実は俊足! 35周年の快速「マリンライナー」 異形の編成 最高の車窓…なんて楽しいんだ!!

運行35周年を迎えた快速「マリンライナー」は、2階建て車両を連結して瀬戸大橋を渡る人気列車です。最高速度は130km/hで、表定速度で見ても特急並み。JR四国が話す「推し」も聞きました。

展望席も備えたグリーン車

 快速「マリンライナー」は、瀬戸大橋を渡って岡山~高松間を結ぶ快速列車です。同区間71.8kmを52~70分で結び、最速列車は表定速度(途中駅の停車時間も含めた速度)に直すと82.8km/hに。これはJR東海の新快速81.2km/h(豊橋~大垣)、JR西日本の新快速80.4km/h(米原~姫路)を上回る俊足です。

「マリンライナー」の最高速度は130km/hですが、JR西日本区間の岡山~茶屋町間では100km/hに制限されます。瀬戸大橋の一部でも最高速度95km/hですから、かなり制限を受けた状態ながら全国の快速列車でも最速レベル、特急並みの高速性を発揮しているといえます。

 運行本数は下り38本、上り35本と多く、早朝から深夜まで大体1時間に2本運行されています。

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快速「マリンライナー」。高松方はJR四国の5000系電車(2023年12月、安藤昌季撮影)。

 このように利便性の高い列車ですが、運行開始は1988(昭和63)年、瀬戸大橋線の開通時で、それから35年が経ちます。当初の列車名は快速「備讃ライナー」でしたが、JR西日本が列車名を公募し「マリンライナー」となりました。最初から全面禁煙で、当時としては珍しい施策でした。

 当初はJR西日本の213系電車で運行され、大きな側窓で窓向きに座席を備えた展望グリーン車も連結されていました。当時は瀬戸大橋ブームに加え運行頻度が1時間に1本だったこともあり、グリーン車は発売開始と同時に売り切れ、臨時快速も多数運行されました。

 あまりの人気で、213系のジョイフルトレイン「スーパーサルーンゆめじ」を組み込んだ、グリーン車3両の11・12両編成といった長大編成も見られたほど。こうした需要増に応えて普通車指定席が設けられ、現在まで続いています。

 大きな変革があったのは2003(平成15)年。「マリンライナー」の車両が更新されたのです。JR四国が5000系電車、JR西日本が223系電車5000番台をそれぞれ投入し、スピードアップも果たしました。

 そして特筆すべきは5000系の先頭「2階建て」車両(高松方)でしょう。運転台の後ろはグリーン車指定席で、前面展望も楽しめる展望席が備わります。先頭2階建ては昼行の定期列車としては唯一の存在です。

景色をよく見たいなら座席の「列」に注意!

 それでは実際に乗車してみましょう。利用したのは岡山9時33分発の「マリンライナー17号」です。午前9時半なのに「17号」なのは、1号が5時27分発と本数が多いからで、旺盛な輸送需要を感じます。

 17号は速達タイプで、高松駅までの所要時間は53分。グリーン車2階には私を含めて6人ほどが乗車、展望席は満席でした。普通車指定席は3割ほどが、自由席車両は多くが埋まっている印象でした。JR四国の広報室によると、利用人員(1日平均上下計)は1年を通じて1万人前後であり、2023年8月は1万3559人だったそうです。

 5000系は、走行性能こそ223系を踏襲していますが、2階建て車両(5100形)は台車を除き、JR東日本E217系電車のグリーン車を基にしています。なお、2階と車端部の平屋はグリーン席ですが、階下は普通車指定席です。

 指定席の座席間隔は970mmで、リクライニング角度が小さく枕や座席背面のテーブルが備わらないなど、グリーン席との差があります。17番の列には荷物置き場があります。

 グリーン車は座席間隔1000mmとやや広く、座席に座面スライド機構があります。荷物置き場は9番の列で、普通車より広めです。

 ただし、窓配置はE217系と同じ970mmで設計されているため、窓と座席の位置が少しずつずれています。窓と座席の位置が概ね合うのは、高松行きだと4・6・8番の列、岡山行きは3・5・7番の列です。瀬戸大橋で海が見やすいのはAB席ですが、1番(展望席)だと運転士のいないCD席の方が、前がよく見えます。

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5000系の先頭、2階グリーン車(2023年12月、安藤昌季撮影)。

 列車は9時40分に妹尾駅、9時46分に茶屋町駅へ停車。最高速度100km/hの区間なので、ゆったりとした走りです。グリーン車への途中乗車もありました。

2階席で130km/hを体験できる貴重な区間

 茶屋町駅からは最高速度130km/h区間となり、目に見えて速度が上がります。元になったE217系は最高速度120km/hで、新快速は有料座席Aシートでも2階建てではないと考えるなら、2階グリーン席から見る130km/hの車窓はJR常磐線の特別快速くらいで、レア。座席間隔も首都圏グリーン車やAシートより広く、枕や座面スライドもあって快適です。コンセントはありませんが。

 9時56分発の児島駅からはJR四国の区間となり、瀬戸大橋を通ります。高松行きはグリーン車展望席が先頭なので、瀬戸大橋内の迫力ある風景を楽しめます。岡山行きなら後方展望です。JR四国の広報室も、「推しはパノラマグリーン席からの眺望です」とのことです。

 瀬戸大橋線の児島~宇多津間は、最高速度120km/hと公表されていますが、瀬戸大橋内では騒音対策として最高速度が制限されており、95km/hという資料もあります。筆者(安藤昌季:乗りものライター)がスマートフォンのアプリで計測した際には75km/hまで下がりました。とはいえ単線区間もあり、速度制限もある中で、全体の表定速度が80km/h以上というのは、全国的にもかなり速い走りっぷりといえます。

 瀬戸大橋を渡り終えると「ようこそ四国へ」の看板が出迎え、間もなく坂出駅に到着しました。10時11分に出発した後は、猛然と130km/h運転を開始。スピード感に感動していると10時26分、定刻で高松駅に到着しました。

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瀬戸大橋を渡り終えるころ(2023年12月、安藤昌季撮影)。

 JR四国が所有する唯一の2階建て車両5000系に、運用上で特徴的な点はあるのでしょうか。JR四国の広報室は以下のように回答しました。

「グリーン車以外は、JR西日本でマイナーチェンジを重ねた223系5000番台とほぼ同じ仕様のため、メンテナンス性がよく、品質が安定しています。特徴は2・3・5・7両と様々な両数の編成が組まれる点で、時間帯ごとの輸送へ柔軟に対応しています。JR西日本と異なるのは、車両の部位呼称です。例えばNo.1の車軸といえば、JR四国では運転台を基準に一番前ですが、2階建て車両では運転台と反対側となっているので、メンテナンス時には注意が必要な部分ですね」

 筆者は、車両の快適性や高速性、また瀬戸大橋からの眺望を合わせて考えるなら、「日本有数の乗って楽しい快速列車」だと感じました。

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