JALの中国特化型 “緑のLCC” どう舵切り? 就航10周年で超攻めた!「日本人の利用者」増加のカギは

JALグループのLCC「スプリング・ジャパン」が就航10周年を迎えました。その記念日に、同社の浅見達朗社長が現状と今後の戦略について話しています。

新路線、新制服…大きく変わった「2024/8/1」

 2024年8月1日、就航10周年を迎えたJAL(日本航空)グループのLCC(格安航空会社)、スプリング・ジャパン。同日に行われた記念セレモニーの場で、同社の浅見達朗社長が現状と今後の戦略について話しています。

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スプリング・ジャパン就航10周年セレモニーの様子(山本佳典撮影)。

訪日客を中心とした旅客需要がコロナ禍前のレベルを超えるなか、同社では日本国内の路線に加え、日中間の国際路線をメインに事業を行っています。そのようななか、就航10周年の節目を迎えた同社は多彩な取り組みを展開し、注目を集めています。

スプリング・ジャパンは、2012年9月に法人(当初は春秋航空日本株式会社)を設立し、2014年8月から成田空港を拠点として国内線運航を開始。2024年8月の運航スケジュールでは、新千歳、広島の国内2路線のほか、ハルビン、天津、寧波、上海、北京の国際線5路線を運航しています。機材は、ボーイング737-800(189座席)6機体制です。

 そして8月1日に同社では、成田空港発着としては約3年半ぶりの新規路線となる北京線を就航。加えて同日に上海線の拡充を実施したほか、さらに羽田空港ではJALと宅配大手ヤマトホールディングスの貨物専用機による新千歳線および北九州線の就航を、スプリング・ジャパンが運航会社として担当するという新展開を1日でそれぞれ迎えることになりました。

 記念セレモニーでは、同社の浅見達朗社長が挨拶したほか、成田空港事務所の後藤勝行所長、同空港を運営するNAA(成田国際空港)の田村明比古社長、成田市の小泉一成市長が出席して、それぞれ祝辞を述べました。

 セレモニーの冒頭、浅見社長は同社会長職を兼務する春秋航空グループのワン・ウェイ総裁が寄せたメッセージを代読し、「皆様からのこれまでの多大なご支援に、深く、深く御礼を申し上げる」と感謝を述べたうえで、浅見社長自身も「記念すべき日に、旅客便も貨物便も新しい就航先に運航を開始できて大変意義深く感じている」と喜びを語っていました。

 また、この日から刷新された客室乗務員の制服にも触れ、「社員の思いを込めた新制服とともに、これから先も、安全、誠意、笑顔の3つを大事にして社会に貢献していきたい」と新たな時代への思いを込めていました。

 そのほか、同セレモニーでは「就航10周年キャンペーン」の概要説明が行われたほか、客室乗務員による新制服のお披露目も行われています。

 この新制服のコンセプトは「安心感」。これまでのフレッシュさを表し、同社のコーポレートカラーである明るい黄緑に加えて、成熟したLCCとして、新たに落ち着いた濃い緑を色調ベースに取り入れたデザインとのことです。

 なお、ディテールには客室乗務員の想いが込められているそうで、制服のバリエーションは従来より3パターン増やして全9パターンを用意。スプリング・ジャパンとして初となるパンツ・スタイルも導入しています。

復調の「スプリング・ジャパン」、今後の戦略は?

 スプリング・ジャパンは、2024年第1四半期(2024年4月から6月)の業績において、回復傾向にある中国発需要を取り込み国際線の有償旅客数が約6倍に。全体の有償旅客数は前年比+76.6%となり、有償座席利用率も大きく向上しています。

 セレモニー後、メディアとの質疑に応じた浅見社長は、直近の好調な業績の要因について「中国路線の好調な利用がドライバーになっている。インバウンド(訪日旅行者)の需要が着実に回復してきているので、ここをしっかりやっていくということに尽きる」と語っています。

 一方で、日本人旅客のアウトバウンド需要については、「15日間のビザなし渡航がトリガーになると思っている。あれがないと、やはり需要喚起もなかなか難しい」と見通しを語っており、「状況を見ながら、日本側の需要喚起もやっていきたい」との考えを示しました。

 成田~北京線就航に続く、今後の路線展開については、「いろいろ見ているところだが、大きい都市からそうでもない都市まで広く見て、チャンスがあるところにいきたいと思っている。発表できる時期がきたらしっかり発表したい」と堅実な考え。機材計画についても、「たしかに今、足元のロードファクター(有償座席の利用率)が高く保てているので、今回始める便も含めて、ロードファクターと収益性をしっかり見て、増機できるタイミングがあれば拡大していきたい」と、具体的な計画は示さないものの前向きな考えを示しています。

 なお、NAAの田村社長は、同社の設立以前にワン会長の父親である王正華氏と面会した思い出に言及し、「春秋航空を持っておられる会長に『なぜ日本の航空会社が必要なのか』とお伺いしたら、『ジャパン・クオリティの航空会社が大切だ』とおっしゃっておられた」と懐古。スプリング・ジャパンが備える「中国の確たるベース」と「ジャパン・クオリティ」のミックスに期待を寄せたうえで、近年の多彩な事業展開による需要対応に「私どもにとっても非常に大事な航空会社になっている」と評価していました。

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