「変態設計や~めた」ってこと? 「8発プロペラ旅客機」開発の会社、新型でまさかの方針転換か

当初「8発プロペラ搭載」というユニークな設計をもつ旅客機を開発していたメイブ・アエロスペースが、新型機「M80」の開発を発表。ところがこの機、見た目は“普通”です。どのような経緯があったのでしょうか。

80人乗りの「ハイブリッド電動旅客機」

 オランダのスタートアップ企業メイブ・アエロスペースが2023年12月、新型ターボプロップ旅客機設計「M80」を研究・開発すると発表しました。同社は2021年に設立、その後、かなり“攻めた”設計をした旅客機設計案を公開していましたが、「M80」はそれらとは大きく異なったデザインをしています。

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メイブ・アエロスペースの「M80」旅客機案(画像:メイブ・アエロスペース)。

「M80」は80席を配するターボプロップ機で、後続距離は800海里(約1480km)。外観上は2発のエンジンを搭載した「双発機」ですが、ジェット燃料のほかに電動でエンジンをまわす機能を備えた「ハイブリッド電動エンジン」で、機体に10個の電池を内蔵します。

 これにより、消費する燃料を大幅に減らすほか、水素をベースにした次世代燃料「液体炭化水素燃料」での運用に対応することで、二酸化炭素の排出量を95%以上削減できるとのこと。就航は2031年を予定しています。

 その一方で、メイブ・アエロスペースでは2022年、44人乗りの完全電動旅客機「メイブ01」の設計案を発表していました。この機は公開当初、片翼に4基づつ、計8基のプロペラ推進装置を持つユニークな設計で耳目を集めていましたが、新型の「M80」はその奇抜な外観イメージから大きく転換しています。

変態設計「メイブ01」今後はどうなるの?

 メイブ・アエロスペースは以前、「メイブ01」の設計案について、次のように説明していました。

 この8発エンジンというレイアウトにしたのは、いわゆる冗長性や安全性を確保するため。現代のプロペラ旅客機で一般的なジェット燃料を用いて動かすエンジン「ターボプロップ」と比べると、「メイブ01」の電動プロペラは1基あたりのユニットコストが非常に低いことから、そのぶん多くのプロペラを搭載できるとしていました。また、稼働部品も少なくメンテナンスコストや騒音が最小限に抑えられるともしており、「騒音は従来比で40%程度削減できる」としていました。

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パリ航空ショーに合わせて発表された「メイブ01」の新デザイン(画像:メイブ・アエロスペース)。

 その後、メイブ・アエロスペースは2023年6月に実施されたパリ航空ショーにあわせ、「メイブ01」の設計に大幅な変更を加えたと発表。この新設計案は大型化が図られたほか、プロペラの数が4発まで減るなど、現代の一般的な旅客機に近しい設計のものとなっています。

 そして今回発表された「M80」はさらに大型化したにも関わらず、エンジン数が減少。動力源も「メイブ01」でうたわれていた完全電動から、「ハイブリッド電動」へと変わっています。

 同社の公式サイトで「M80」のイメージ・スペックが公開されると、入れ替わるように「メイブ01」の紹介ページが消滅しています。「メイブ01」の開発・研修が今後どのようになるかの公式発表はないため、今後の動きは不明瞭であるものの、同社が「M80」の開発に専念する方針へと切り替えた可能性も考えられそうです。

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