「撮り鉄」歓迎!! 「最後の国鉄形特急」引退に沸く沿線に、“国土交通大臣”が来たワケ 熱烈おもてなしがスゴイ!

「最後の国鉄形特急」となった381系「やくも」引退を前に、伯備線沿線の盛り上がりは最高潮。全国から鉄道ファンが集まり、地元がもてなす姿を視察しようと、国土交通大臣までやってきました。

42年走った特急の引退 地元が盛り上がっている!

 国内最後となった“国鉄特急形”381系電車の特急「やくも」が、2024年6月15日、いよいよ定期運行から姿を消します。これを前に、「やくも」が走る伯備線沿線は全国から鉄道ファンが集まっています。

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6月14日の「やくも27号」でその役目を降りる国鉄色リバイバルカラー編成。多くのファンの目を楽しませた。備中川面-方谷(坪内政美撮影)。

 残る381系は、6月14日にリバイバル塗装で復刻し引退フィーバーの火付け役となった「国鉄色」「緑一般色」編成が、翌15日の岡山発の一番列車「やくも1号」に充当する現行の「ゆったりやくも」編成をもって全車引退。新たに導入された273系に置き換わります。

 1982(昭和57)年7月1日、伯備線全線と山陰本線 伯耆大山~知井宮(現・西出雲)間の電化とともに新製登場した381系は、42年にわたり、山陰と山陽を連絡する特急として走り続け、伯備線のシンボル的存在として沿線住民に親しまれてきました。

 とくに岡山側の新見、高梁、総社3市においては、伯備線沿線を訪れる鉄道ファンが全国から急増する盛り上がりに、ファンに向けた様々な取り組みを行っています。新見市観光協会や地元住民で運営している井倉駅では、かつて「伯備の三重連」としてSLブームの一大聖地だった過去や、381系やくもを紹介する鉄道コーナーを駅前の観光案内所内に設け、休憩の場を提供するとともに、オリジナルグッズの製作や記念スタンプの設置を行っています。

 2009(平成21)年まで新見駅で車内販売や駅売りを行っていた老舗駅弁店「大阪屋」は、「381系には思い入れがあり、ファンや地元の皆さんに思い出と一緒に味わってほしい」と、8日より「さらば381・勇退辨當」を限定発売。店頭販売ができないほどの予約で、その盛況ぶりに驚いているといいます。

 また、高梁市と総社市では行政間がコラボし、撮影マナーアップと誘客を目的とした「特急やくも撮り鉄クイズ」を展開。開始初日で参加者が200人を超えるなど反響が高く、15日には抽選でのマナー講座を兼ねた撮影ミニツアーも実施。今後数回の開催を予定しています。

 こうした盛り上がりを見せる沿線に、なんと現役の「国土交通大臣」がやってきたのです。

「撮り鉄」を一緒に 斉藤大臣が来たワケ

 伯備線のうち5か所のカーブ、4本の橋りょうが架かる備中川面~方谷間を含め、そのすべてが撮影地という高梁市川面・高倉・方谷地区は、鉄道ファンの間では知られた存在です。そこで、他地域での撮影トラブルの事例を受けて住民で発足した「TEAMひとよせ」が来訪者にアンケートをとり、その結果を受けて撮影地の整備のほか、各市民センターや地主に協力を仰ぎ駐車場の提供や誘導を行ったり、仮設トイレを設置したりしました。

「自分たちの町の魅力を教えてくれたファンを歓迎することで、撮影マナー向上と町おこしに繋がれば」との思いがあったといいます。撮影地に隣接する運送会社敷地内に自販機やベンチを設置したほか、飲食店の少ない撮影地で地元弁当店による弁当販売も実施し、好評を得ました。

 この取り組みに対し、「TEAMひとよせ」には今年3月にJR西日本から感謝状を贈呈されたほか、5月25には、斉藤鉄夫国土交通大臣が現地視察に訪れ、関係者を激励。その活動に感銘したといいます。

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沿線では最後の勇姿を収めようとファンが集まっており、引退発表後は当たり前の光景に。方谷―井倉(坪内政美撮影)。

 事務局を務める青野学而さんは昨今の“撮り鉄によるトラブル報道”の印象もあり、当初は住民に理解してもらうのに苦労したと話します。「みなさんの勇気が励みにもなりましたが、責任も感じます。これからは井倉駅など他地域と連携して活動を進め、観光に繋げられれば」と明かしました。

いよいよラストラン! 6月14日は各地でイベントを開催

 前出した新見市の井倉駅では、地元住民が運営する井倉駅運営委員会が「381系やくも」引退に伴う記念カードを、国鉄色編成の運行最終日となる6月14日8時30分より381枚限定で配布します。当日、井倉駅観光案内所で観光記念証や缶バッチ、カレンダーポスターなどのグッズを購入した方にひとり1枚を配布するそうです(電話での予約や取り置きは不可)。

 当日は地域間を越えた交流と賑わいを目的に、隣の高梁市から、鉄道ファンへのおもてなしを行ってきた川面地区の住民や高梁市観光課、観光協会がおもてなしブースを井倉駅前に構え、ファンの間で話題となった撮影地弁当の販売や、地域のおばあちゃんたちが手縫いで製作した「やくもストラップを」配布、高梁市の観光PRも行います。駅ホームでは381系通過時に、地元の方々による手作りプラカードで見送るそうです。

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6月14日の「やくも19号」でその役目を降りる「緑やくも」編成。多くのファンの目を楽しませた。方谷―井倉(坪内政美撮影)。

 また、国鉄色編成による「やくも9号」が新見駅を発車(12時16分)した後、13時より、駅前にある新見市観光協会・観光案内所にて井倉駅同様、「381系やくも」引退記念カードを381枚限定で配布します。当日、観光案内所でこの日から発売を開始する「新見鐡道観光証」などのオリジナル鉄道グッズを購入した方にひとり1枚を配布するそうです(電話での予約や取り置きは不可)。

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