JAL・ANA機らが代替着陸、行先は米軍「嘉手納基地」!? “珍事”なぜ起きた? 背景を基地に聞いた

那覇空港の天候急変により3便の民間便が、米空軍・嘉手納基地へ代替着陸しました。普段は軍用機ばかりが発着する嘉手納基地が、旅客機を受け入れた背景は何でしょうか。

緊急時「民間機の基地受け入れ」は一般的?

 沖縄の米空軍・嘉手納基地で2024年5月31日、珍しい事象が発生しました。那覇空港へむかっていたJAL(日本航空)、ANA(全日空)、JTA(日本トランスオーシャン航空)の3便が着陸できず、嘉手納基地に代替着陸(ダイバート)したのです。これにはどのような背景があったのでしょうか。

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嘉手納基地(画像:アメリカ空軍)。

 まずはこれらの便が代替着陸するまでの経緯を見ていきます。

 同日、那覇空港に到着した他社の旅客機から尾翼に付く「放電索」がなくなったとの連絡を受けて、滑走路の点検が行われている間に、沖縄本島へ流れ込んだ湿った空気により低空に雲が発生。これが那覇空港周辺の視界を悪くさせ、着陸が許されなくなりました。このため代替着陸する空港が到着する各便に振り分けられ、この3便は嘉手納基地へ向かいました。

 これら3便を含めて、この日、欠航や出発空港へ引き返す、または遅延などの影響を受けたのは約50便にのぼったということです。

 一般に航空界は軍民の区別なく、天候の急変やエンジンの故障に加えて、燃料が足りなくなった場合や機内で急病人が出たなど、飛行中の緊急トラブルの連絡を受ければ、最寄りの空港や基地が着陸機を受け入れます。

 今回、筆者は嘉手納基地を使う米空軍第18航空団にその経緯について問い合わせたところ、次のような回答が帰ってきました。

嘉手納基地に聞く「3便受け入れの経緯」

「日本との2国間協定に基づき、嘉手納基地は(日本の空港の)代替空港として機能しています。5月31日については、那覇空港側から悪天候により航空機の着陸ができない連絡を受け、旅客機3機と航空自衛隊の戦闘機7機が嘉手納基地に着陸、天候の回復を待ちました」。

 つまり、今後も同じような突発的な悪天候があれば、嘉手納基地への旅客機が代替着陸をする可能性はあるということです。

 那覇空港と嘉手納基地は約25kmしか離れていないため、代替の機能は十分にあるといって間違いありません。また、嘉手納基地の2本の滑走路の全長は3689mで、那覇空港の3000mと2700mより長いため、操縦士にとって着陸はしやすいでしょう。

 しかし、一部では嘉手納基地を離陸するまで時間がかかったことを指摘する声があります。基地内はあくまで「米国」なので、他の国内民間空港のように再出発の手続きを容易に実施することが難しいためです。

 一方、嘉手納基地は、「安全は最優先事項であり、(日本などの)同盟国と協力して航空機の安全運航の確保へ支援できることをうれしく思います」とも回答しています。ここはもちろん課題といえるポイントですが、軍民、そして国を超えたタッグによって3便の安全が確保されたのは事実でしょう。

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