“デヴィ夫人の家”=軍事博物館に圧巻! 旧日本軍機から大統領専用機までズラリ 夫人の痕跡は?
インドネシア・ジャカルタの大都会にあって、広大な敷地を有する軍事博物館を訪問。屋外には貴重な戦闘機や航空機、屋内には重火器類などがズラリと展示されています。実はここは元「デヴィ夫人」の家でした。
戦闘機とともに憩う都会のオアシス
インドネシアの首都のジャカルタには、国家独立を記念した塔「モナス」などの歴史を伝える施設も数多く存在します。今回は、そのひとつである「サトリア・マンダラミュージアム」を訪ねてみました。
名称のサトリア・マンダラとは、サンスクリット語で「騎士の聖地」という意味だそう。5.6ヘクタールという広大な敷地には、インドネシア独立戦争などの歴史に関する展示に加え、過去のインドネシア軍の装備品などが飾られています。
実はここ、かつてスカルノ大統領夫人である「デヴィ夫人」の邸宅でした。その住居が改修され、作られた施設なのです。
軍事博物館の入館料は、5000ルピアでした。日本円で約50円という激安ぶりですが、国民向けの施設のため、外国人NGとの情報も……。しかし、WEBで調べてみると、多くの旅行者が訪れています。ただし入館料は、時期によりマチマチ。どうやら正規料金は存在しない様子。来館時は、問題なく入場が許されましたが、入館料は10倍の5万ルピアでした。これよりも安いことも高いこともあるようで、謎めいています。
敷地に入ると、元邸宅と思われる母屋の施設が、我々を出迎えてくれます。母屋の前には、公園のような緑が広がっており、カフェも併設。インドネシアの人たちには、都市でピクニックが愉しめる場所としても人気があるようで、デート中のカップルや女性同士のティータイムを楽しむ姿が見られました。
一方、その屋外には飛行機や装甲車などの実機が中心に展示され、母屋の正面では、ダグラスA4「スカイホーク」戦闘機と西ドイツ海軍製のヤグアル級高速魚雷艇が出迎えてくれます。いずれも軍人役のマネキンが設置されており、ちょっと乗員の雰囲気が怖い。その周囲には、いわゆるCOIN機のノースアメリカン ロックウェルOV-10「ブロンコ」、フォード製装甲車M8、アグスタ-ベル204Bヘリコプターなども展示されています。
博物館の裏手にも、飛行機が展示されています。こちらには、ノースアメリカンP-51「マスタング」やフェアリー「ガネット」などの欧米機体に加え、日本の二式高等練習機(キ79)も展示。キ79は、日本軍が敗戦後に残したもので、インドネシア独立戦争に使われたそう。同機自体はレプリカのようですが、世界唯一の現存するキ79のようなので、とても貴重です。
館内はさらに圧巻!
屋外の最も巨大な展示機体は、大統領専用機として使われたという「ダグラスDC-3」があり、こちらも迫力満点です。また車両では、元祖ジープのひとつであるウィリスジープの姿もありました。
館内の展示の目玉は、重火器でしょう。もちろん、旧式のものばかりですが、拳銃やマシンガン、ライフルなどが豊富に飾られています。個人的には、銃身を冷却水で冷やすことで連続射撃を可能とした水冷式重機関銃に見入ってしまいました。ただ、説明はどれも非常にシンプルなので、銃器に詳しくないと盛り上がれないかもしれません。
こうした兵器とともに、当時のシーンを再現した多くのジオラマやマネキンが展示されているのですが、失礼ながら、ちょっと地味な印象。さらに軍服や勲章などの貴重な軍の歴史的資料が飾られたエリアには、空調が効いていたものの、ジオラマエリアは、空調が止まった状態で、明かりも薄暗く、音声案内と思われる機械も電源が入っていませんでした。平日の午後でしたが、ほぼ貸切状態だったため、土日以外は、あまり来場者がいないのかもしれません。警備や職員も少なく、のんびり見学はできる雰囲気は良かったのですが……。
館内には3か所ほどのカフェがあり、見学中の休憩も可能。お土産物エリアはないものの、冷えたドリンクを売る人もいたので、飲み物の入手には困りません。ただトイレは、水洗式であるもののアナログなので、手桶に水を汲み流す必要がありました。
展示の更新は、あまり行われていないようで、なかにはガラスが割れている車両や機体など、メンテナンスが良くないもののありました。そのため、歴史資料館というよりは、軍事ファン向けの通な施設という印象が残りました。
なお、施設内も住居だった頃を感じさせるものは少なく、デヴィ夫人の痕跡も皆無です。それでもデヴィ夫人の旧邸を訪ねたという土産話だけでなく、乗りもの好きとして、軍用機や軍用車両の見学だけで大いに盛り上がれました。入場料も手頃なので、ジャガルタを尋ねた際は訪ねてみてもよいのではないでしょうか。
09/01 18:12
乗りものニュース