“山手線の踏切”なんてまだマシ? 都会に残る「開かずの踏切」5選 行ってわかった深刻さの“違い”

「開かずの踏切」は立体交差化の進展によって、少しずつ数を減らしていますが、東京の山手線とその周辺でも意外に残っています。なかには、「なかなか開かない」の質がちょっと違うところもあります。

「山手線最後の踏切」そこまで深刻じゃない?

 カンコン♪カンコン♪ と警報器が鳴って遮断機が下り、列車が通過する。そんな踏切に旅情やロマンを感じる人も多いと思います。しかし都市部においては、人やクルマの往来の支障になる「開かずの踏切」が問題視され、交通安全の見地からも、立体交差化による踏切の廃止は大きな流れになっています。

 その一方で、東京の中心部近くには、まだまだいくつもの踏切が残っています。山手線沿線とその近隣にある特徴的な踏切を5つ巡ってみると、それぞれ“課題”が異なることもわかりました。

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埼京線・湘南新宿ラインの青山街道踏切。歩行者はかなり多い(植村祐介撮影)。

第二中里踏切(山手線 駒込-田端)

 環状運転をする山手線(旅客線)と、湘南新宿ラインが走る山手貨物線は、大崎駅から駒込駅まで併走しますが、駒込駅を過ぎると山手貨物線は山手線の下をくぐり、赤羽方面へと向かいます。その立体交差の手前にあるのが「第二中里踏切」です。

 この踏切の最大のポイントは、環状運転する「山手線」に唯一残る踏切だということ。それだけに遮断機が下りている時間が長く続くように思えますが、ラッシュ時を除けば「ずっと閉まりっぱなし」ということはありません。さらにコロナ禍に行われた山手線の減便もあり、日中は開いている時間が長く、意外と“実用的”な踏切になっています。

 なお、この地点も山手貨物線は並行しているものの、一段低い場所を通るため、踏切があるのは山手線のみです。

 東京都はこの近隣に山手線を高架で渡る道路(補助第92号線)を事業化しており、第二中里踏切はその開通にあわせ廃止となることが決まっています。その実現には、まだしばらくの時間がかかりそうです。

 アクセスは駒込駅南口を出て、線路沿いの道を進むルートがわかりやすく便利です。

厩道踏切/青山街道踏切(埼京線・湘南新宿ライン 新宿-渋谷)

 まさに都会のど真ん中にある踏切が、この「厩道踏切」と「青山街道踏切」です。この付近で並走する山手線と中央線は高架ですが、地上を走る埼京線・湘南新宿ライン(山手貨物線)は2つの踏切を横断しています。

 代々木駅からJR線の東側、明治通り方面に進む場合、JR利用者は代々木駅東口が利用できますが、西口側にしか出口のない都営大江戸線の利用者は、このどちらかの踏切を渡るか、南に150mほど進んだガードをくぐるしかありません。厩道踏切を使い明治通りとの交差点に出るまではわずか300m弱のところ、ガードに回り込むと交差点まで900m近くも歩くことになり、必然的にこの踏切に人が集中します。

 そのため湘南新宿ライン、埼京線が上下合わせて1時間あたり40本以上が通過する朝のラッシュ時は、電車の通過を待つ人でごった返し、イライラで張り詰めた空気が伝わってくるほどです。

 アクセスはJR代々木駅、都営地下鉄代々木駅のほか、東京メトロ副都心線北参道駅も利用できます。

ターミナル駅近くの踏切は鬼門!?

 タイミング次第で「開かない!」、そんな踏切も少なくありません。

第一雲雀ヶ谷踏切(埼京線 池袋-板橋)/東3号踏切(東武東上線 北池袋-下板橋)

 埼京線、東武東上線が並行する区間の踏切で、名称はそれぞれ異なりますが、複線ふたつを渡る踏切として一体運用されています。

 ここのポイントは、なんと言っても“ツボにはまったとき”の待ち時間の長さです。

 埼京線は池袋駅以南で同じ線路を共用する湘南新宿ラインとのからみでダイヤが乱れやすいうえ、東上線も北池袋と下板橋との駅間が短く、各駅停車の踏切通過に時間がかかります。さらに東上線は池袋駅で折り返しとなるため、ダイヤが乱れると、この区間での「停止信号待ち」も頻発、文字通りの“開かずの踏切”になってしまうのです。

 ただ救いは、踏切のすぐ横に地下道が整備されていること。待ち時間が長いことを知っている地元の人は、警報器が鳴ると迷わず地下道に下りて行きます。

 なお東京都はこの埼京線、東上線の踏切をまとめて立体交差でパスする補助第82号線を事業化しています。ただ、踏切の西側は住宅密集地となっているため、その開通にはまだまだ時間がかかりそうです。

 アクセスは東上線の北池袋駅を降りてすぐです。

第三下田端踏切/第二下田端踏切(東北回送線 上野-尾久車両センター)

 運転本数は少ないのに、いったん遮断機が下りると待ち時間が長い、そんな踏切がこの「第三下田端踏切」「第二下田端踏切」です。

 その待ち時間の長さは、この踏切がJR東日本の尾久車両センターに出入りする電車の回送線上にあることに由来します。警報器が鳴り、遮断機が下りてから、ふつうの踏切に比べ「3倍くらいは待ったかな?」というところで、回送車両がゆっくりと通過していきます。

 アクセスは田端駅北口を下り、高架橋を東に渡ったあと、道なりに進みましょう。

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東北回送線の第三下田端踏切。高架の上野東京ラインに並行して地上に回送線が通っている(植村祐介撮影)。

井頭踏切/根岸踏切(京浜東北線 王子駅-東十条駅間)

 都内にあるJR東日本の踏切において“ラスボス”的存在が、この両者ではないでしょうか。

 隣り合ったこのふたつの踏切が渡るのは、京浜東北線、上野東京ライン、湘南新宿ラインの3複線。近隣駅の発着時刻をもとに平日朝7時台、8時台の通過本数を推定すると、それぞれ70本以上。じつに1分に1本以上が通過するため、「開いてることがまれ」という状況なのです。

 運転本数が少なくなる日中でも、1時間あたり30本以上が通過するため、いったん遮断機が下りるとまとめて4-5本待ちになることが珍しくありません。

 よって歩行者はのんびり待つか、井頭踏切に隣接する地下道をくぐるのが常。クルマで利用するのは「どうしてもこの踏切を渡らなければならない」という事情がある人だけでしょう。

 実際、踏切周辺は道も狭く、踏切待ちのクルマが線路西側に並行する道路(クルマがすれ違えない道幅なのに対面通行!)まであふれ、踏切が開くまであたり一帯がまったく動かなくなることもあるくらいです。

 アクセスは東十条駅南口からが便利です。

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 以上、都心に近い「開かずの踏切」を5つ紹介しました。近くを通った際は、待ち時間をあえて楽しんでみるのもいいかもしれません。

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