宮崎空港の爆発事件で出動! 自衛隊「不発弾処理隊」知られざる活動とは? 気になる「危険手当」も

宮崎空港で突如、爆発した不発弾。終戦から80年近く経ってもいまだ周囲に影響を与え続ける不発弾を処理するための専門チームが陸上自衛隊にあります。彼らは一度も事故を起こしたことない、プロフェッショナル集団です。

全国に4つ編成されている「不発弾処理隊」

 2024年10月2日の朝、宮崎市内にある宮崎空港で不発弾による爆発が起き、一時空港が閉鎖されました。

 爆発が起きたのは、滑走路につながる誘導路で、1mほど陥没していたとのこと。これに伴い、陸上自衛隊の不発弾処理隊が出動した結果、原因がアメリカ製の500ポンド爆弾だと特定されました。

 終戦からすでに80年近く経っているにも関わらず、いまだ市民生活に脅威を与える不発弾。それを処理するために出動した不発弾処理隊とは、どのような部隊なのでしょうか。

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アメリカ製250kg爆弾の信管抜き取り作業を行う隊員(画像:陸上自衛隊)。

 陸上自衛隊の不発弾処理隊は全国に4つ編成されており、今回、宮崎空港に出動したのは、佐賀県の目達原駐屯地に所在する第104不発弾処理隊です。
 
 この部隊は主に九州内を担当しており、それ以外では、太平洋戦争末期、地上戦が行われた沖縄県に第101不発弾処理隊(那覇駐屯地)が、東京や横浜など激しい空襲を受けた首都圏に第102不発弾処理隊(朝霞駐屯地)が、そして大阪や名古屋などやはり激しい空襲を受けた阪神・中京圏を受け持つ形で第103不発弾処理隊(桂駐屯地)がそれぞれ配置されています。

 この4部隊が管轄する地域以外、具体的には東北や北海道などで不発弾が発見された場合は、地域内に所在する師団や旅団の後方支援連隊から、不発弾処理技能を有する隊員が「不発弾処理班」を組んで派遣されます。

 ちなみに、最も処理件数が多いのは、沖縄県を受け持つ第101不発弾処理隊で、1972年から2024年8月までに4万件以上、重量にして約1900tもの不発弾を処理しています。この間、事故は1件も起きておらず、東北や北海道で処理にあたった臨時編成の部隊含めて陸上自衛隊は、これまで無事故で任務を完遂しています。

万一、作業中に爆発した際の準備も

 不発弾の一部には、動かすことで爆発する可能性のあるものもあります。その場合は、現地にて不発弾を処理します。といっても、現地で爆発させることはまれで、基本的には爆弾に取り付けられた信管(起爆装置)を除去することによって、その爆弾が爆発しないように安全化することになります。

 無論、作業中に爆発しない保証はありません。危険性が確認された場合、現場周辺の住民の安全を確保するために、自治体、警察、消防、自衛隊などによって「不発弾処理対策協議会」が開かれ、いかに安全、確実に不発弾を処理するのかが話し合われます。

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信管を抜き取り安全化措置が施された不発弾の撤去作業を行う隊員(画像:陸上自衛隊)。

 不発弾処理現場では、万が一の爆発に備えて、直径2~3m、高さ6mほどの円筒形の「ライナープレート」と呼ばれる鉄板で強固な防御壁を構築し、そのなかで作業が行われます。その周囲を「1t土嚢」で覆い、場合によってはその外側をさらに土で覆います。

 ここまでの準備ができたら、次は住民に対する周知を自治体が行います。具体的な避難半径は、5インチ艦砲弾で最大半径156m、50kg爆弾で半径166m、500kg爆弾では半径394mが避難半径になります。現場が都市部の場合、この広報と交通規制をかけるのに時間がかかるというわけです。

 処理当日は、現場から離れた場所に現地対策本部を設置します。ここでは、不発弾の処理がスムーズに進むよう、関係各機関が情報共有するとともに、避難対象地域に居住する住民の避難も受け入れます。

 その後、避難誘導が行われ、交通規制も掛けられます。避難半径内に住民が残っておらず、交通の規制も始まると、自衛隊による不発弾処理が開始されます。もし、処理中に避難半径内への人の立ち入りが確認されると、作業はいったんストップしてしまうため、避難や交通規制の時間も長引くことになります。

高い? それとも安い? 危険な作業の手当はいくら?

 不発弾の処理方法は2種類あり、現地で爆破可能と判断されれば、その場で爆破処理します。もし、爆破不可能と判断されれば、爆弾に取り付けられた信管を除去するなどして、不発弾を安全化します。処理の成功が確認されると、交通規制は解除され、住民も自宅へと戻ることができます。

 信管除去処理の場合、不発弾は自衛隊が回収し保管します。保管された不発弾は、危険性が高い場合は別の安全な場所で爆破処理されますが、危険性が低いものは、処理企業に引き渡して処分してもらうそうです。

 不発弾処理隊の隊員たちは、発見された不発弾の識別や処理方法について、徹底的に議論し、もっとも安全かつ確実な処理方法を導きだすといいます。そのため、処理作業中は、あくまでも淡々と定められた手順で安全確実な作業をするだけだそうです。

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動かせないと判断された不発弾は、その場で爆破処理される(画像:陸上自衛隊)。

 ちなみに、危険と隣り合わせで作業する不発弾処理隊の隊員たちへは、いわゆる危険手当として、「不発弾の信管除去などの最も危険な作業に従事した場合には、日額1万400円」「信管除去など以外の(比較的危険度の低い)不発弾の捜索や発掘などに従事した場合には、日額750円」が支給されます。

 今回、不発弾が爆発した宮崎空港は、太平洋戦争中、旧海軍の赤江飛行場として開設された場所で、過去には周辺で不発弾が発見されています。じつは宮崎空港以外も戦争中は旧日本軍の飛行場として用いられ、戦後、民間空港に転用されている場所はけっこうあります。

 そのため、那覇空港や仙台空港などでも過去不発弾が見つかり、空港を閉鎖して処理作業が行われたケースが多々あります。

 また海に目を転じても、日本の周辺にアメリカ軍と旧日本軍の双方が敷設した機雷が、戦後不発弾になっており、こちらは海上自衛隊の掃海艇や水中処分隊が対応してきました。

 終戦から、もうすぐ80年。年々不発弾の処理件数は減少傾向にあるものの、その数がゼロになるのはまだ先でしょう。日本の地中に眠る不発弾がなくならない限り、不発弾処理隊の奮闘は続きます。

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