「47年選手」になるかも知れないJR四国の看板特急 リニューアルして使い続けるワケとは

JR四国がリニューアルした8000系特急形電車を報道公開しました。今後15年は使うとのことなので、1992年の登場から通算して45年程度、活躍する予定です。JR四国の看板である8000系は、どんな電車なのでしょうか。

JR四国初の特急形電車だった

 JR四国は2023年12月5日、リニューアルした8000系特急形電車を公開しました。2004(平成16)年から2006(平成18)年にかけ最初のリニューアルを行っており、今回は2度目のリニューアルということになります。

 JR四国 お客様サービス推進室の松岡哲也担当室長によると、「今回のリニューアル後、15年間は使用する」とのことなので、2038年までは使用する予定といえそうです。8000系の試作車が登場したのは1992(平成4)年ですから、最初のリニューアル時で13年目、今回で32年目、引退は47年目ということになります。

Large 231211 fkcym 01

2度目のリニューアルが完了した、JR四国の特急形8000系電車(2023年12月5日、安藤昌季撮影)。

 一般に鉄道車両の耐用年数は20~30年程度といわれているので、8000系は現時点でも長寿です。実際、JR化後に登場した特急形車両であるJR東日本651系やJR東海キハ85系は、8000系より前である1989(平成元)年の登場ですが、すでに完全引退しています。JR四国でも、1989年より導入した2000系気動車は廃車が始まっていますから、8000系の長寿はかなり珍しいものといえるでしょう。

 8000系の走る予讃線も、2014(平成26)年に新型の8600系電車が導入されていますが、JR四国によると「8600系を増備して8000系を置き換える予定はない」とのことです。

 なぜ、8000系が重視されるのか。資金規模が小さいJR四国では、頻繁な車両更新が難しいこともあるでしょうが、「もともと高性能な電車」という部分もあるでしょう。

 現に試作車が登場した時、目指していた最高速度は160km/hでした。京成スカイライナーが同じ速度で「在来線最速」とアピールしていますが、8000系は「踏切のある区間での160km/h」を狙ったのです。この場合、非常時には600m以内に停車する必要があるため、試作車の台車には特殊なブレーキが装備され、試験では150km/hからの600m以内停車に成功しました。

リニューアルコンセプトは原点回帰

 青函トンネル内に限り140km/hを出していた485系電車では、制動距離が950mにもなりますから、8000系はかなりの技術的飛躍といえます。しかし乗り心地や線路への影響などから、量産車では通常のブレーキとされ、160km/h運転は断念されました。

 とはいえ、量産型8000系は電動車の両数を減らしたいこともあり、試作車で150kWだった主電動機出力を200kWに強化しています。後継車の8600系は220kWなのでやや劣りますが、車体重量を3両で比較した場合、8000系が109.2トン、8600系が113トンなので、8000系の方が軽量で走行性能はほぼ同等です。

 制御付き振り子装置の採用により、曲線でも高速通過しつつ優れた乗り心地を実現(空気ばね車体傾斜の8600系よりも、曲線での乗り心地は上とされる)し、接客設備についても普通車にフットレストを備えるなど、グレードが高いものでした。こうしたこともあり、8000系は8600系と比較しても遜色なく、リニューアルで接客設備を改善すれば、今後15年の使用にも耐えると判断されたのでしょう。

Large 231211 fkcym 02

外観には、愛媛柑橘の「シャインオレンジ」と香川オリーブの「フレッシュグリーン」の塗装を施した(2023年12月5日、安藤昌季撮影)。

 今回のリニューアルコンセプトは、「瀬戸の疾風」と呼ばれた登場時への原点回帰とされています。外観には愛媛柑橘の「シャインオレンジ」、香川オリーブの「フレッシュグリーン」の塗装を施し、予讃線特急として8600系とのカラーイメージの共有を図りつつも、流線の横ラインで長編成を魅せるデザインとされています。

 変更の要点ですが、指定席車は肘掛けにコンセントが付いた新型座席に変更されています。座席の脚部は、それまでの2本脚から1本脚となり、足元スペースがすっきりしました。これはJR四国初導入とのことでず。なお、開発は女性社員主導で行われたとのことで、蜜柑柄のモケットが可愛らしいです。

気になる運行開始日は

 座席鉄の筆者(安藤昌季:乗りものライター)は着座してみましたが、着座感は良好で、背もたれも十分に倒れます。特に窓枠と肘掛けの位置がよく考えられており、以前より側窓側の肘掛けが使いやすくなっているのは評価できます。

 室内インテリアも“新車感”のあるデザインです。特に目につくのは、荷物棚下への照明追加で、これにより室内の光量が増え、居心地のよい明るさが実現しています。照明も間接照明となっており、やわらかい雰囲気です。

 また、指定席、自由席を問わず横引きカーテンがロールカーテンに変更されています。床も張り替えられ、デッキのデザインも変更されているので、イメージがガラッと変わりました。

 なお自由席は、モケット張り替え(海の「プクプク」のイメージ)だけで座席自体は交換されていませんが、8000系の普通車座席はもともとクオリティが高いので、さして問題は感じません。壁面にはコンセントが追加されています。

 ほかにも、デッキの内装変更や喫煙ルーム撤去による座席増加、車いす移譲席の設置、和式トイレの洋式化、既存洋式トイレの美装化など、現代の車両にふさわしい更新がなされました。

Large 231211 fkcym 03

自由席は、座席自体は元のままだが、モケットが張り替えられた(2023年12月5日、安藤昌季撮影)。

 リニューアル車は、2023年度は付属編成であるS編成1本のみが登場予定で、12月23日(土)の団体列車から運行を開始します。その後は1日2~3往復の運用に入るとのことで、グリーン車の付いたL編成のリニューアルは2024年8月に開始。全編成のリニューアル終了は2027年夏ごろになるとのことです。

ジャンルで探す