いち早く実用化! F-2戦闘機の必須装備「AESA」って何? じつは空戦を変えた超重要なヤツ

現代の戦闘機でもはや必須の装備といえるフェイズドアレイレーダー。ただ、何が従来のレーダーとは違い、どう優れているのでしょうか。

AESAレーダーって?

 現代の戦闘機において、その性能を左右する重要な要素のひとつに「フェイズドアレイレーダー」の存在があります。この技術は、戦闘機の能力を飛躍的に向上させ、空中戦の様相を変化させつつあります。フェイズドアレイレーダーとは何か、その特徴や従来のレーダーとは何が違うのか、そして戦闘機に影響を与えている理由とは何なのでしょうか。

 フェイズドアレイレーダーは「AESA」または「PESA」と呼ばれることもあります。簡単に言うと、多数の小型アンテナを平面状に配置し、各アンテナから発射される電磁波の位相を電子的に制御することで、あたかも1つの大きなアンテナとして機能させるレーダーシステムです。

 従来の「機械走査式レーダー」がアンテナの物理的な回転や首振りによってビームを指向していたのに対し、フェイズドアレイレーダーは電子制御によって瞬時にビームの方向を変化させることができます。このような構造だと、高速な目標探知、複数の目標の同時追尾、そして高い精度での情報収集が可能で、戦闘機の状況認識能力を劇的に向上させるという特徴があります。

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航空自衛隊のF-2戦闘機。機種には独自開発した国産のAESAレーダー「J/APG-1」がある(航空自衛隊の画像を基に編集部で加工)。

 フェイズドアレイレーダーの最大の利点は、その速い走査(探索)能力にあります。一般的な戦闘機搭載レーダーの最大索敵範囲は前方120度(左右60度)の扇型ですが、従来の機械走査式レーダーの場合、広範囲の空域をくまなく探査しようとすると、上下左右にアンテナを首振りさせなければならず、この首振り機構ゆえに数秒から十秒の時間を要しました。一方、フェイズドアレイレーダーは首振りする必要がなく、上下左右のレーダー照射量を制御すればよいため、一瞬にして広範囲を走査することができ、1秒以内で完了します。

 この走査時間の圧倒的な差は、複数の標的に対して同時「ロックオン(追尾)」した際などで特に顕著だといえるでしょう。フェイズドアレイレーダーは常に標的の情報を更新し続けることが可能なため、ミサイル誘導の精度を高めることができます。

航空自衛隊のF-2戦闘機でも採用

 加えて、F/A-18F「スーパーホーネット」やF-15E「ストライクイーグル」など2人乗りの戦闘機では、前席の操縦士が空対空レーダーモードで空中を警戒しながら、後席の兵装システム士官が空対地レーダーモードで地上目標をターゲットするといった、空対空戦闘と地上攻撃を同時に実行できるようにもなりました。

 また、フェイズドアレイレーダーのアンテナ面を機械走査レーダーのように可動式とすることで、索敵範囲を約2倍近くに拡大する機体もいくつか現れており、スウェーデン製の「グリペンE/F」やロシア製のSu-35は200度という後方を除いたほぼ半球をカバーできるようにまでなっています。これにより、ミサイル発射後離脱しながら誘導を継続するという戦術も可能なようです。

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F-15C戦闘機用のAESAレーダーのロールアウト式典。F-15Cは従来、機械操作式レーダーを搭載していたが、このAN/APG-63(V)2レーダーに換装することで大幅な性能向上を果たしている(画像:アメリカ空軍)。

 このように、フェイズドアレイレーダーは、従来の機械走査式レーダーに比べて戦闘機の能力を大幅に拡張できることから、戦闘機にとって不可欠な技術になりつつあるといっても過言ではありません。現在生産されている戦闘機のほとんどがフェイズドアレイレーダーを搭載しており、また機械走査式レーダーを搭載した従来型の機体もフェイズドアレイレーダーへ載せ替える近代化改修が行われています。

 航空自衛隊が運用する航空機では、F-2が初の搭載例ですが、これは世界で2番目のフェイズドアレイレーダーを搭載した戦闘機になります。またF-35「ライトニングII」もフェイズドアレイレーダーを使用しており、F-15J「イーグル」に対して行われる近代改修でも、機械走査式レーダーからフェイズドアレイレーダーへの置き換えが行われる予定です。

 戦闘機にとって必須のアビオニクスとなりつつあるフェイズドアレイレーダー、それ以外の航空機にも普及しつつあります。

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