「え?なんで今の時代にB-29飛んでるの?」実現の裏側とは 実はフツーの人でも乗れちゃう…?

航空ショーなどでは、往年の退役軍用機が飛行などを行うことが目玉のひとつになることも。これらの機体はどのように維持・管理されているのでしょうか。

380機の「ウォーバーズ」が一挙集結!

 2024年7月22日から28日にかけて、アメリカ北部ウィスコンシン州のオシュコシュで行われた航空ショー「エア・ヴェンチャー」は、参加機数も入場者数でも世界最大といわれる航空ショーです。ここで存在感を放つもののひとつが、「ウォーバーズ」と呼ばれる、飛行可能な状態で維持されている退役軍用機です。今年はウォーバーズだけで380機が集まったと発表されています。これらはどのように維持・管理されているのでしょうか。

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B-29「スーパーフォートレス」爆撃機(画像:アメリカ空軍)。

 日本には1機もないウォーバーズですが、アメリカ以外にもイギリスやカナダ、オーストラリアなどでは歴史的価値がある軍用機が飛行可能な状態で維持されていることは珍しくありません。

 こういった機体は、お金持ちが個人で所有している場合もありますが、その多くは航空博物館や歴史保存団体などが保有し、飛行可能な状態を維持しています。そうした団体において、断トツで世界最大の規模を持つのがアメリカの非営利団体、CAFです。

 CAFとは「Commemorative Air Force」の略で、日本語に訳すと「記念空軍」という意味です。団体としては1953年にアラバマ州で発足し、P-51「ムスタング」、F8F「ベアキャット」を購入したのが始まりです。

 1960年代に入り、歴史的価値がある航空機たちの「その後」について調査が始まると、戦闘機や爆撃機など多数が廃棄され、民間機に転用されて生き長らえた輸送機についても、その多くは改造されるなどして急速に数を減らしていることが判明したのです。こういった状況にCAFのメンバーらは危機感を募らせ、その結果、CAFは組織として機体の収集に着手するようになりました。

 ちなみに、当初は南北戦争時代の南軍を意味する「コンフェデレート・エア・フォース」の頭文字を由来にCAFと呼ばれていました。しかし、支部が全米に広がると、この名称が不都合になってきたため、2002年に現在の名称へと変更されています。

 現在CAFは、会員数約1万3000人、保有する航空機総数およそ150機という巨大組織へと成長しており、それら機体のうち110機が飛行可能な状態で維持されているというから驚きです。

実は「搭乗体験」もできる…?

 CAFが保有する機体は、まさに多種多様です。たとえばT-34「メンター」練習機やB-29「スーパーフォートレス」大型爆撃機といったプロペラ機だけでなく、F-4「ファントム」やMiG21などのジェット戦闘機まであります。また「ゼロ戦」の愛称で知られる零式艦上戦闘機も1機保有しているほか、第二次世界大戦中に旧日本軍が使用した軍用機のレプリカも複数所有しています。

 これらの機体は、航空ショーの模擬空中戦で敵機役を演じる重要な機体でもあり、日本の大戦機は絶大な人気を誇っているそうです。

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エア・ヴェンチャー会場内の「ファイタータウン」(細谷泰正撮影)。

 とはいえ、この規模の「空軍」を維持する費用も大変な額です。資金は会費や寄付によって賄われています。ちなみに、CAFはアメリカ連邦歳入庁(日本の国税庁に相当)から認証を受けた非営利団体であることから、寄付は税控除の対象となります。

 なお、会員には数種類のメンバーシップや機体別のスポンサー制度などがあり、収める金額によって搭乗や操縦体験、操縦訓練を受ける特典なども用意されています。

 それでも古い航空機を維持するのは大変な労力と金銭的支出を伴います。とくに保険費用は高額で、昨年から今年にかけては保険料が4割も増えたとのこと。

 こうした状況を踏まえて、CAFでは会員以外の体験搭乗も有料で受け付けています。体験搭乗の料金は飛行時間の長さによって変わりますが、T-6「テキサン」練習機の場合はおよそ400ドルから、P-51「ムスタング」は2000ドルから、B-29「スーパーフォートレス」が1200ドルからとなっています。つまり、お金さえ払えば一般人でも往年の名機に乗ることができるのです。

 なお、体験搭乗する場合は料金の支払いと賠償責任の放棄同意書に署名することが必須です。体験搭乗は法的には自己責任というわけです。

 ちなみに、筆者(細谷泰正:航空評論家/元AOPA JAPAN理事)もT-6練習機に体験搭乗させていただきました。星形エンジン特有の振動や轟音、コックピットからの景色など、他では味わえない貴重な経験だったと感じています。

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