マツダの専売特許じゃない!? いまや幻の「ロータリーエンジン大国」ラインナップは驚愕の20種類!

マツダ=ロータリーエンジンというイメージが強いかもしれませんが、じつはロータリーエンジン搭載車は複数の国にありました。しかも、中には飛行機に搭載していた国も。他国のRE搭載車について見てみました。

えっ、RE量産車ってマツダだけじゃないの?

 ロータリーエンジン(RE)といえばマツダ。そのようなイメージを抱く人は多いでしょう。しかし、マツダが並々ならぬ苦労の末にREの量産化に成功し、RE技術の発展に多大な貢献を果たしたのは事実であるものの、マツダ以外にも各国の様々なメーカーがREに可能性を見出し、同様に研究開発を進めていました。

 しかも、そのうちの数社は耐久性や燃費などの問題に苛まれながらも市販化にまでこぎ着けています。今回はそんなマツダ以外のRE車を見ていきましょう。

Large 241010 re 01

マツダを代表するロータリーエンジン搭載車3代目「RX-7」(画像:マツダ)。

 そもそもREは、ドイツ人技術者のフェリクス・ヴァンケル博士が1950年代に発明したエンジンです。仕組みとしては、吸気・圧縮・燃焼・排気の4つのサイクルで動作するため、一般的なガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどと同じですが、ピストンが往復運動をするのではなく、まゆ型のハウジングの中を「ローター」が回転することで動力を得るというのが特徴です。

 REの長所は、同出力のエンジンと比べると軽量・コンパクトなため、搭載位置の自由度が高く、前後重量配分に優れること。また、振動が少なく静粛性に優れ、燃焼温度が低いことから排ガスに含まれる窒素酸化物濃度が低く、ノッキングが起こりにくいことなどです。

 一方、REの短所は、高回転型の特性となるため同出力のエンジンに比べて燃費性能とトルクに劣るという点。また、エンジン内部のシール材の使用が多く、高負荷がかかることからシーリングの確実性や耐久性が低く、ローター内部の潤滑用としてオイル消費が多い点などです。

REの元祖 生みの親を擁したNSU

 世界に先駆けてREを開発したのは西ドイツのNSU(現・アウディ)です。このメーカーの創業は1873年で、オートバイと小型車を製造していました。REの開発はヴァンケル博士によって1951年に始まり、1957年に最初の試作エンジンの運転に成功しています。

 このエンジンは耐久性に難があるものでしたが、問題を解決できないままNSUは、1963年に世界初のRE搭載車としてリアエンジンのオープンスポーツカー「スパイダー」を発表します。ただ、このクルマは実験的な性格が強く、生産台数も2375台に過ぎなかったことからNSU製REの問題は表面化することはありませんでした。

Large 241010 re 02

ロータリーエンジンの生みの親フェリクス・ヴァンケル博士(画像:パブリックドメイン)。

 1967年に2ローターエンジンを搭載したFFセダンの「Ro.80」が発売されると、当初はその革新的な設計が評価され、1968年度のヨーロッパ・カー・オブ・ザイヤーを受賞しています。しかし、のちにシール不良の問題や、AT車のトルクコンバータ不良の問題が顕在化した結果、NSUは相次ぐクレーム対応に忙殺され、信用を大きく損なったことにより経営が傾いてしまいました。

 その結果、フォルクスワーゲンのアウディと経営統合され、NSUのブランドは消えることになったのです。なお、マツダはREに関するパテントを同社から取得しています。

ハイドロサス+REの夢を追ったシトロエン

 NSU、マツダに続く3番手としてRE搭載車を販売したのがシトロエンです。1967年にNSUとの合弁会社コモトールを設立すると、1969~1971年にかけてRE搭載のパイロットモデルとして、「アミ8」をベースにしたシングルローターの「M35」を267台製造し、1973年に2ローターREを搭載した「GSビロトール」を発表しました。

 このクルマは、パワフルで良好な乗り心地を実現した新世代のシトロエンを目指して開発されたモデルで、最初に製造した「M35」で得たデータを生かし、空力に優れ、ハイドロニューマチック・サスペンションを備えた「GS」にREを組み合わせているのが特徴です。

Large 241010 re 03

3代目「RX-7」に搭載される13B型ロータリーエンジン(画像:マツダ)。

 ところが、「GSビロトール」の発表直後にオイルショックが到来し、燃費の悪さから同車はいきなり苦境に立たされます。さらにREの耐久性不足が露呈し、ユーザーからのクレームが殺到。シトロエンはわずか1年で生産を打ち切りました。

 なお販売された847台の「GSビロトール」はメーカーの手で回収され、解体処分の道に。そのため現存する車両は極めて少なく、このモデルは「幻のREシトロエン」と呼ばれるまでになっています。

秘密のベールに包まれた旧ソ連のRE

 最後に紹介するのは旧ソ連(現ロシア)のRE車です。同国の一般庶民に購入を許されていたのは、低出力のVAZやZAZなどに限られており、ソ連政府はKGBを含み治安機関や官公庁、要人の移動用の高性能車にRE搭載車を少量生産していました。同国のREについては共産主義政権の崩壊まで秘密のベールで隠されていたことから、開発経緯など現在でも詳しいことはわかっていません。

 どうやらNSU製エンジンを入手し、それを分解・解析することで、リバースエンジニアリングという形で独自に技術発展させたようです。ただ、その一方で1974年にソ連からNSUに技術者を派遣したという記録も残っています。

Large 241010 re 04

警察博物館に展示されているRX-8パトカー(乗りものニュース編集部撮影)。

 ソ連のRE搭載車種は全部で8車種が確認されており、VAZ-2101「ジグリ(コペイカ)」に1ローターのVAZ-311エンジンを搭載した「21011」、VAZ-2106「ジグリ2106」に2ローターのVAZ-411エンジンを搭載した「21079」などが代表的なモデルです。試作エンジンや航空機用なども含めると1~4ローターまで20種類のREが製造されたようですが、連邦が崩壊してしばらく経った2002年頃までに、いずれのエンジンも生産を終了しています。

 REはトヨタ、日産、GM、フォード、AMC、メルセデス・ベンツなど、様々なメーカーが開発にチャレンジしましたが、搭載する四輪車モデルの市販化までこぎ着けたのはマツダと上記の2社+1国だけでした。

ジャンルで探す