アクアラインの猛烈渋滞「時間帯値上げ」で減った? 日本初の実験1年“効果薄れ”懸念 でも千葉県にはウハウハ!?

東京湾アクアライン上り線で、休日の混雑時間帯に通行料金を上げて渋滞緩和を図る取り組みが始まって1年。日本初の本格的な「ロードプライシング」は、どのような結果をもたらしたのでしょうか。

「ロードプライシング」は効果があるのか? アクアラインの1年

 東京湾アクアラインで、時間帯に応じて料金を高くしたり安くしたりする「ロードプライシング」が2023年7月に始まってから1年。千葉県が2024年8月27日の検討会にて、その効果を発表しました。

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土休日午後のアクアライン上り渋滞(乗りものニュース編集部撮影)。

 アクアラインのETC料金は現在、平日は全日・全時間帯で普通車800円ですが、土休日の13~20時は、上り線のみ1200円に値上げ、逆に20~24時は600円に割引されています。料金変動の対象は全車種ですが、下り線では実施されていません。

 ロードプライシングの目的は、混雑する時間帯を高く、空いている時間帯は逆に安くして混雑を緩和するためです。2021年の東京オリンピック・パラリンピック期間中、首都高でマイカーなどの料金を1000円上乗せする取り組みが行われましたが、高速道路における値上げを伴う定期的なロードプライシングは、アクアラインが日本初です。

 アクアラインは、1時間あたり交通量が2100台以上になると、所要時間が大幅に増加することが確認されているといいます。千葉のレジャーから帰る人が増える土休日の13~20時に、このキャパを超え、20時以降は急激に空くことが固定的になっていました。こうした渋滞緩和の条件が分かりやすかったことも、ロードプライシングの導入につながっています。

 さて、1年間の効果はどのようなものだったのでしょうか。千葉県道路計画課は「一定の効果を確認している」といいます。

 全体の交通量は実験前と比べ1日800台ほど増加しているなかで、特に1200円から600円へ引き下げられる直前の19時台に6%ほどの減少が見られ、前後の時間帯に分散しているといいます。600円の時間帯は、20時台から23時まで段階的に交通量が増え、23時台は123%となっています。

 渋滞も短くなっているようです。1日の最大渋滞長の平均は、実験前と比べ約7%減少(11.9km→11.1km)。10kmを超える渋滞発生日の割合は85%から64%にいったんは減少したものの、2024年2月以降は増加(61%→68%)しているとか。実験開始直後と比べ、効果が薄れている実態があるそうです。

速度めちゃくちゃ低下の最悪ボトルネックはどうなった?

 このアクアライン上り線の渋滞で、とりわけボトルネックとなっていたのが、国道409号と合流する「木更津金田IC」からの流入です。ここは本線料金所が隣接しており、ただでさえ本線の速度が落ちるところ、ICからの流入による著しい速度低下が渋滞に拍車をかけていました。

 実験後は、10km/h以下まで速度が落ちる区間が短縮し、「走行速度の回復が早期化している」とのこと。本線料金所付近での急ブレーキの発生頻度が減少し、事故件数も約20%減になったほか、さらに木更津金田IC周辺の一般道の交差点でも、最大渋滞長が減少しているそうです。

 そして、木更津金田IC周辺の大型商業施設などを発着するアクアライン上りの高速バスでは、最大遅延時間が約63分も短縮したそう。ただ、その前後の時間帯で遅延時間の増加も見られるということです。

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上り線の木更津金田本線料金所。その先で木更津金田ICからの合流があり渋滞する(乗りものニュース編集部撮影)。

千葉県には「マジで嬉しい」効果!?

 このロードプライシングによって、千葉県にとって嬉しい波及効果も認められています。

 というのも、混雑時間帯を避けアクアラインをより遅い時間に通過する人が増加し、県内の滞在時間が実験前よりも6%増加し(6.79時間→7.21時間)、県内のより広い範囲を周遊する人が増えている傾向があるとか。

 21時閉店の木更津市内の大型商業施設では、20時以降の交通量が増加、冬のイルミネーションを実施している20時閉園のレジャー施設では、19時台の交通量が増加するなど、施設にもより遅くまで滞在する傾向があるようです。

料金「もっと高く/安く」はあるか?

 このように、ロードプライシングは渋滞緩和だけでない複数の効果が認められているものの、前出の通り、実験当初より「効果が薄れている」という点は、冬の頃から指摘されていました。それが季節的な要因によるものなのか、なども踏まえ、千葉県はロードプライシングの効果をさらに検証していく構えです。

 ただ、千葉県道路計画課によると、現時点で「400円増し/200円引き」のプライシングをさらに変動させる予定はないといいます。

 なお、土休日の下り線(木更津金田方面)でも、川崎浮島JCTから首都高湾岸線の両方向へ延びる渋滞が問題視されています。下り線のロードプライシングが実施されていませんが、「5~7時の交通集中」していることなども確認しているそうです。

 こうしたことも踏まえ、千葉県は実験を2025年3月まで続けつつ、「より効果的なアクアラインの料金体系について検討」するといいます。

 そもそも、非ETC普通車の3140円に対し「800円」という、破格ともいえるアクアラインのETC料金も、千葉県の補助によるところが大きく、いつまでそれを続けるのかという問題もあります。実験の結果が、アクアラインの今後を占うことになりかもしれません。

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