岩手の「軍用フォルクスワーゲン」第二次大戦の激戦くぐり抜けた “歴史の語り部”だった! 当時の「古傷」は今も
2024年7月に幕張メッセで開催されたイベントに、第二次世界大戦で用いられたドイツ軍車両が展示されていました。80年以上前の軍用車ですが、ナンバー登録済みなため、公道走行が可能とか。どういう経緯でレストアしたのか話を聞きました。
日本の道も現役で走れる「歴史の生き証人」
千葉県千葉市の幕張メッセで2024年7月28日に開催された国内最大のフィギュア・ガーレージキットの祭典「ワンダーフェスティバル2024【夏】」。その会場に、第二次世界大戦で使用されたドイツの軍用車「キューベルワーゲン」が展示されていました。
この車両を所有しているのは岩手県の「全日本ドイツ軍用車輛クラブ」で会長を務める山口博章さんで、なんとレプリカではなく、実車を修復したレストア車両です。しかもナンバープレートを取得しているので普通にクルマとして公道を走れるとのこと。山口さんはこの車両を約8年かけて走行可能にしたといいます。
「私の前に8人ほど所有者がいた車両です。1942年製で、最初はフランスに配備され、連合軍によるノルマンディー上陸作戦でドイツ軍がフランスから撤退した後は、マーケット・ガーデン作戦を阻止するためにオランダでの戦いに参加。ドイツ敗戦後はオランダで郵便車両として働いていたと聞いています」(山口さん)
実戦で使われていたことをうかがえる部分として、運転席のドアに溶接で埋められていますが、弾痕跡が確認できます。レストアする際のパーツは、ドイツやイタリアで行われていたオークションなどで取得し、エンジンもフォルクスワーゲン製のオリジナルを積んでいるそうです。
「レストアだけで2500万円くらいかかっています。米英の車両は比較的、手に入り易いのですが、ドイツの軍用車はやはり敗戦国だけあって、市場に流れる数が限られるので、部品を見つけるまでが大変です」(山口さん)
歴史的大事件でパーツが入手しやすくなった
第二次世界大戦中のドイツ軍用車両のパーツに関しては90年代から00年代にかけて、ある程度オリジナル部品が出回るようになり、レストアが比較的簡単になったと語っていました。ただ、それは国際的な情勢の変化が関係していたといいます。
「ソ連崩壊が、かなりドイツ軍パーツの流通増加に影響しています。旧ソ連領内には独ソ戦で使われ、ドイツ軍が放棄していった車両がかなりの数で残っており、それがソ連崩壊によって、ロシアを始め分離独立した各国が外貨確保のために売り払ったことで、かなり出回るようになりました。それでもジープなどよりは圧倒的に少ないですが」(山口さん)
なお、公道で走らせるためのナンバーの取得には約5年かかったとのこと。同車は1942年製の車両として車検登録されているため、リアのテールランプが1灯だけでも問題ありません。ウインカーに関しては、実は手信号でもいいそうですが、安全性を考慮して後付けで明るく光るウインカーを装着しています。
「25馬力しかないエンジンですけど、軽快に動きます。故障防止も兼ねて定期的に公道を走っていますが、今まで警察に停められたことはないですね」(山口さん)
ちなみに、今回はさすがに会場が岩手県から遠く離れた千葉県ということでもあり、トレーラーに載せてきたそうです。2024年現在、山口さんは、ほかにも水陸両用の「シュビムワーゲン」や、後のビートルの原型にもなった「カーデーエフ(KdF)・ワーゲン」を所有しています。なお、これらもナンバーを取得済で、公道を自走できるとのことでした。
08/04 17:12
乗りものニュース