌季撮影)。

 当初は東京~名古屋間が17往復、東京~浜松間が6往復、東京~静岡間が8往復、東京~沼津間が8往復、静岡~名古屋間が2往復、浜松~名古屋間が2往復でした。国鉄は高速バス用に、一般の観光バスよりもエンジン出力が高く、運転席の仕様も異なる特注車両を投入。三菱重工業(現・三菱ふそう)の初代車両「B906R」は400馬力を超えており、当時の乗用車を楽々追い抜ける高性能だったとか。

 国鉄がダイヤを組んだだけあり、停車する停留所により種別が分かれていて、特急と急行が存在しました。JRとなってからの1988(昭和63)年に、超特急「東名ライナー」が登場すると、2006(平成18)年に特急が「東名ライナー」に、超特急が「スーパーライナー」「ノンストップライナー」となりました。

 そして現在では急行、特急「東名ライナー」、超特急「スーパーライナー」、直行「新東名スーパーライナー」の4種別です。バスを停車数で種別を分けるのは民間会社ではあまり見られず、鉄道会社が始めた老舗バスらしさともいえます。

 種別が異なっても設備や料金に差はありませんが、速度は大きく異なります。最速の直行「新東名スーパーライナー」は、東京駅~名古屋駅間353kmを最速5時間9分で結びます。停車時間を含めた平均速度である表定速度は68.5km/hです。

 一方の超特急「スーパーライナー」は東京駅~名古屋駅間363km(停留所が多いために距離が長くなる)を6時間16分、表定速度57.9km/hで結び、相当に差があります。

新東名「最高速度120キロ化」 ではバスは?

 ところで、新東名は大型バスを含む大型乗用自動車でも、最高速度120km/hが一部区間で認められている高速道路です。最速の「新東名スーパーライナー」は、新東名をどのくらいのスピードで走るのか、実際に乗車して確かめてみました。

 乗車したのは、名古屋駅を17時30分に出発する「新東名スーパーライナー22号」です。東名ハイウェイバスとしては、東京駅に向かう最終便となります。

 東名ハイウェイバスは、JRバス関東、JR東海バス、JRバステックの3社により運行されています。「22号」はJRバステックによる運行です。

 名古屋駅の新幹線窓口にはJRバスの窓口もあり、列車のような感覚できっぷを購入できます。一般の高速バスと同じくインターネットでの予約も可能です。運賃は5500円。鉄道だと運賃だけで6380円ですから、割安です。

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浜松いなさJCT~御殿場JCT間は、最高速度が120km/hとなっている(2024年9月、安藤昌季撮影)。

 さて、発車5分前となりましたが、バスは姿を現しません。発車予定の3番乗り場に名神高速バスが入ってきて乗客を降ろし、肩透かしをくらいました。名古屋市内の渋滞で遅れているようで、「22号」が乗り場に到着したのが発車間際の17時29分。多数の乗客を乗せて17時32分に出発しました。

 数えると乗客は32人。2+2列座席の大半が埋まっていて、乗車率は90%を超えていると感じました。長距離用ですので最後尾にトイレもあります。座席はやや硬めで、フィット感に優れたもの。シートベルトがなかなか伸びず、締めるのに苦労しました。付帯設備としてはコンセントとドリンクホルダー、荷物棚。最前列なので目の前にテレビモニターもありますが、休憩地などの到着間際以外は消えていました。

 渋滞のため、山王インターから名古屋高速に入ったのは17時52分。時刻表上では東京の霞が関まで無停車ですから、ダイヤ通りなのか確かめる方法はありませんが、高速道路に入るのに20分かかっています。

いよいよ120キロ区間突入!

 18時4分に伊勢湾岸道へ入ると、最高速度は都市高速の60km/hから100km/hに上がります。運転席の速度計がほぼ微動だにしなくなるのが、最前列の席からよく見えました。

 そのまま巡行し、18時50分に新城ICを通過。まもなく最高120km/h区間となる、浜松いなさJCTを通過します。高速道路の標識を見ると「120」の速度標識が表れた……のですが、「22号」は100km/hのままでした。

 19時17分、遠州森町PAで休憩。バスを観察していると、最高速度が100km/hである理由を発見しました。タイヤに「245/70R19.5 136/134J」という性能表記があったのです。

 スマートフォンで検索すると「ECORUT SP128」というタイヤであり、性能表記の最後に「J」が付くのは、「最高速度100km/h」という意味なのだそう。ただ、乗車前に見た動画の中には115km/hで走行しているバスもありましたから、このバスがたまたま「100km/h対応タイヤ」だったということなのでしょう。

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到着時刻などを知らせるモニター(2024年9月、安藤昌季撮影)。

 19時37分、きっちり20分休憩した「22号」が出発。20時45分に通過した駿河湾沼津SAの前後は、見ごたえある夜景を楽しめました。結局、20時54分に御殿場JCTを過ぎて、制限速度が100km/hとなるまで、「22号」は終始100km/hで走っていました。

 その後、21時6分に足柄SAで休憩。箱根峠越え区間となり、登坂車線で速度は80km/hを割ります。峠を越えて約1時間後の22時19分にモニターが点灯し、自動放送で「用賀到着」と案内が入りました。運転手も「お降りの方はいませんか」と声掛けをしています。バスファンには有名な「時刻表には書かれていない停車」です。

 高速道路を降りたのは22時32分。その2分後に霞ケ関駅で停車です。12人の乗客を3分で降ろして出発し、東京駅 日本橋口に到着したのは22時48分。所定では22時45分着なので、3分遅れでした。名古屋市内以外で渋滞はなく、ほぼ最高速度で走っていましたので、100km/hで走るとギリギリの速達ダイヤなのだと実感しました。

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