東京イチ狭いんじゃ…? 住宅街をゆく驚愕の狭隘路線バス 家の軒先スレスレなルートこそが人気の理由?

東京23区西部には特に、狭い道路を走る路線バスがいくつかありますが、なかでも狭さのインパクトが大きな路線が、中野区にあります。そこで、失われつつある「路線バスの良さ」を再確認しました。

中野の激セマルートをゆく路線バスは大繁盛

 新宿駅には多数の路線バスが発着しますが、そのなかでも、“ものすごく狭いルート”を通るバスがあります。関東バスが運行する「宿05」新宿駅西口-野方駅です。

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野方三丁目バス停付近をゆく関東バス(乗りものニュース編集部撮影)。

 といっても、野方駅行きのルートは普通に早稲田通りや環七通りといった幹線道路を走ります。しかし復路は別ルートを通る“循環運行”となっており、野方駅から中野駅までの間で、極めて狭い区間を通ります。

 西武新宿線の野方駅(中野区)は環七通りのアンダーパス上に位置します。駅を下りたら商店街で、とてもバスが入れるような場所はありません。ここから商店街を南へ3分ほど歩くと、環七通りの側道を上り切ったところに「野方駅」のバス停が立っています。

 この時点で、西武新宿線からの乗り換え利用は、ほとんど考慮されていないと言えそうですが、それにも関わらず利用者はかなり多いです。

 というのも、野方駅折り返しとなる「宿05」と、中野駅止まりの「中01」以外は、環七本線上の「野方駅入口」「野方駅北口」バス停を利用することになるため、野方駅からさらに離れます。逆に言うと、環七の側道を上がって野方駅の近くまで来る系統が、この地域にとっては貴重なのです。

 平日9時台は中野駅止まりの「中01」が6本、「宿05」が2本の計8本が運行されていますが、いずれも野方駅から立ち席が出るほど乗っていました。

 野方駅を発車すると、バスは1台分が通るのがやっとの一方通行の激セマ道を抜けていきます。しかも各所で見通しが悪く、妙正寺川に向かって坂道になっています。車内から見ていると、まさに家の軒先スレスレを進んでいく感じです。

 中央線を中心とする関東バスの営業エリアには、他にも狭隘路線が多く、双方向通行の場所もありますが、ここの“狭さのインパクト”はかなり大きいものがあります。歩行者・自転車も多く、坂道なので自転車はかなりのスピードで駆け下りていく区間です。

 そんな“激セマ区間”は、野方警察署前で早稲田通りに出るまで、1.4kmほど続きます。

あえて? 激セマルートをゆく路線バスは大繁盛

 この地域は関東大震災以降、急速に宅地化が進んだ古い住宅街ですが、古地図を見ると、バスが通る道はそれ以前、周辺が完全に農村だったころから存在することが分かります。

 バスが新しくできた広い道へルート変更するケースもありますが、特に生活と密着した地域のルートは、そう簡単に変えることはできません。住民にとっては、わざわざ幹線道路に出ずとも、家の軒先から中野駅や新宿駅へ連れて行ってくれる――そんな感覚の利便性があるのではないでしょうか。

 ちなみに、この道は新青梅街道方面から早稲田通りへの抜け道になっているためか、バス以外でも意外に大型車が多く通ります。そんな道で駐車しているクルマがいると、バスは避けるのが困難で、停め方によっては動くまで待たざるを得ないケースも。

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早稲田通りですれ違う中01。野方駅行きは幹線道路を通る(乗りものニュース編集部撮影)。

「この道はバス通りです。駐車するとバスの通行の妨害になり、みんなが迷惑します」といった注意喚起の看板も沿道には見られますが、実際にバスが難儀する光景もしばしば見られました。

 バスがなんとか避けた、ある駐車車両のドライバーを見ると、スマホに熱中していて、後ろの様子に全く気付いていないようでした。このとき周囲のクルマ、自転車、歩行者から白い目が一斉に注がれているのを忘れないでほしいところです。

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