電車かと思ったら「売店」じゃないか 全国“車両型”の鉄道施設が振り切ってる! なぜその車両が?

駅の売店が鉄道車両を模しているなど、駅施設の一部などが車両をイメージしていることがあります。モチーフとなった車両には、地域と切っても切れない縁があるのです。

運転席まで再現された待合室

 鉄道駅構内の売店や待合室、なかには駅舎そのものが、鉄道車両をイメージした形をしている場合があります。なぜその車両がモチーフとなったのか、そこには地域と切っても切れない関係があるのです。筆者(安藤昌季:乗りものライター)が実見したものを中心に紹介します。

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JR水戸駅の、E653系電車を模した「NewDays」(安藤昌季撮影)。

●JR東能代駅「リゾートしらかみ型待合室」(秋田県)
 奥羽本線と五能線の東能代駅には、五能線の観光列車「リゾートしらかみ」を模した待合室があります。キハ40/47形の「リゾートしらかみ くまげら」編成を元にしたデザインで、待合室内にもキハ58系気動車の運転席が再現されており、座席に座ることも可能です。

 ほかにも、ホームにバスケットボールのゴールがあったり、階段に「天空の不夜城」がラッピングされていたりと、視覚的に楽しい駅です。

●真岡鐵道 真岡駅「SL型駅舎」(栃木県)
 真岡駅は、SL型の巨大な駅舎を備え「関東の駅百選」にも選ばれています。この駅舎は観光列車「SLもおか」運行開始から3年後の1997(平成9)年に建築されたもので、真岡鉄道の本社機能だけでなく、子ども広場や交番、鉄道グッズショップなども入居しています。3階には、国鉄真岡線時代からの鉄道関連物を集めた資料館もあります。

 現在では駅の敷地内に、鉄道車両保存施設「SLキューロク館」も設置されており、圧縮空気による9600形・D51形蒸気機関車の運転体験も行われています。また、駅西口を入口として、駅構内やSL格納庫、転車台などが眺められる歩道も整備されており、「真岡駅まるごとミュージアム」に認定されています。

車両を模した「NewDays」

●JR水戸駅「E653系売店」(茨城県)
 7・8番線には、特急形電車E653系に似た売店「NewDays」があります。この売店は2006(平成18)年、東日本キヨスクとJR東日本 水戸支社が「常磐線イメージアップ作戦」の一環として、当時の看板特急「フレッシュひたち」だったE653系をモチーフに設置したものです。

 E653系は紅、青、黄色、青緑、だいだいの5色の車両があり、売店は「紅(スカーレットブロッサム)」塗装を再現しています。高さは3.2m、幅は3.4mと実物より大きいものの、長さは10mと半分です。車両番号は「クハE653-1」となっています。

 E653系は現在、定期列車としては常磐線で運行されていませんが、後継車両のE657系電車が5色塗装を再現しており、東京方面に行く特急との共演も見られます。

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JR藤沢駅の、80系電車を模した「湘南電車キオスク」(画像:PIXTA)。

●JR藤沢駅「湘南電車キオスク」(神奈川県)
 上記のE653系売店の設置と同じ2006年、3・4番線に設置されたのが「湘南電車キオスク」です。この年には湘南色塗装で人気があった113系電車が引退しており、これを記念して、初代の湘南電車だった80系電車を模した売店が設置されたのです。

 なお、2016(平成28)年にリニューアルが行われ、「KIOSK」が「NewDays」表記に変更されました。車両番号は「クハ86023」で、日本国有鉄道の銘板もついているなど、細部にこだわりがあります。

キハの中で「えきそば」をすする

●JR姫路駅「キハ58系えきそば屋」(兵庫県)
 5・6番線にある立ち食いそば屋の店舗が2019年にリニューアルされ、国鉄急行形気動車「キハ58系」の形をしています。ここで提供されるまねき食品の「えきそば」は、和風だしと中華麺の組み合わせで、姫路駅の名物でもあります。

 JR播但線で活躍したキハ58系の姿がモチーフとのことで、その理由は「かつてえきそばは、列車内に持ち込めるよう蓋付き容器で販売されており、その時代らしいデザインとした」のだとか。急行形気動車の丸いヘッドマークが塗装で再現され、「まねき」と書かれているなど芸が細かいつくりとなっています。

 筆者が実見したのは以上ですが、各地には鉄道車両を模した施設が存在します。

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JR品川駅にある、クモユニ74001形を模した郵便ポスト(画像:写真AC)。

・旧型電車内装の待合室(笠上黒生駅:銚子電気鉄道)
・旧型客車型待合室(沼田駅と渋川駅:JR上越線)
・展望車を模したレストラン「ステーション レストラン ザ セントラル」(JR東京駅)
・クモユニ74001形郵便ポスト(JR品川駅)
・8900形電車形自動販売機スペース(北習志野駅と鎌ヶ谷大仏駅:新京成電鉄)
・レトロ電車デハ101型待合室(大胡駅:上毛電気鉄道)
・6000系電車コンビニ(板宿駅:山陽電気鉄道)

 博物館やドライブインを取り上げるともっとありますから、一般にも鉄道文化が認知・愛好されている証といえるのかもしれません。

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