流すと「ジュゴッ!!」列車のトイレなぜあんなに“スゴイ音”がするの? “垂れ流し”から130年の歴史!?

列車のトイレといえば、流す際に「ジュゴッ!!」という大きな音がするのが一般的です。一体、どのような仕組みになっているのでしょうか?

鉄道トイレの「ジュゴッ!」の音 どんな仕組み?-

 列車に設置されているトイレで流すボタンを押すと「ジュゴッ!」とすごい音がします。小さな密室空間での強烈な音に思わずビクッとしてしまいますが、あれは一体どんな仕組みなのでしょうか。

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東海道新幹線で運行されているN700Aの車内トイレ(画像:写真AC)。

「『ジュゴッ!』と音が鳴るのは、真空式のトイレです。トイレに小さな移送タンクがあり、そのタンクを真空にして汚水を吸い込むときの音です」

 こう話すのは、交通機関の汚水処理装置を手掛ける五光製作所(東京都目黒区)の担当者です。

 列車のトイレでは、洗浄スイッチが押されると、まず「清水タンク」から便器へ水が供給されます。その後、「移送タンク」内を真空にして汚水を吸引し、吸引後に移送タンクを加圧することにより、汚水を「汚物タンク」へ送るという3段階の仕組みとなっているそうです。

 しかし、日本の列車に設置されているトイレが、最初からこの真空式だったというわけではありません。そこには、さまざまな紆余曲折があったのです。

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 もともと、日本における鉄道車両用のトイレは、1889(明治22)年に東海道線が全線開通したことを機に設置されたことがはじまりとされています。

 当初は、便器の下に線路が直接露出している「開放式」、いわゆる「ボットン便所」が一般的でした。しかし、線路に汚物が散乱するため黄害(おうがい)が発生し、沿線住民からも苦情が寄せられました。そこで、汚物に薬品を混ぜて殺菌と脱臭を行い、それを回転羽で粉砕して線路に流す「粉砕式」が登場しますが、それでも黄害は解消せず、こちらは廃止となりました。

循環式から真空式へ

 その後、便器内を青い水が流れることでおなじみの「循環式」が導入されていきます。循環式は、貯留タンクに溜めておいた初期水に、希釈された薬剤液を水ポンプで組み上げて便器を洗浄し、その洗浄水を循環使用するという仕組みです。

 循環式では、排泄物が消毒液と水の混合液によって流されます。便器を流れる青い水は、この消毒液の色です。この方式は東京オリンピックが開催された1964(昭和39)年、新幹線に搭載されたことで、列車トイレにおける主流となっていきました。

 この循環式の登場により、これまでのように汚水が線路上に垂れ流されることはなくなりました。しかし、その一方で徐々に洗浄水の汚れが目立つようになり、そこから発生する悪臭をいかに抑制するかといった課題が生じました。

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E131系電車600番台のトイレ(画像:写真AC)。

 真空式は、そうした経緯と課題を踏まえて開発。前出の担当者は「さまざまな鉄道事業者様に採用いただいております」と話し、今では「ジュゴッ!」と音のする真空式が多くの鉄道で導入されています。

 ちなみに、旅客機でも真空式と同様の原理で排泄物が吸い込まれる「バキューム式」が主流となっています。吸い込まれた排泄物が駆け抜ける速度はとてつもなく高速で、総2階建ての超大型旅客機、エアバスA380の場合では、およそ時速130マイル(約210km/h)で配管を通るとされています。

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