「おお、スカ色だ!」鉄道ファンはなぜグッとくるのか? 各地で見られた“青い電車”

新潟で「スカ色」の車体色を再現したラッピング電車が誕生し、注目を集めています。鉄道ファンの人気と敬意を集める「スカ色」とは、一体なんなのでしょうか。70年以上におよぶ歴史を振り返ります。

これが広告? ラッピングで「スカ色」再現

 2024年5月、えちごトキめき鉄道で「スカ色」のラッピングを施した電車が走り始めて話題を呼んでいます。「スカ色」とはどのような塗装なのでしょうか。

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房総半島を走っていたスカ色の113系。左は、踏切事故対策で前面が強化されている。引退が迫った2009年頃(遠藤イヅル撮影)。

 えちごトキめき鉄道は、北陸新幹線の開業に伴い経営分離される、新潟県内における信越本線・北陸本線の並行在来線区間を引き受けて2015年3月に開業しました。

 2019年には、いすみ鉄道の経営再建に貢献した鳥塚 亮氏が社長に就任。D51型蒸気機関車を動態保存で展示する「直江津D51レールパーク」のオープンや、国鉄型電車413系をかつての交直流電車急行色に塗り替えて運行するなど、様々な振興策を打ち出しています。

 その一環として、2021年8月には、えちごトキめき鉄道が所有するET127系電車を「新潟色」と呼ばれる赤と黄色のツートーンカラーにラッピングしました。新潟色とはその名の通り、昭和40~50年代初頭に新潟地区を走っていた電車に塗られていた色でした。

 ラッピングといっても、実際は建材メーカーの田島ルーフィング(東京都千代田区)の広告車両です。広告車両では全身を広告で覆うのが常ですが、同社の田島常雄会長が大の鉄道ファンということもあり、新潟色にラッピングしつつ広告はわずかしか入れない、という手法で製作されました。そのため「田島塗り」とも称されています。

 旧型国電を模すために、窓上下のシル・ヘッダー、貫通扉・乗務員ドアを木製に見せるグラフィックが施されており、単なる色変えではないその出来栄えに、多くの鉄道ファンが感嘆の声をあげました。

 そして2024年5月、「田島塗り」第2弾となる「スカ色」ラッピングがデビュー。新潟色ラッピングと同様、ステンレス車両に見えない仕上がりです。そのうちの1両、クハET126-8には、郵便荷物車の窓に入っていた保護棒のような縦線や、田島ルーフィングのシンボルマーク「三星」を当時の郵便マークに見立てたロゴも入っており、そのこだわりには感服です。

で、「スカ色」ってなんなの?

 スカ色とは「横須賀色」の略。1951(昭和26)年に横須賀線に70系電車が投入された際、初めてお目見えしました。

 それまでの国鉄の電車はおおむね茶色(国鉄の色名では「ぶどう色2号」)だったため、「クリーム2号」と「青2号」に塗られた横須賀線の電車は、同時期に東海道線で走り始めた緑とオレンジの「湘南電車」(80系)とともに、当時の人々には驚きを持って迎え入れられたことでしょう。

 それまでの横須賀線には、戦前製造の32系、42系などが茶色塗装で走っていましたが、70系の運転開始以降、順次スカ色に塗り替えられました。1963(昭和38)年には、塗装を「クリーム1号」と「青15号」に変更。クリーム色は黄色みが抜け、緑っぽかった青はインクブルーになって鮮やかな印象をアップしました。

 1962(昭和37)年から“新性能電車”と呼ばれた111・113系電車が横須賀線に導入された際には、当初湘南色で塗られていました。しかし東海道線との乗り間違いを防ぐため、1965(昭和40)年から再びスカ色に。ただし塗り分けを湘南色と同じ位置にしたためクリーム色の面積が多く、たった数か月で窓周辺のクリーム色を減らす塗り分けに修正されました。

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横須賀線のE217系。スカ色はクリームと青の帯に(画像:写真AC)。

 その後も横須賀線では、1994(平成6)年から113系の置き換え用に登場したステンレス車両のE217系電車でもスカ色を堅持。帯だけになってしまいましたが、伝統の色は残りました。

 そして2020年以降、E217系を入れ替えるために新製が続いているE235系1000番台電車も、2012年より用いられているクリーム1号+青20号の帯を巻き続けています。

西日本にも伝播した「スカ色」

 スカ色は横須賀線のみならず、いろいろな路線でも使用されました。

 70系は中央本線(中央東線)と阪和線などにも新製配置されましたが、前者は当初の茶色からスカ色に、後者は新製時の「阪和色」(緑1号+クリーム3号)から、スカ色に塗り替えられたため、最終的にはスカ色をまとっていました。

 その後、横須賀線や中央本線から転出した70系は、両毛線・長野原線(現:吾妻線)などの高崎地区、信越本線・篠ノ井線などの長野地区、さらには中央本線(中央西線)、広島地区の福塩線などで運用されました。

 このほか、飯田線・身延線などでも、昭和40年代から戦前型を主とした旧型国電にスカ色を塗装。中央東線では1966(昭和41)年投入の115系、房総地区でも1968(昭和43)年に配置された113系がスカ色を採用していました。

 111・113系と115系は性能が異なることもあり、同じスカ色でも正面の塗り分けで区別がつきました。青が斜めなのが111・113系、四角いのが115系でした。

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横須賀線の最新型E235系(画像:写真AC)。

 しかし現在では、スカ色で走る電車は横須賀線のみとなり、スカ色は名実ともに「横須賀色」になった、と言えるかもしれません。

 なおえちごトキめき鉄道の「田島塗り」の第2弾でスカ色が選ばれた理由について、前出の田島社長は、「横須賀線色は、信越本線でも使われていた色」と語っています。今はなきスカ色のラッピング電車が、えちごトキめき鉄道や地域の活性化を促すことを期待しています。

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