自衛隊の災害派遣「受け身型」から「提案型」へ! 転機はどこに? 自治体の負担軽減に寄与も

自衛隊の災害派遣のやり方が従来とは大きく変わろうとしています。その根底には、派遣要請を出す地方自治体のキャパシティーが、職員数や経験によって大きく異なるというのがあったそうです。

自衛隊側から積極的に提案

 都道府県知事などによって要請される自衛隊の災害派遣。これまでは自治体が出すニーズを受けて活動していた、いうなれば「受け身型」の災害派遣でしたが、今後の自衛隊による災害派遣は「提案型」へと変化していく模様です。

 これまでの「受け身型」災害派遣では、基本的に自衛隊の連絡要員が被災自治体に派遣され、そこで当該自治体が欲する支援内容を聞き取り、給水や給食、道路啓開作業などの依頼を受けて、活動し始めるという流れでした。

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2024年7月、大雨被害の災害派遣により山形県内で活動する陸上自衛隊第6師団の隊員(画像:陸上自衛隊)。

 このような動き方に変化が生じたのが、2019年に発生した西日本豪雨での災害派遣です。この災害は「平成30年7月豪雨」とも呼ばれ、台風7号と梅雨前線の影響によって、岐阜県や滋賀県、広島県などでは観測史上最大の降水量を記録するなど、西日本各県に甚大な被害をもたらしました。

 このときの西日本豪雨をはじめとして、数多くの災害派遣に対処してきた経験を自衛隊は持っていますが、一方で自治体側は災害対処にいまだ不慣れな部分があるのも事実です。特に規模の小さな自治体は、職員の数も多くないため、被害が大きくなると手一杯になってしまうのです。

 ストレートにいうなら、パニック状態や、明らかに手に余るほど災害対応に忙殺されている自治体職員からすれば、被害状況も掴めていない状態で自衛隊に対して要望を出そうとしても、何をどう依頼すれば良いのかわからない状況でしょう。

 そこで、防衛省・自衛隊は、従来まで「受け身型」であった形態を、自衛隊の連絡官などが支援内容を具申する「提案型」へと変化させたのです。

自治体の大小で救援内容に差が出ないように

 この「提案型」災害派遣は、あくまでも自衛官が5000名以上参加する大規模災害時に限定されるとのことですが、各省庁からの情報を集約した自衛隊が率先して支援内容を提案し、自治体から了承を得られれば、すぐに行動できるようにすることで、被災地や該当住民に対して迅速に救援の手が差し伸べられるようにしたという点で、特筆すべきものです。

 この提案型が功を奏するシーンとして考えられるのが、自治体の災害対処レベルに関わらず、被災者に自衛隊の支援がダイレクトに実施されるという点です。これなら、役所の規模、職員の得手不得手に関係なく、日本全国どこであっても、同じスピードで支援が受けられるようになるため、自治体からすれば歓迎すべきことでしょう。

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2024年8月、大雨被害の災害派遣により愛知県蒲郡市で活動する陸上自衛隊豊川駐屯地の隊員(画像:陸上自衛隊)。

 自衛隊の災害派遣は経験を積むたびに進化し、より柔軟な運用ができるようになってきました。

 しかし、その災害派遣も、当初は「従たる任務である災害派遣に深入りするのは良くない」との旧軍関係者による声もあったそうです。しかし、先見の明があった吉田 茂内閣総理大臣(当時)によって、1951(昭和26)年の「ルース台風」に対する出行(当時の災害派遣の呼び方)が許可されました。
 
 それから70年あまり。このときに地域住民のために動いたことが、今も続く災害派遣の実績とノウハウに繋がっているのです。

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