観るバス 聞くバス 跳ねるバス 食うバス 嗅ぐバス!? 「珍バス中の珍バス」を集めてみた いったい誰が考えたの!?

世界一観光列車が多い我が国ですが、バスのバリエーションも世界有数です。今回は視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚、つまり「五感」を楽しませるバスを紹介します。

夢の国から夢の世界に誘うバス

 人間の視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚を「五感」といいますが、乗車した際にそれぞれを特に楽しませてくれるバスを紹介します。

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京成バス「K★スターライナー」。車内はプラネタリウム天井だ(安藤昌季撮影)。

●視覚編:京成バス「K★スターライナー」
 東京ディズニーリゾートを経由して、名古屋、奈良、大阪、神戸三宮などの各地を結ぶ夜行高速バスです。

 特徴は「プラネタリウム天井」で、5両ある専用車両の天井がそれぞれ「北半球の星空」「南半球の星空」「惑星の空」「夜更けから暁の空」「オーロラの降りる星空」と異なります。筆者(安藤昌季:乗りものライター)の感想としては、本物のプラネタリウムのような美しさでした。

 天井をプラネタリウムにしたのは女性社員の発案とのことで、制作のために天井部分を名古屋に送り、職人が手作業で仕上げたそうです。

 設備ですが、1+1+1列の座席はリクライニング角度も十分で、コンセント(USBポート)も備えて機能的。なお、トイレもカーテンで覆われ、流水音が流れる装置も備わるなど、プライバシーへの配慮が印象的で大半が女性客でした。

 筆者が乗車したのは神戸・大阪~横浜・東京・東京ディズニーリゾート線ですが、海浜幕張、西船橋、東京ディズニーランド、東京ディズニーシー、バスターミナル東京八重洲(東京駅前)、横浜駅東口とこまめに停車し、水曜日発ながら満席でした。大阪側では千里中央、新大阪、大阪(阪急三番街)、ハーピスOSAKA(大阪駅前)、神戸三宮(ミント神戸)に停車します。

 なお、「K★スターライナー」には、東京~名古屋便もあります。

本格的な機材で音にこだわる

●聴覚編:福島交通「メロディーバス」
 福島市内には、『栄冠は君に輝く』『オリンピック・マーチ』などの作曲で知られる古関裕而氏の手掛けた名曲13曲を流しながら走行する「メロディーバス」があります。

 赤い車体の「古関裕而メロディーバス」(通称:あかメロ)と、青い車体の「EVメロディーバス」(通称:あおメロ)が存在し、「あかメロ」は「移動音楽館」がコンセプト。車両は楽器をモチーフとしたデザインで、木の車内には福島市観光キャラクター「ももりん」が隠れているほか、ナンバープレートも「2940(ふくしま)」とこだわりが見られます。

「あおメロ」は「環境にやさしく、乗って楽しい」をコンセプトとしており、音符のつり革や福島市の映像を流すデジタルサイネージ、ツリーハウス風の車内に隠れているメロディーバスのキャラクター5匹など、楽しい仕掛けが満載です。

 外に向いたラッパには、海上で使用するマリンスピーカーを採用。さらに「あおメロ」にはサイドスピーカーも備わります。

 車内には空間全体に音を響かせられる波動スピーカーや、音響にこだわった真空管アンプを採用し、良質な音を流しています。なお「あかメロ」では防音対策として、車内に録音スタジオで使われる吸音材を使用しているとか。

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「あかメロ」(画像:福島交通)。

●触覚編:フジエクスプレス「TOKYO NO KABA」
 東京・お台場の「アクアシティ」から東京湾を周遊する、水陸両用バス「TOKYO NO KABA」です。アクアシティから陸上を走り、自由の女神像を眺めた後、ヒルトン東京の前から海に飛び込み、船としてレインボーブリッジや江戸幕府の要塞だった第六台場、流通を支える品川埠頭などの近くを航行します。

 陸上走行時は、周囲を見下ろす高い位置からの景色を窓のないバスで楽しめます。海上への進入時は、車体と波が跳ね、今までにない「触感」に驚きます。

これぞ“食堂車”?

