実はぜんぶ「農道」!? 埼玉の道路地図にまぎれた“隠れ快走路”3選 ICまでスイスイ 実質的な大動脈も
現在進行形で都市化が進み、ところどころ渋滞している埼玉で、信号の少ないルートとして選んだ道路――それはもしかしたら「農道」かもしれません。なかには地域の動脈として機能しているところもあります。
地図でも分かりにくい「農道」知る人ぞ知るルート
埼玉県は東京のベッドタウンであるだけでなく、広大な農地で多くの作物を生産する“食糧供給基地”でもあります。その農地では、資材や農産物の効率的な運搬のための「農道」が縦横に走っています。
これら農道のうちいくつかは、複数の市や町をまたぐ大規模なもので、農業に従事するクルマだけでなく、一般のクルマの往来にも大きく貢献しています、農道は基本的に市街地を離れたところを走っているため、交通量の多い主要道との交差点が少なく、流れがスムーズです。また沿線は基本的に農地であり、ロードサイド店への出入りで混雑するようなこともありません。大きな建物がなく見通しがいいことも、順調なクルマの流れにひと役買ってます。
こうした特性から、農道は一般道でありながらも、法定速度や規制速度にきわめて近い流れで移動が可能となっています。今回はそうした埼玉の農道のうち“使えるもの”3つを採り上げ、ご案内したいと思います。
■埼葛広域農道
吉川市、松伏町にまたがる工業団地「東埼玉テクノポリス」から北に延び、幸手市を結ぶ約19kmの農道が「埼葛広域農道」です。
この地域での南北の交通は今も国道4号が主役を担っていますが、旧道は片側1車線で、かつ旧日光街道沿いの市街地を通ることから、渋滞しがちで、流れは順調とは言えませんでした。
埼葛広域農道はこの国道4号の東に並行する同じ片側1車線の道路ですが、農地のなかを走るため信号も少なく、移動時間では圧倒的に有利な存在で、長らく抜け道として使われています。
国道4号の渋滞対策として、埼葛広域農道のさらに東を走る「新4号国道(越谷春日部バイパス/春日部古河バイパス)」が2001年までに4車線化されると、埼葛広域農道の抜け道としての存在感はやや低下しました。
それでも新4号のこの区間は交差道路との信号が多くストップ&ゴーを強いられること、吉川市や春日部市東部から久喜市北部、加須市方面に抜けるクルマにとっては埼葛広域農道のほうがより短い距離で移動できることなどから、引き続き重要な幹線道路として機能しています。
未開通の国道バイパスを補完する存在も
■稲穂通り
埼玉県内は「東西交通が弱い」というのがだれもが知る“定説”です。実際、地図を眺めても、県央から県北で東西を貫く主要道は、国道16号、国道125号、そしてその間にある高速道路の圏央道(国道468号)くらいしか見当たりません。
ところが地図では目立たなくても、鴻巣市と白岡市の間をショートカットするように走る、約14kmの農道があります。それが「稲穂通り(南北埼広域農道)」です。
鴻巣市側は国道17号「熊谷バイパス」の起点、箕田交差点に近く、熊谷バイパスからわずかな時間でアクセスできます。
白岡市方面へは、田園地帯をいくつかのカーブで縫うように走り、圏央道とも500mほどにわたり並行したのち、柴山沼公園の南を抜けて国道122号と交差します。そのまま走ると、白岡工業団地を抜け、東端となる県道3号さいたま栗橋線との交差点です。
信号が少ないことから、この間の所要時間は、日中でもわずか25分ほど。国道17号熊谷バイパスから国道122号を経由し蓮田市、岩槻市方面への、とても有用なルートです。
■みどりの道
埼玉県内の農道で、その距離、また短絡性においても「もっとも使える道」とされているのが、「みどりの道(大里比企広域農道)」です。起点は熊谷市の荒川大橋南側の「村岡」交差点で、上尾市の北、川島町まで約19kmを結びます。終点からは圏央道の川島ICもすぐです。
その特徴は、なんと言っても片側1車線ながらも、信号の少なさによるスムーズな流れ。全線にわたり規制速度40km/hですが、時間帯によって県道27号東松山鴻巣線との「下細谷」交差点で多少渋滞するくらいで、たいていは指定速度にほぼ等しく流れ、約30分で走り抜けることができます。
熊谷市は埼玉県北エリアの中心都市であり、さいたま市、上尾市、川越市などとのクルマの往来がさかんですが、さいたま市方面へのバイパスとなる「上尾道路」がいまだ未完成なこともあり、国道17号はつねに渋滞気味です。かといって関越道を利用しようとすれば、熊谷市街地と花園ICが離れていることもあり、アクセスルートとしては使いづらさがあります。
みどりの道は、距離的にはやや遠回りながらも、これら埼玉県の南北主要軸を結ぶ動脈として機能しています。
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さて、このように埼玉県内の交通に重要な役割を果たす農道ですが、その流れの速さゆえ、速度違反の取締りが頻繁に行われている地点もあります。
規制速度を上回るペースで走っても、一定の速度で流れる車列に追いつくのが通例です。「ゆっくり走っても早い道」という意識で、のんびり走ることを心がけましょう。
06/23 12:12
乗りものニュース