陸自の新型「輸送艦」か? アタマが2つの“異形のフネ”初披露 日本の造船企業がフィリピンで

島嶼防衛には、陸上自衛隊の部隊を島々に移動させるための「足」である輸送艦艇が必要不可欠です。それと関連するかもしれないニュースが、遠くフィリピンでキャッチされました。

フィリピンの防衛装備展示会に日本企業が「上陸艇」を?

 2024年9月25日から27日にかけて、フィリピンでは「アジア防衛および安全保障展示会2024(ADAS 2024)」が開催されていました。これは、2014(平成26)年以来、2年に一度開催される防衛装備品に関する展示会で、例年多くの企業や政府機関がブースを出展しています。そして、10周年目の節目となる今年のADASには、はじめて日本の防衛装備庁がブースを出展し、日本のさまざまな企業もこれに参加しました。

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フィリピンで開催されたADAS2024の様子。陸海空の装備品が一堂に展示された(公式動画より)。

 その中のひとつ、海上自衛隊の護衛艦などを建造していることで知られる「ジャパンマリンユナイテッド(JMU)」では、特異な形をした輸送艇を展示していました。「Caimen-Japan Fast Landing Craft(ケイマン・ジャパン 高速上陸艇)」と名付けられたこの輸送艇は、全長約30m、幅は約8m。2両の重量級車両を輸送できるほか、航行速度は20ノット(約37km/h)以上という性能をもつといいます。

 筆者(稲葉義泰:軍事ライター)がJMUに取材したところ、これは同社がイギリスの船舶設計企業の「BMT」とタッグを組んで設計した、新型の上陸用舟艇とのこと。最大の特徴はそのデザインで、艦首部分は船体が3つに分かれている「トリマラン(三胴型)」となっていますが、じつは船体後部では通常の船舶と同様の単胴型になっているというのです。

 これにより、車両搭載デッキのサイズ、高速性能や航行時の安定性、浅瀬での取り回しの良さといったメリットがあるとのこと。JMUとしては、国内にある同社の造船所でこの輸送艇を建造し、フィリピンをはじめとする島嶼国などへの輸出を模索しているといいます。

 一方で、気になるのは自衛隊が運用する予定である「機動舟艇」との関係です。機動舟艇は、自衛隊の車両や人員を離島に展開させるための輸送艇で、岸壁などが整備されていない小さな島への部隊展開を支える「足」となる重要な装備です。

 じつは、JMUはこの機動舟艇に関する陸上自衛隊の調査研究契約を2023年に落札しています。とすると、今回展示されたこの「Caimen-Japan」こそが、機動舟艇の姿なのかもしれません。

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