「このくらい厳しくていいんじゃないか」 悪質電動キックボード利用者“強制退場” LUUP“違反丸見え”新制度で健全化へ
悪質な電動キックボード利用者による交通違反を撲滅するため、シェアサービスのLUUPが警察と連携した独自の「交通違反点数制度」を創設。無期限で利用停止をするなどの対応に乗り出しました。イメージを貶める行為に厳しい対処で臨みます。
警察と違反情報を共有 かなり厳しい対処で望むLUUP
電動キックボードなどのシェアサービス「LUUP」で新たな市場を開拓したループ(Luup)は、道路交通法改正により特定小型原付が創設され1年を経過したことを受けて、新たな「安全・安心アクションプラン2024」を公表しました。
プランはヘルメット着用推進や、幹線道路を避けて目的地に到着できるナビ機能の提供など4つの柱で構成されています。その中でも特筆すべきは「交通違反点数制度による違反者の厳罰化推進」です。
その概要は、LUUPの車両運転中に起こした軽微なものを含むすべての交通違反に対して、同社独自に違反点数を加算し、一定の点数に達した段階でアカウントを凍結、利用不可にするというものです。
ペナルティは2段階で、第1段階は30日間の利用停止。第2段階は利用再開から1年以内に新たに違法走行で取り締まられた場合、利用停止を無期限で実施するという制度です。これとは別に飲酒やひき逃げ・当て逃げなどの重大な道交法違反を発生させた場合は、段階を踏まずに利用できなくします。
ループの岡井大輝社長はこの制度の狙いについて、次のように話しました。
「交通違反点数制度というユーザーにとっては厳しい制度を、僕らとしてはちゃんと始めようと思っております。これによって違反者をLUUPのサービスの外に限りなくはじくという話と、そうじゃない方々も、この制度を通して緊張感を持って乗っていただくことで、結果として安全に繋がるというような対処を、今回のアクションプランのメーンにさせていただきます」
特定小型原付は16歳以上であれば免許なしで運転できるので、免許保持者のような行政罰としての点数制度はありませんが、道路交通法違反で摘発されることはあります。
同社の点数制度は、警察官による道路交通法違反の摘発と、同社独自の方法による違反の発見の両方を組み合わせて、違反点数を算出するというものです。この制度設計について、岡井氏は次のように説明しました。
「この違反の確認方法は、警察から情報提供を受けるケースもありますし、弊社側で違反を特定するケースもございます。警察から違反情報の提供を受ける場合は、利用者の方には個人情報の同意書を取った上で、“違反は特定できるが個人情報には当たらない”形で共有を受けるものになっています」
パイオニアとしての責務 悪質運転の利用者はいらない
道交法で定められた点数制度は、違反ごとの点数が明らかになっていますが、同社の点数加算の詳細については「何点だとアウトになるかがわかってしまうと、あれはあと一発やってもいいのかみたいな発想になってしまいますので、非公開にさせていただきます」(岡井氏)と、話しました。
LUUP独自の交通違反点数制度は、東京都内の利用では実証を終えて、運用されています。他の地域でも順次、適用が行われます。
この独自の方法によって違反が確認された利用者には、スマートフォンなどの端末に違反警告が通知されます。ただ、点数の累積でアカウントが30日間停止となる場合の事前警告はありません。通知と同時にアカウントが停止され、アプリ上に利用できないことが表示されるのみです。
さらに、無期限の利用停止は、事実上の永久追放というべき厳しいものです。岡井氏は話します。
「警察とも議論しながら復帰の道も別に作ってもいいかなと思うんですが、警察署に再度勉強しに行くとか、かなりきつい対処を科すことでしかアカウントを復活させない。しかも、それもすぐ復活するのは無理。基本的には長期間の停止が解けた後に、ちゃんと学んだことを確認した上で一部ユーザーのみ戻す。基本的には無期限の利用停止といって差し支えない対処をしようと思っています」
なぜループは、ここまで厳しい対応を打ち出したのでしょうか。
2020年に東京都渋谷区で50ポートからスタートしたLUUPは、2024年6月時点で全国10都市8200ポートまで拡大し、公共交通を補完するパーソナルモビリティ・インフラに成長しました。用意された電動キックボードと電動アシスト自転車は約2万台に達していますが、それでも「需要に供給が追いつかない」(岡井氏)ほど好調です。
そうした利用増にもかかわらず、例えば東京都内の電動キックボードなど特定小型原付の事故状況はおおむね15件で推移。利用増に伴う増加には転じませんでした。
「LUUPの電動キックボードは台数も増え、ユーザー数も増えましたので、この1年間で約5倍にライド数が増えているんですけれども、1人あたりのユーザーの事故発生確率はかなり下がってきているかなと思っております」(岡井氏)
しかし、利用者の交通ルール順守という点では、一部の悪質利用者が電動キックボードで自動車専用道を通行する様子がSNS上で指摘されるなど、逆風となる利用実態が指摘されていました。
「このくらいの対処をしてもいいんじゃないか」
LUUPはアカウント取得時、利用に関する交通ルールを端末で学習し、その習得度を測るテストで全問連続正解しなければ利用ができないという前提ですが、このまま特定小型原付のイメージが悪くなっていけば、その教育効果そのものが疑われてしまうことになります。
「一部の悪質な利用者が、非常に目立ちます。しかも、悪質な利用者は、たまにやっちゃうとかじゃないんですね。走行している10分20分の間、ずっと悪質な違反を繰り返す。そうすると、それを町中見ちゃうので、他のちゃんと交通ルールを守っているユーザーが危ないようだと勘違いされてしまう。(事故にならなくても)その行為そのものが安全を阻害する、町にとって邪魔な行為であるということで、ループとしても、もしくは代表の岡井としても、より厳しく一切の余地なく対処していこうと考えております」(岡井氏)
特定小型原付の交通違反の減少、たとえば車道から歩道への乗り入れで起きる「通行区分違反」や「信号無視」などの抑制も同社では期待します。この2つの違反は、特定小型原付の交通違反全体の約9割を占めます。
「意図せず誤って違反をしてしまった方も、この点数制度があることで、より緊張感を持って交通ルールを把握して、覚えてもらえるように。安全に乗っていただいている利用者の皆様にも、もしかすると永久に乗れなくなる可能性が常に横にあるという緊張感を持って乗っていただくことで、結果として、無事故無違反で安全に乗っていただくように促していける」(同)
新たな特定小型原付のカテゴリー創設を定めた道交法改正施行から1年。法改正を働きかけてきたリーディングカンパニーの決断は、免許不要、16歳から乗れる気軽な乗り物であっても、運転者と他人に危害を加える可能性があることを改めて強調したものになりました。岡井氏は全体の説明をこう締め括りました。
「人に危害を加える可能性があるモビリティという領域で、かつ法律が大きく変わった直後の黎明期であるという点から、このぐらいの対処をしてもいいんじゃないか。警察等と協力しながらこのような対処を始めていこうと思っております」
無免許、16歳から乗車可能な特定小型原付2年目。利用者の交通ルール違反に、厳しさが増しています。
07/03 09:42
乗りものニュース