一般公開なくなった総火演 24年度の様子は 戦車など53両参加

一般公開が中止となってから2回目となる富士総合火力演習が実施され、その様子が報道陣へ公開されました。自衛隊各学校の教育の場である総火演。観覧できず残念がる前に、その意義を今一度考える必要がありそうです。

総火演はエンタメにあらず

 2024年5月26日、「総火演」とも通称される「令和6年度富士総合火力演習」が、東富士演習場(静岡県御殿場市、裾野市、小山町)で実施されました。今年はインターネットによるライブ配信はなく、後日、編集した動画が配信されますが、報道陣には当日公開が行われました。

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令和6年度富士総合火力演習の様子(2024年5月26日、月刊PANZER編集部撮影)。

 昼間演習では約47.8t、夜間演習では約20.6tの弾薬が使用され、約2100名の隊員と、53両の戦車・機動戦闘車など、38門の各種火砲、12機の航空機が参加しました。一部では使われた弾薬の予算規模ばかりが報じられますが、注目すべきはそこではありません。総火演は民間人を含む見学者が詰め掛ける射場に、実弾を装填したこれだけの数の戦車や火砲、航空機が秒単位で入れ代わり立ち代わり進入して射撃を展示するという、高難度の演習だということです。

 一般見学者は射撃の迫力に驚きますが、見学する外国駐在武官は限られた広さの射場でスピード感を持って展開される、実弾演習の練度と指揮統制能力に驚くといいます。つまり、国外に陸自のプレゼンスを誇示する機会にもなっているのです。東日本大震災が発生した2011(平成23)年にも総火演は実施されました。これが抑止力の本質です。

 昼間演習は前段と後段に分かれ、前段では陸上自衛隊が装備する各種火器、火砲などの性能、効果が個別に展示されました。後段は陣地攻撃における、諸職種協同による火力戦闘の実相展示でした。

 今年は隠顕する標的(ポップアップ)などを活用し、各級指揮官の戦闘指揮に基づく火力戦闘の様相を、スピード感をもって教育するようにしたそう。新しい試みとして隊員目線での臨場感を伝えるため、ウェアラブルカメラも活用されました。

 夜間演習では暗視装置や照明弾、曳光弾も多く使用され、特に照明弾が夜空に浮かび地表を照らすと、無灯火で動き回る車両がはっきりと見えるなど、夜間ならではの様相が示されます。前段では夜間における各種火器、火砲などの特性を踏まえた射撃が展示され、後段では夜間の陣地防御における諸職種協同による火力発揮要領が示されます。

 一般公開が無くなったことは残念だという声も多く聞かれますが、総火演はエンタメの類ではなく自衛隊各学校の学生教育の場であり、今年は約5200名が研修しています。また昨今の厳しい募集環境を踏まえ、募集対象者、保護者、学校関係者が約3000名招待されたことは、総火演本来の姿に立ち戻ったともいえそうです。

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