日本初のミニ新幹線「400系」山形新幹線2代目「E3系」ナニが画期的? 一時は “日本最速” にも

2024年3月に新型車両として運行を開始したE8系電車は、山形新幹線としては3代目の車両になります。初代「400系」と2代目「E3系」はどんな特徴を持った車両だったのでしょうか。

レール幅だけじゃない、いろいろ画期的だった400系

 2024年3月16日(土)、JRグループが全国規模のダイヤ改正を実施。山形新幹線において新型E8系が営業運転を開始しました。

 山形新幹線は日本初の「ミニ新幹線」となった路線です。当初の運転区間は東京~福島~山形間で、いまから30年以上前の1992(平成4)年に開業しました。

 最初に用いられたのは400系と呼ばれる車両。同車は新幹線の「枠」を飛び出した画期的な電車で、最大の特徴は何といっても在来線への直通運転でしょう。

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山形新幹線の新型車両E8系(画像:写真AC)。

「山形新幹線」とひと口にいっても、東京~福島間は東北新幹線を走り、福島から先は在来線の奥羽本線に乗り入れる形で山形駅との間を結んでいました。しかし、新幹線と在来線は2本のレール間隔(軌間)が違うほか、トンネルや橋りょうのサイズも異なるため、基本的には直通運転できません。

 そこで、相互直通が可能なよう、奥羽本線を大幅に改造、軌間を新幹線と同じ1435mmに変更して乗り入れ可能なようにしました。

 一方、トンネルや橋りょう、駅のホームなどは大きく手を加えることなく、既存の在来線仕様の設備のまま転用できるよう、車両サイズは既存の新幹線車両よりも小さく設計されました。

 こうして生まれたのが400系だったのです。ミニ新幹線の第1号となった400系は、標準的な新幹線(フル規格)を走る車両とは異なる特徴がいくつもありました。

 フル規格の新幹線車両は座席が最大5列で配置されていますが、400系の車体は在来線の車両並みに幅が狭いため、普通車でも最大4列に抑えられています。ちなみに、400系はグリーン車1両と普通車5両で構成される6両編成(のちにグリーン車1両と普通車6両の7両編成に増強)でしたが、座席の間隔は同じ普通車でも指定席のほうが自由席より7cm広いという特徴がありました。

一時は国内最速記録を更新

 また、フル規格の新幹線は大型の新幹線車両にあわせて駅のホームなどが設置されているため、小型車体の400系が東北新幹線の駅に停車すると、車体とホームのあいだに30cmほどの大きな穴(隙間)ができます。これでは危険なので、ドア部分の足元にステップを設置。走行時は車体に沿うようにして収納されますが、駅に停車するときは飛び出て、ドアとホームのあいだの隙間をふさぎます。

 しかも、400系は福島駅で連結・切り離しに対応できるよう、車両の先頭部には非常用の連結器を収納し、お椀のような形のカバーを付けていました。

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山形新幹線のE3系。踏切があるのも山形新幹線の特徴(画像:写真AC)。

 なお、営業運転での最高速度は新幹線区間が240km/h、在来線区間が130km/hでしたが、山形新幹線の開業に先立つ1991(平成3)年に行われた上越新幹線を使っての走行試験では、最高速度345.8km/hを記録。リニアを除く日本の鉄道の速度記録として当時最速を出しています。

 400系は1995(平成7)年までに84両が製造され、1999(平成11)年には奥羽本線の山形~新庄間も山形新幹線の延伸区間として整備され、400系の運転範囲が拡大しました。車体の塗装もこのころリニューアルされています。しかし、延伸時に新型のE3系電車が山形新幹線に導入されたことで400系は順次姿を消し、2010(平成22)年に完全引退しています。

 こうして、1999(平成11)年以降、山形新幹線の2代目としてE3系が走るようになりました。

 ただ、E3系は元々、東北新幹線から秋田新幹線に直通する列車「こまち」用として開発された車両です。いまは山形新幹線でしか見られませんが、2020年までは秋田新幹線でも使われていたため、東北新幹線のほぼ全線でその姿を見ることができました。

ライト形状で2種類あるE3系

 E3系の特徴は、車体をアルミ合金製とすることで軽量化を図るとともに、モーター出力を向上させて、最高速度は設計上が315km/h、営業運転での最高速度は400系より35km/h速い275km/hになった点でしょう。

 実はこれ、同じ時期に開発されたE2系と同じで、モーターを制御する装置などもE2系と共通です。そのため、400系の後継車両というより、E2系をミニ新幹線向けにアレンジした車両だと形容できるかもしれません。

 車内にはコンセントや防犯カメラが設置されたほか、普通車の自由席と指定席の座席間隔も統一が図られました。

 外観形状も、400系が丸みを帯びたデザインだったのに対し、E3系はエッジの効いたシャープなものになっています。先頭形状も曲面よりも平面が多用されたシルエットに改められています。

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山形新幹線のE3系2000番台。前掲のE3系1000番台とはヘッドライトの形状が異なる(画像:写真AC)。

 なお、当初導入されたE3系1000番台は、ヘッドライトの形状が秋田新幹線用の0番台と同じ形状をしていましたが、400系の更新用として増備された2000番台では、いわゆる「ツリ目」に改められたほか、運転席の窓周りの塗装も変わっています。

 また2000番台は自由席(16・17号車)のシートピッチを拡大したことで、編成全体の定員が0番台および1000番台と比べて8名減っています。

 またE3系におけるもう1つの大きな特徴に挙げられるのが、大幅なカラーリングの変更でしょう。車体の塗装は、400系の運行開始以来、長らくシルバーとグレーの2色に緑の帯というものでしたが、2014年以降、白と紫の2色に黄から赤へのグラデーションを加えた塗装に変わり、2016年には全車がこの外観に一新されています。

 この白と紫を基本とした塗装は、3月16日から走り始めた新型E8系にも踏襲されています。

 新たに導入されたE8系は、東北新幹線内での最高速度が300km/hにアップすることで東京~山形・新庄間の所要時間が4分短くなるとのこと。今後の運行ダイヤを作るうえでE3系の速度の遅さはネックになり得るため、数年で山形新幹線からもE3系が姿を消すと考えられます。

 昔ながらのショートノーズのミニ新幹線、E3系を見ることができるのもそれほど長くなさそうです。

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