台風で「道路通行止めの可能性がある」→なぜ止めない? 鉄道は「止めます」 ビミョーな表現のカラクリ
道路の通行規制やアンダーパスの浸水。いつもの道でも気付きにくい道路状況は、どのように決まり、どこで調べるとわかるのか。わかりにくい状況を一刀両断します。運転すべきか、中止すべきか。運転者としての判断の幅が広がります。
通行止めの可能性に高いも低いもない
台風7号の接近を受けて、国道を管理する国土交通省の地方整備局や、高速道路会社が道路への影響を相次いで公表しています。
特に台風の影響を受けやすいのは、沿岸を走る区間や大雨が予想される地域の斜面に面した峠道です。8月15日15時現在、鉄道各社は計画運休を発表していますが、道路で通行止めを予告する区間はなく、あくまでも「通行止めの可能性」にとどめています。
国道などの一般道と首都高などの都市高速は「通行止めの可能性がある区間」を、高速道路各社は「通行止めとなる可能性が高い区間」をウェブサイトで発表しています。通行止めの「可能性がある区間」と、通行止めの「可能性が高い区間」があると、気象庁による台風の影響予測は刻々と変化するので、台風の影響によって、通行止めの確率を示すような印象がありますが、そうではありません。
「通行止めの可能性がある区間」は、極めてシンプルに選別されています。国道の通行止めについて国土交通省道路局道路防災対策室は、次のように話します。
「国道の一部には『雨量規制区間』が定められています。例えば、(東京都・神奈川都県境前後の)国道20号大垂水区間の連続雨量は150mmですが、気象庁の降雨予想では、この基準値を超える(※予想は300mm)可能性があります。雨量規制区間は基準値を超えると通行止めになるので、『可能性がある』という意味は、これを示しています」
高速道路も同じです。NEXCO東日本は、次のように話します。
「NEXCO東日本では圏央道の一部区間と東京湾アクアラインを『通行止めの可能性が高い』区間にしていますが、通行止めになる可能性を強調しているだけで、通行止めの確率を示したものではありません」(広報室)
トンネルと海上橋で構成される東京湾アクアラインでも通行止めの可能性が示されましたが、これも雨量規制と同じような考え方で、風速規制を上回る可能性が予測されるためです。これと同様の風速規制は、本州四国連絡橋などでも適用されています。
浸水しやすいアンダーパスは、ハザードマップで一目でわかる
運転者が運転計画を立てるときは、この「通行止めの可能性がある区間」を避けることが重要ですが、ほかにも注意しておくことがあります。それは、雨量規制がすべての道路で定めれているわけではない、ということです。
高速走行を想定する高速道路では雨量規制が全線で定められています。この基準値は各高速道路会社のウェブサイトで確認することができます。しかし一般道では、大雨によって土砂崩落の可能性がある区間などでは、道路案内標識などで表示されていることがありますが、それ以外の区間には基準値はありません。基本的には著しい危険が予想される場合に、警察が随時、現場の交通規制を行う形です。
そのため大型連休中の規制や、旅行で知らない場所にいる場合は「通行止めの可能性がある区間」以外にも注意を払う必要があります。例えば、冠水の可能性があるアンダーパス部などです。
国土交通省は、「道路冠水注意箇所マップ」を公表しています。これは『道路防災情報WEBマップ(道路に関するハザードマップ)』のポータルサイトからリンクする国土交通省の北海道開発局と沖縄総合事務所、全国8つの地方整備局のウェブサイトに掲載されており、国道以外の都道府県道、市区町村道も含んでいます。ポイントをクリックすると、アンダーパスの現場写真と地図、その場所を管理する道路管理者などがわかります。
このマップに示されたアンダーパスは、ポンプなどの排水能力を超えて冠水し、安全な道路交通の確保ができない可能性のある箇所です。冠水箇所ができると、実質的に通行できなくなるので、こうしたアンダーパスのポイントを知っておくだけでも、被災の可能性は低くなります。
河川の水位変動は急激 クルマの駐車場所は明るいうちに移動
気象庁は台風7号の16日以降の見通しで、関東甲信地方や伊豆諸島で最大風速40m/s、最大瞬間風速60m/sを予想しています。
国土交通省物流・自動車局では降雨時、暴風時の目安を出していますが、30m/sでは「通常の速度で運転するのが困難」、それ以上では「走行中のトラックが横転する」と解説。この状態では輸送することは適切ではないとして、輸送の中止の検討などを助言しています。これは一般の運転者に向けた情報ではありませんが、運転の参考になります。
さらに、気象庁は15日午前の会見で河川の水位についても警告しました。
「中小河川では大雨になると、短時間で急激に水位が上昇するため、早めの避難が必要。大河川では水位情報は緩やかだが、雨が降りやんでからも水位上昇が続く」
2024年8月1日の大雨では、東京・世田谷区、目黒区、品川区から東京湾へ注ぐ目黒川は、20分で約2.5mも水位が上昇しました。人の避難と同時に、いつもの駐車場所の状況を確かめて、明るい間に車両を移動しておくことも大切です。避難と同様、暗くなってからの移動は危険です。
また、地盤の低い地域では河川の水位が上昇して、本来であれば河川に流れ込むはずの雨水が地面に滞留して、内水氾濫が起きる可能性があります。人は高層階で安全を確保できても、車両は浸水してしまう、といったことがないように気を付けて下さい。
08/15 19:22
乗りものニュース