令和ちょい前に開通した最新の「酷道」 さすがにマトモでしょ…?→「あの世に一番近い道」でした

長らく不通だった山間部区間が6年前に開通したという国道。新しい道とはいえ、その実態はまさに“酷道”そのものでした。それでもなぜか、道路ファンを惹きつけるのはなぜなのか、実際走ってみました。

県境部はまるで「あの世」に行くかの気分に

 福井市を起点に、内陸の勝山市を経て山間部を北上し、石川県小松市に抜ける国道416号。このうち福井・石川県境の6.4kmは長らく「車両通行不能区間」でしたが、2018年に開通し、地元の人のみならず全国の道路ファンを驚かせました。
 
 というのも、この416号は以前から、酷い状態の国道、いわゆる「酷道」として知られていたからです。

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福井県福井市から石川県小松市の山間部を抜ける国道416号のかなり自己主張の激しい路面(2024年、松田義人撮影)。

 今回、筆者は福井市から国道416号を勝山市へと走り、山越えにトライしてみました。酷道と評されるものの、福井市の平野部の国道416号は何の不便もない舗装路でした。途中には日帰り温泉施設などもあり、穏やかな田舎道です。

 しかし、勝山市の有名スポット「福井県立恐竜博物館」を右手に見たあたりから、少しずつ緩やかな坂道となり、やがて人影や民家の数が減っていき、さらに進むと中央線もなくなり、気づけばクルマがすれ違うことができないほどの狭い、つづら折りの道に入っていました。

 ただし、カーブごとにミラーが設置されていることと、天気の良い日中は日差しが差すことから、さほど危険な道には感じませんでした。しかし、ここはまだ“酷道”の入口であったことを、この後すぐに実感することとなりました。

 福井県側はまだ牧歌的な印象でしたが、山を登り切った「新俣峠」の先を見て愕然。ここからが石川県エリアになるわけですが、道路の先が見えないことに加え、上では怪しげな雲が付近を覆っています。

「まるであの世に行くようだ」と思う筆者でしたが、「あの世感」は、その先でさらに強く感じることになろうとは、このときはまだ想像できませんでした。

真っすぐ歩くことができない道路?

 新俣峠を抜け石川県エリアに入ると、いきなりの急勾配に。道路脇には、かまぼこ状の駒止がありますが、この下はすぐに崖です。しかも、道路全体にバンクがかかっていました。試しにクルマを降りて確認してみましたが、うまく歩くことができないレベルです。

 這うようにクルマに戻り、再びハンドルを握りましたが、この急勾配の道もクルマがすれ違うことができないほどの激セマ幅。まさに手に汗を握りながら、20km/hほどのスピードで何とか急勾配区間を抜けることができました。

 激セマのバンクを乗り越え、「あの世」から生還した気分もつかの間、今度は鬱蒼とした森の中へ。まさに「樹海」と言って良い光もまばらな暗い道で、ここからもまた「あの世」感。もちろん、この樹海の道も幅が狭くクルマがすれ違うことはできません。

 前方からクルマが来ないことを祈りながら、ここでも20km/hほどでなんとか前進すると、こういうときに限って前からクルマがやってきます。仕方なく比較的広い場所までバックし、前方のクルマを通すも、特に挨拶やお礼はナシでした。ドライバーはこの酷道を安全に通り過ぎることだけで頭はイッパイ。他人の義理や情けに期待してはいけないのかもしれません。

 さらに樹海道をゆっくり進み続けると、数キロに1か所ほどのペースで「国道416」の標識が立っていることに気づきました。

 樹海をさまようドライバーに対し「間違いなく416号です」と示してくれているのと同時に、「ひどい道だと思うだろ? でもここはれっきとした国道だ!」というプライドのようなものを感じました。

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福井県側の国道416号線の山間道。つづら折りの道が続きますが、それほど危険には感じません。石川県に入ってからが本番でした(2024年、松田義人撮影)。

 福井県側を出発したのが午後だったため、なんとか日が落ちないうちに国道416号を抜けたいという気持ちもあり、17時を過ぎたところで、少しスピードをあげ前進しました。すると、2車線に入ったと思ったらすぐ1車線に戻る――これを何度か繰り返すこととなり、さすがは酷道と唸らずにはいられませんでした。その後、いよいよ本当に2車線となり、道路にも光が差し始め樹海から抜けることができました。

結局、抜けるのに何分?

 国道416号の山道に入ってから抜けるまでは約50km前後。そして、ここまでの所要時間は約2時間半。すれ違ったクルマは2台ほどで、同方向を走るクルマも1台見かけました。

 地元外の筆者からすると、どうしてこんな過酷な道が国道として存在するのが謎ですが、この道は元々、1960年代に開かれた福井県側の「福井勝山線」、石川県側の「丸山小松線」がルーツで、別々の県道だったものがそれぞれ国道に昇格したという経緯があります。

 そして前出の通り2018年、それまで車両通行ができなかった2つの路線を、国道416号線としてつなげることができたそうです。この時には「悲願50年」と書かれたのぼり旗も立ち、祝賀ムードに包まれたようです。

 2018年と言えば、わずか6年ほど前のこと。言わば最近の話であり、国道416号の存在意義に疑問を感じ得ない筆者でしたが、この謎具合もまたファンの心を揺さぶるところなのかもしれません。

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福井県と石川県の県境にあたる「新俣峠」付近。道路の先が見えない一方、怪しげな雲が覆っています(2024年、松田義人撮影)。

 ただし、国道416号の県境部は冬季閉鎖されます。開通期間でも、通行する場合は積雪や凍結の恐れがある冬場以外の日中に限った方がよさそうです。また、通行止めの情報なども詳しく調べ、万全の対策と自己責任の上でハンドルを握ってください。本当に気をつけないといけない道路であることは確かです。

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