特撮映画に出てきそう? 陸自“異形の新装備”が量産へ 一体何に使うのか

防衛省が「新たな重要装備品」として盛り込んだ「対空電子戦装置」は、その特徴的な見た目もSNSで話題になっています。いかにも「レーザーを出しそうな」装置と思いきや、そのような攻撃用途ではないのです。

「怪獣映画で見たやつだ!」すっごい強力なレーザーを出しそうな…?

 防衛省が2024年1月25日に「新たな重要装備品」として盛り込んだ「対空電子戦装置」。これまで陸上自衛隊に配備されたことがない新規装備として、2024年度予算の概算要求にも盛りこまれ、話題を呼びました。いったいどんな装備なのでしょうか。

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陸上自衛隊向けの新装備、対空電子戦装置(画像:防衛省)。

「対空電子戦装置」の特徴は、車両に巨大なパラボラアンテナが搭載されたその外観です。2023年8月に装備のイメージが公表された際、SNS上では「怪獣映画で見たやつだ!」「レーザービーム出しそう」などと盛り上がりました。

 この「対空電子戦装置」は、主に敵の早期警戒管制機に妨害電波を発し、レーダーを無力化することが想定されています。

 昨今、電磁波領域の活用範囲や用途が拡大したことで、電子戦が急激に重要性を増しています。防衛省は、電磁波領域における優勢の確保が喫緊の課題としています。

 そうした状況を踏まえ、通信・レーダー妨害能力や、電子戦防護力、電子戦支援能力、電磁波管理機能の強化のほか、小型ドローンへの対処に取り組む方針です。

「対空電子戦装置」は、上記の「通信・レーダー妨害能力」を強化する一環として、陸上からレーダー妨害を行うために導入が計画されているものです。防衛省の2024年度予算案には、その取得費として62億円が計上されました。

「対空電子戦装置」が配備される部隊とは

 防衛省はさらに、この対空電子戦装置について、新設する「対空電子戦部隊」に配備することを明記しました。同部隊の新設自体は、2022年12月に発表された「防衛力整備計画」に盛り込まれています。
 
 部隊が対処することを想定している早期警戒管制機は、目標検知や味方戦闘機の指揮などを主な任務とする軍用機で、いずれも大きなレーダードームを搭載していることが外観上の特徴。保有国にとって広域を見通す「目」であり、価格も非常に高価な「虎の子」とも言える存在です。有事の際は高価値目標にもなるため、そのレーダーを無力化できる意義は非常に大きいと言えるでしょう。

 防衛省は2020年度に取得した参考品を用い、対空電子戦装置としての実用試験を実施。電波妨害能力など、所定の要求性能を満たすことを確認できたため、量産取得を決定したとしています。
 
 量産単価は約28億円、ライフサイクルコストが約459億円と想定されており、約10式が調達される見込みです。なお、この数字については選定手続きの見積もりのため、今後変更する可能性があるとしています。

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