「地上で破壊」されるロシアの超高価ステルス機 空自も“明日は我が身”? 攻撃し放題の現状
ロシア空軍の高性能ステルス戦闘機Su-57がウクライナの攻撃によって地上で破壊されました。ただ、このような攻撃は現代戦では定石と言えるもので、防ぐ手立てはあります。むしろ同様の攻撃でやられる恐れがあるのは航空自衛隊も同様です。
地上で次々撃破されるロシア戦闘機
ウクライナ軍は2024年6月9日、ロシア空軍の新鋭ステルス戦闘機スホーイSu-57を2機撃破したと発表しました。
撃破されたSu-57は、前線から約600km離れたロシア西南部アストラハン州のアフトゥビンスク飛行場に駐機されていた機体であり、少なくとも1機は完全に破壊され、もう1機は修復可能ではあるものの、一定程度の損傷を与えたとされます。攻撃に用いられた手段は明らかにされていませんが、長距離自爆型ドローンが使われたと推測されます。
また日にちこそ不明なものの、ウクライナ軍いわく同じく6月中に前線から240km離れたモロソフスク飛行場を少なくとも70機の自爆型ドローンによって攻撃したとのことで、このときはスホーイSu-34戦闘爆撃機を、複数機(少なくとも2機)撃破したことが明らかになっています。
さらに1か月ほど前の5月15日には、ATACMS短距離弾道ミサイルでクリミアのベルベク飛行場を攻撃し、MiG-31戦闘機を2機撃破したそうで、こうして見てみるとロシア空軍の損失が続いていると言えるでしょう。
ただ、このようにロシア戦闘機が立て続けに地上で撃破されるということは、翻ると航空自衛隊にとっても他人事ではなく、日本有事の際はもっとひどい被害を受ける可能性も含んでいます。
衛星画像だと一目瞭然!
2024年現在、自衛隊ではF-35、F-2、F-15という3種類の戦闘機を、千歳基地(北海道)に約40機、三沢基地(青森県)に約20機、松島基地(宮城県)に約20機、百里基地(茨城県)に約40機、小松基地(石川県)に約50機、築城基地(福岡県)に約40機、新田原基地(宮崎県)に約40機、那覇基地(沖縄県)に約40機配備しています。これらを合算すると300機弱にものぼりますが、ほとんど無防備の状態で置かれています。
これらの基地をGoogleマップなどで見てみると、多数の戦闘機が駐機場に並べられているのがわかります。このような形態は「列線運用」と呼ばれますが、こうした「列線」を攻撃するのは非常に簡単であり、小型の自爆型ドローンでも複数機に損傷を与えることができ、大型の弾道ミサイルならば1発で何機をもまとめて破壊することが可能です。
また格納庫の座標も既知であるため、やはりミサイル1発で内部の戦闘機をまとめて使用不能に追いやることが可能です。推測ですが、1つの格納庫にはおそらく10機程度が収容可能なはずなので、列線がなければ格納庫を狙い撃ちするだけで容易に撃破することができるでしょう。
実際、有事の際に考えられるシナリオには、弾道ミサイルや巡航ミサイルとドローンを使っての飽和攻撃があげられます。全国の航空基地に数百~数千の弾道ミサイルや自爆型ドローンを投射された場合、仮にその9割を迎撃できたとしても、数十発から数百発は基地上空へと到達し、甚大な被害を受けることになります。
これは、列線や格納庫にある航空自衛隊の戦闘機の大部分を破壊するに十分すぎる数といえ、日本が開戦した場合、そこからごく短時間で航空戦力のほとんどを失ってしまう可能性があることを意味します。
こうした危機的状態を防ぐには、どのような方策が考えられるでしょうか。
参考は台湾空軍のやり方か
筆者(関 賢太郎:航空軍事評論家)が参考になると考えるのが、台湾空軍の方策です。台湾は日本とは段違いの高確率で先制攻撃を受けると考えられているため、ひとつの解になるでしょう。
まずは、戦闘機を含む作戦機を分散配置し、頻繁に移動することです。台湾空軍では緊急時に高速道路を滑走路として運用することが可能であり、戦闘機を所定の空軍基地から移動させることによって地上撃破されるリスクを下げています。
日本には滑走路として使うことができる高速道路こそありませんが、その代わりに数千kmにわたる日本列島の各地に戦闘機の離着陸が可能な飛行場が多数あります。平時から臨時展開の訓練をしておくことで、全滅するリスクを防ぐことができます。
第2に「掩体」を増やすことです。掩体は強化コンクリート製の格納庫であり、戦闘機1機に対し1個設けることで、自爆型ドローンは完全に無力化することができます。また弾道ミサイルや巡航ミサイルであっても、貫通力に優れた「バンカーバスター」と呼ばれるものの直撃以外は防いでくれるため、ミサイル一発で複数機を破壊されることがなくなります。最悪の場合でも、1発で1機の損傷まで攻撃効率を激減させることができます。
台湾空軍の航空基地をGoogleマップなどで調べると、極めて多くの掩体が航空基地ごとに設けられ、日本とは逆に列線運用を行っていないことがわかります。
このように、分散運用や掩体整備を行わない限り、何十年・何兆円もかけて揃えた航空戦力が、たった数分の攻撃で水泡に帰すでしょう。早急な対策が必要なのは言うまでもありません。
06/27 06:12
乗りものニュース