「酷道」とのギャップがスゴイ!? 開通ホヤホヤ「冠山峠道路」を実走 山奥の新ルートはマジで“高速の迂回路”になり得るのか?

岐阜と福井を結ぶルートといえば北陸道が一般的ですが、2023年には国道417号「冠山峠道路」が新たに誕生しました。この新ルートの利点は何なのか、実際に走り探してみました。

岐阜県揖斐川町の「道の駅」を拠点にいざ出発

 岐阜県と福井県を行き来する場合、滋賀県を通る北陸道や国道8号がメインルートとなりますが、2023年には両県間を短く結ぶ国道417号「冠山峠道路」が新たに開通しました。この新ルートの利点はどのようなところにあるのでしょうか。今回、実際に通行してみることにしました。

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2023年11月に開通した岐阜・福井を結ぶ国道417号「クラウンロード」。

 岐阜県と福井県を結ぶ国道417号にとって、県境に立ちはだかる冠山峠はかなりの難関でした。険しい山岳地帯の県境部は国道417号が長らく未開通で、並行する林道を介して行き来はできたものの、冬は積雪も多いことから林道は年間を通して通行止めが多く、通行できる時であっても、その劣悪な道路状況から「酷道」として知られるようになりました。

 このように事実上の「分断国道」となっていた国道417号ですが、冠山峠を越えるトンネル建設がスタートします。2010年代に付近のトンネルが次々に完成し、ついに2020年には「冠山峠2号トンネル」(現在の「冠山トンネル」)が貫通。そして2023年11月、冠山トンネルを含む「冠山峠道路」7.8kmが開通しました。

 この冠山峠道路は前後の区間を含めて「クラウンロード」という愛称も付き、「岐阜と福井がグッと近くなった」と注目を浴びています。今回実際に走り「近さ」を確かめてきました。

 まず、クラウンロードの起点にほど近い岐阜県揖斐川町の道の駅「星のふる里ふじはし」にアクセスしました。駐車場には、これから冠山峠に向かうとおぼしきバイクが多く停まっています。

 ここでトイレなどの用を済ませた後、いざ出発。道路は、地図上では真っ直ぐで、最新の道でもあることから運転に臆するところはないものの、前述の北陸道にないクラウンロードの魅力が何なのかを走りながら見ていくことにしました。

美しい景色と、酷道時代の名残に感動

 クラウンロードの岐阜県側は、横山ダム、徳山ダムがある揖斐川に沿って道路が続いており、左右に次々と現れる光景がまず壮大。水面に景色が反射して浮かび上がるほどで、景色の美しさに感動しました。

 また、事前に地図で確認していた通り、クラウンロードは急カーブが少なく、比較的真っ直ぐの道が続きます。運転に不慣れな初心者でも、安心して走れるように感じました。

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水面に反射して浮かび上がる景色(2024年、松田義人撮影)。

 そして、前述の道の駅にいたようなライダーたちも多く走っており、おおむね皆スピードを出さずにトコトコとしたツーリングを楽しんでいる様子。やはり、北陸道や国道8号とはまるで違う景色とのんびりとした移動を楽しむために、クラウンロードを利用する人が多いように感じました。

 やがて、県境の冠山付近に新設された冠山トンネルを通ります。全長約4.8kmに及ぶトンネルもまた真っ直ぐ。そのため、トンネル走行時特有の睡魔を少々感じまたが、その一方で路面も設備も真新しく、心地良く走れました。

 ちなみに、冠山トンネルができる前の「酷道」での峠越えは、一説では19.4kmの林道に1時間以上がかかったとのこと。

 それが、冠山トンネルでわずか6分に短縮された上、天候に左右されることなく通年通行できるようになりました。言うまでもなく、岐阜・福井の両県民にとって実に喜ばしい開通だったことを強く感じました。

北陸道vs.クラウンロード、どっちが良い?

 他方で、どうしても気になるのが冠山峠付近の“旧酷道”です。どのような感じなのか探るため、冠山トンネルの出口から少し入って運転してみました。

 冠山トンネル付近に残る林道は1車線で、クルマ同士のすれ違いは困難。さらに、この道を通行するのが積雪時や夜間だったらと思うと背筋がゾッとしますが、このことからも冠山トンネルの意義深さを再認識しました。

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福井県側に入ってしばらくは、携帯電話の電波が届かない場所が増える(2024年、松田義人撮影)。

 さて、改めてクラウンロードで冠山トンネルをくぐり福井県側に出ても、山あいの道が続きます。途中、中央線がなくなり道幅が狭くなる区間があったり、特に携帯電話の電波が届かなくなったりもしましたが、それでも道路は比較的真っ直ぐ。制限速度を守れば、それほど危ない思いをすることはないだろうとも感じました。

 道路は池田町の中心部に入ったところでクラウンロードの区間が終わりますが、国道417号自体はそのまま鯖江市へと続きます。

 今回の走行で感じたことは、単に「疲労度の少ない移動」だけを求めるのであれば、北陸道の方がよほど便利ですが、ドライブやツーリングなど「走りを楽しむ」ならば、確実にクラウンロードの方が良いということです。ダム湖などの絶景を楽しめるほか、劣悪だった冠山峠付近のエピソードなども含めて考えれば、双方の県民の心情に思いを寄せることもできるでしょう。

 また、岐阜県揖斐川町と福井県池田町の移動時間は、北陸道経由とクラウンロード経由でどちらもほぼ同じの約2時間弱。このことから北陸道の迂回路としての利用価値も十分で、今後さらに注目を浴びるルートのようにも思いました。

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