 なお、船舶用と陸上用とでエンジンも別に搭載しており、陸上と海上では乗り心地も全く異なります。ちなみに、東京湾は頻繁に船が通る地域で、筆者の乗車(船)時は、海上保安庁の測量船「招洋」を眺められました。

 アテンダントの解説が楽しく、工業デザイナー・水戸岡鋭治氏によるデザインもかわいらしいバスです。ちなみに水陸両用バスは青森県の白神山地や群馬県の八ツ場、神奈川県の箱根芦ノ湖、滋賀県の琵琶湖など各地で運行されています。

●味覚編:WILLER TRAVEL「東京レストランバス」
「街全体がレストラン」をコンセプトに、厨房を備えた2階建てバスで食事を提供する「東京レストランバス」です。

 東京駅を起点として、ランチとディナーの時間帯に2時間半から3時間程度、東京を中心とした名所を巡ります。「ヨーロピアンメニュー」「和食メニュー」「フレンチビアガーデン」(夏季)が、それぞれ別コースとして運行されます。

 筆者は「フレンチとお酒と川崎工場夜景を楽しむ旅」に参加。メニューは「季節のサラダ」に始まり、コクのある「焦がしバター香るマイス(コーンのポタージュ)」、4種盛りのオードブル、「鶏肉のガランティーヌ・シャンピニオンソース」、メインディッシュの「黒毛和牛ローストビーフ・ソースコアントロー」でした。

 デザートは「チーズテリーヌ・ソースアルペド・シトロンジュレ」。コース全体を眺めると、締めとしての甘味を、あえて甘みを抑えたコクのあるチーズケーキとすることで、お酒が進む組み立てにしていると感じます。

 狭い車内ながらドリンクも充実しており、ビールからサワー、日本酒や焼酎、澪、獺祭のスパーリングなど、より涼を感じるラインナップ。グラスの転倒防止にも配慮が行き届いているのも好印象でした。

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WILLER TRAVELの「東京レストランバス」。写真はフレンチコース(安藤昌季撮影)。

 高さ3mから、東京駅舎や東京タワー、六本木ヒルズ、レインボーブリッジなどの名所を巡りつつ、前、空、左右の四方向の絶景を堪能できました。乗車時は雨天で透明の屋根が展開されましたが、それでも上から覆いかぶさるような東京タワーなど、迫力ある景色でした。

完全個室バスは香りにも配慮

●嗅覚編:関東バス「ドリームスリーパー東京大阪」号
 扉付きの完全個室夜行バス「ドリームスリーパー東京大阪」号です。1台のバスに11室の個室が設置され、プライバシーが保たれた空間が提供されます。「嗅覚を楽しませるバス」であるゆえんは、バスの入口に100%天然精油を使ったウェルカムアロマが設置されているからです。

 花や木から取れる精油の香りで眠りにつけるのは、豪華バス「ドリームスリーパー」らしい演出といえるでしょう。ただしそれだけではなく、各個室には空気清浄機プラズマクラスターも設置されており、自然界と同じイオンで気になる匂いもブロックしてくれます。

 また、車両内に温水清浄機能と水浄化機能の付いたトイレが設置され、臭気か抑えられているほか、車両後方に独立したパウダールームも設置され、身支度を整えられます。

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関東バス「ドリームスリーパー東京大阪」号の車内(安藤昌季撮影)。

 個室自体も、NASAの理論で設計された「ゼログラビティシート」で、夜間でも足を伸ばして休むことができ、快適です。

 運行開始後、区間が何度か変更されましたが、現在では下りがバスタ新宿を出て南海なんば、大阪駅前を通り、大和西大寺駅、JR奈良駅に至るルートです。大阪だけでなく、奈良観光をする場合でもオススメのバスです。

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 以上、単なる乗車に加え「五感」で楽しむバスでした。ただし感じ方は千差万別でしょうから、列挙した以外にも独特な感覚を味わえるバスは多々あることと思います。

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