特急「はまかぜ」ここまで大化けするとは! ついに公開「はなあかり」 全車“見たことないグリーン車”の全貌
JR西日本の新たな観光列車「はなあかり」が公開されました。まだ新しい特急「はまかぜ」車両を、全席グリーン車の豪華列車にリニューアル。かの「WEST EXPRESS銀河」と対をなす存在といえるかもしれません。
特急「はまかぜ」が“おめかし”!? 「はなあかり」10月デビュー
JR西日本が2024年10月5日(土)より運行を開始する豪華観光特急列車「はなあかり」。その全貌が8月29日に京都鉄道博物館で報道公開されました。
「はなあかり」は10月1日から12月31日まで富山・石川・福井を中心に展開される「北陸デスティネーションキャンペーン」に合わせてデビュー。北陸新幹線の敦賀延伸から約半年を経て、まずは敦賀駅に接続する小浜線から北近畿エリアにかけて運行されます。
報道陣の前に現れたその姿は、染物で知られる檳榔樹(びんろうじ)の実を染料とした黒褐色を纏い、車体下半分には金の装飾が施されていました。“地域とお客様との縁を結ぶ”との願いを込めて蔦系植物で取り巻くイメージで描き、西日本の自然と風景に馴染み、懐かしくも華やかでモダンな車体デザインだそうです。また、ベースに起用したこの色は、日本の伝統衣装である黒紋付に用いられ、うみ、やま、さと、と素晴らしい日本の原風景を隈なく網羅するJR西日本管内の路線と、数多く残る名駅舎に敬意を払うべくイメージされたといいます。
車両は、特急「はまかぜ」として運行されたキハ189系特急型気動車の第5編成です。キロ189 -8005(キハ189-5)、キロ188-7005(キハ188-5)、キロ189-7005(キハ189-1005)の3両からなります。列車名ともなった「はなあかり」は、沿線地域に光を当て、華やぎが広がっていくイメージで、西日本の「とっておきに『あかりを灯す』」という意を込め名付けたといいます。
キハ189系は2010(平成22)年秋に、先代の国鉄型気動車キハ181系を置き換えるべくデビューした比較的新しい車両です。JR西日本でも最新の気動車特急が、いうなれば紋付を付けて西日本各地をアテンドし、沿線地域とお客とを縁を結ぶといった感じでしょう。
3両全席グリーン車に、3タイプのグリーン席を配置 !
前述のとおり3両編成の「はなあかり」は、全車グリーン席の定員54名で、ニーズに合わせた3種類の席が用意されています。
ボックス席は2人掛けと4人掛けの2タイプがあり、2人掛けは2・3号車に4区画、4人掛けは各車両に1区画ずつ計16名分を配置。これら区画単位での発売で、4人掛けは3名から利用できます。ただし、2人掛けの1人利用はできないので注意が必要です。
では、1人旅には向かないのでは……それはご心配なく。2号車には「カウンター席」が18席用意されています。360度回転可能な1人座席で、席の取り方によっては2人での利用もできるのです。
さて、この列車の見どころとされるワンランク上のグリーン席が1号車に用意されています。「スーペリアグリーン車」と名付けられ、2人掛け用の半個室が10区画あります。快適な「籠」のような空間が演出され、沿線各地の工芸品やアート作品が楽しめる専用の飾り棚までついているコンパートメントの本皮シートに身をゆだね、大きな一枚窓いっぱいに広がる風景を独り占めできるという、なんとも贅沢な車両です。利用は1名でも可能ですが、やはり区画での販売なので2名分の料金がかかるそうです。
車体は「ラッピング」でもめちゃくちゃこだわってる!?
そんな豪華観光特急「はなあかり」のデザインを担当したのは、あの通勤型117系電車を見事にリゾート列車「WEST EXPRESS銀河」に変身させ、最後の国鉄型特急381系「やくも」のイメージを一新する273系を生み出した株式会社イチバンセン代表の川西康之さん。今回のデザインでもっとも力を入れたのは内装もさることながら「外装の質」だったとか。
川西さんによると、車内にいるお客の笑顔が外からも映えるよう、車体は艶なしの塗装で仕上げたいと模索していましたが、塗装による車体重量制限のほか、もとがステンレス製の車体だったこともあり、やむなくラッピングで行うことに。しかし満足する結果が得られず、何度も試作を重ね、最終的にシルク印刷によるマット調仕上げとしました。その調整にも苦戦したといいます。
まずは敦賀&北近畿へ その後は「神出鬼没」?
10月5日のデビューから12月までは、前出の通り敦賀に発着します。小浜線・舞鶴線から京都丹後鉄道に乗り入れ天橋立を経由し、豊岡で山陰本線に入り城崎温泉までを約5時間と、およそ半日かけて巡るスケジュールが組まれており、土曜日が敦賀発、日曜日が城崎温泉発という2日で1往復の運行です。
城崎温泉行きは小浜線の美浜、小浜、若狭高浜、舞鶴線の東舞鶴で途中乗車が可能。敦賀行きは舞鶴線の東舞鶴、小浜線の若狭本郷、小浜、上中、十村、美浜での下車ができます。各沿線の駅や車内では、地域特産品の販売や実演、おもてなしが行われるそうです。また、車内では乗車4日前までに予約すると供される特製弁当&スイーツセットが用意されます。
今回の下り列車(城崎温泉行き)では、約300年の伝統製法を守る米酢専門店による小鯛のささ漬、鯖へしこ若狭ガレイ、若狭牛など、若狭の食材をふんだんに取り入れ、デザートに天橋立チーズケーキがついた若狭町家弁当&スィーツセット(3500円)を用意。上り列車(敦賀行き)では、天橋立の成り立ち神話が由来となった笹寿司をはじめ、鯛や白バイ貝など丹後の名産を詰め込んだメニューに、若狭名物でっち羊羹がついた丹後晩秋弁当&スイーツセット(3900円)を用意しています。
気になる値段ですが、「スーペリアグリーン車」が片道1万2840円(2人利用時)、その他クリーン車指定料金が1万640円です。本来は5回以上乗り換えが必要となる同区間おいて、乗換なして観光を楽しみながら半日ゆったりと過ごすのにはお手軽だと思います。
今回乗り入れする京都丹後鉄道のレストラン列車「くろまつ」や観光列車「あかまつ」「あおまつ」にも乗車する観光列車三昧や、今回の「はなあかり」と何処となく似ている播但線の普通観光列車「うみやまむすび」にも乗ってみるのも、さらに楽しいものになるのではないでしょうか。
2020年に運行開始した、夜行の長距離列車として運用する「WEST EXPRESS銀河」に対し、今回デビューする「はなあかり」は中・短距離列車として西日本の魅力を発信する存在となりそうです。今後の展開に期待がかかります。
08/30 09:42
乗りものニュース