圧巻だけど絶滅寸前!「バスがズラ~リと並ぶターミナル」 使いやすさ抜群 しかし“昭和の遺物”に

昭和の時代によく見られた「頭端式バスターミナル」は、全国でも残りわずかとなっています。愛知県岡崎市にある名鉄の東岡崎駅北口のバスターミナルもその一つですが、近い将来に姿を消しそうです。

姿を消しつつある「頭端式バスターミナル」

 バスが車両前部または後部から停車してズラリと並ぶ壮観なバスターミナルが、昭和の時代によく見られました。これは「頭端式バスターミナル」と呼ばれ、近年では車両の出し入れ時にバック運転が必要なこともあり、安全性に配慮して徐々に姿を消しています。

 頭端式バスターミナルの代表として名を馳せた新潟駅の「万代口バスターミナル」も2024年3月をもって廃止されましたが、愛知県にはまだ残っています。

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東岡崎駅北口のバスターミナル。乗り場には路線図や時刻表を大きく掲示。バスへの乗り降りも容易(水野二千翔撮影)

 愛知県岡崎市にある名古屋鉄道(名鉄)東岡崎駅北口のバスターミナルも、現存する頭端式バスターミナルのひとつですが、近くその歴史に幕を閉じることが確実になっています。このほかは、北海道中央バスの札幌ターミナル、東急バスの綱島駅バス乗り場、神姫バスの神戸三宮バスターミナルなど、頭端式バスターミナルは残りわずかとなっています。

 東岡崎駅には、名鉄バスが運行する岡崎地区のバスが乗り入れています。現在、東岡崎駅周辺は再開発の真っ最中で、2029年度に新しい駅ビルが建設され、バスターミナルも改築される予定です。同駅周辺では2027年度の再開発ビル着工に向けて、バスターミナルに隣接する現駅ビル部分は取り壊しが進んでいます。バスターミナル部分も解体の開始まで予断を許さない状況といえるでしょう。

 東岡崎駅は名鉄の前身となる愛知電気鉄道が1923年に開業した駅で、現在の駅ビルは1958年7月に竣工、バスターミナルも同時に開業しています。これ以前から、東岡崎駅は岡崎市内や西三河地方の各地を結ぶバスの拠点になっていましたが、バス乗り場は駅前に設けられた広場に行き先別の停留所が雑然と設置されているような状況だったそうです。

 頭端式バスターミナルの開業により、この混沌とした状況は解消。駅と併設されたため、鉄道との乗り換えは簡単になり、屋根のあるプラットホームを設けたことでバスへの乗り降りもスムーズに。雨風をしのげる待合所も設置され、開業当時は毎日20系統、577台のバスが発着していたといいます。

バスが元気だった「昭和の雰囲気」をいまに伝える

 2024年8月のある平日の朝、東岡崎駅北口のバスターミナルを取材しました。まずは乗り場をチェック。開業時は7つの乗り場が設けられていましたが、現在は5つに減っています。

 バスはターミナル進入後、頭から乗り場に突っ込む形で停車。乗り場には路線図が描かれた案内板も掲げられていますが、バス正面の行先表示器も合わせてチェックできるので、乗り間違いが防げそうです。出発時のバスはいったんバックしてハンドルを切り、ターミナルを出ていきます。

 乗り場の天井部に目を向けると、2、3人ほどが入れそうなブースが見られます。ここにはターミナルの安全を見張ったり、案内放送をしたりする係員が詰めています。

 待合室に入ると椅子などはなく、飲料の自動販売機や証明写真機が設置されているだけ。きっぷなどを取り扱っていた出札所も移転してしまっており、薄暗さも相まって寂しい印象です。ただ、乗り場への出入り部には大きな路線図や乗り場の案内が掲示されています。デザインはもちろん現代のものですが、バスが元気だった昭和のころの雰囲気をいまに伝えるような巨大さに目を奪われます。

 地下道を通って道路を横断し、バスターミナルを外からも観察してみましょう。乗り場にかかる屋根はバス全体を覆うことができるほどの大きさであるとわかります。取材した朝にはターミナルへのバスの出入りが頻繁にあり、ときには複数台が同時に出発する様子も。取材時は3台が同時にバスターミナル出口に並ぶ壮観な姿を見られました。

 見納めが迫る東岡崎駅北口のバスターミナル。訪れる機会があれば、ぜひ細部までチェックしてみると面白いかもしれません。

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