シュウマイに「グリンピース」が乗ってたらそれは当たり!【みんなが知らない、シュウマイの実力】

ほぼ毎日シュウマイを食べ続け、日本シュウマイ協会を作るに至ったシュウマイ潤氏


ほぼ毎日シュウマイを食べ続け、日本シュウマイ協会を作るに至ったシュウマイ潤氏

連載【日本シュウマイ協会会長・シュウマイ潤の『みんなが知らない、シュウマイの実力』】第8回

「シュウマイのグリンピースが苦手」というあなた......。実は、全体の1割ぐらいにしか乗っていません。出会うほうが幸運? なぜ、グリンピースが乗るようになったのか? その歴史をシュウマイ研究家のシュウマイ潤が教えます。

【写真】台湾の崎陽軒のシウマイと町中華のシュウマイ

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シュウマイのシンボル的存在といえばグリンピース。実際、シュウマイをモチーフにしたイラストなどの大半には、グリンピースとおぼしき緑の丸印がほぼ100%使用されています。それだけ私たちの中で、シュウマイ=グリンピースという図式が成立しているのです。

では皆さん、最近食べたシュウマイにグリンピースが乗っていましたか? 恐らく、そんなシュウマイを食べたかたは全体の1割にも満たないでしょう。

実際、ここ約3ヶ月の間、ほぼ毎日シュウマイを食べ続けている私も、グリンピースの乗ったシュウマイに出会ったのは3回だけ。30日×3ヶ月=90日のうちの3回ですから、1割どころか5%にも満たない低確率です。世の中の代表的なシュウマイを見ても、グリンピースが乗ったモノはかなり少数派です。

前回の記事で紹介した、味の素冷凍食品の「ザ★®シュウマイ」にもありませんし、他の代表的な冷凍シュウマイにも、グリンピースが乗ったモノは存在しません。

テイクアウト系でもそう。大阪難波の「551蓬莱」も、デパ地下などでよく見かける「PAOPAO」も、東京を代表する持ち帰りシュウマイ「小洞天」や「維新號」もグリンピースが乗らないシンプルな肉シュウマイであります。

崎陽軒の「昔ながらのシウマイ」。グリンピースは使われているが、あのシンボル的な使われ方はしておらず、中身のあんに練り込んでいる。写真は台湾の崎陽軒のシウマイ


崎陽軒の「昔ながらのシウマイ」。グリンピースは使われているが、あのシンボル的な使われ方はしておらず、中身のあんに練り込んでいる。写真は台湾の崎陽軒のシウマイ

崎陽軒には乗っている、と言うかたも少なくありませんが、実は半分正解。「昔ながらのシウマイ」は、グリンピースは使われていますが、乗せているのではなく、中の具に練り込んであるのです。

見方を変えれば、グリンピースが乗っているシュウマイを食べること自体、ラッキーなこと。グリンピースが苦手なかたも、四葉のクローバーに出会うような感覚で捉えれば、幸せを実感できるのでは?

ちなみに、そのラッキーに遭遇するヒントをひとつ。シュウマイにグリンピースが乗っている確率が高いのは、町中華のシュウマイ。特に、老舗系町中華での遭遇率は高いです。

ではなぜ、グリンピースはシュウマイのシンボル的アイコンとなったのか? その理由は諸論あるものの、現時点で最も有力な説は、戦後の冷凍食品の全国的普及による影響です。

1950年代、全国の学校の学校給食に、冷凍食品が用いられ始めます。その食品を作ったメーカーのひとつ、日本冷蔵(現ニチレイ)は、「冷凍食品五大品目」と言われるエビフライやハンバーグ、餃子、コロッケなどと共に、シュウマイをメニューに入れ、そのシュウマイにグリンピースを乗せたと言われています。

グリンピースが乗ったシュウマイが全国の学校で給食として食べられ、子どもたちはシュウマイに乗ったグリンピースの記憶が残り、彼らが成長するとともに、シュウマイ=グリンピース=シンボルというイメージにつながったというわけです。

ではなぜ、同社はグリンピースを乗せたのか? それは、嘘のような本当の話ですが......ショートケーキのイチゴに見立てた、ということを公式見解としています。

今ではピンとこない話ですが、当時は今ほど甘いモノを気軽に食べることが出来ず、美味しいモノ=甘いモノ、という意識が強かったと言います。特にショートケーキなどの洋菓子は、子どもたちの憧れであり、冷凍食品メーカーとしても、ぜひ学校給食の中で提供したかったそうです。

今の冷凍技術では可能なようですが、当時はショートケーキの給食配布は難しく、お蔵入りとなりました。ですが......開発者は子どもたちに甘いモノを提供する夢を諦めず、既にメニュー化が決まっていたシュウマイにその思いを託し、グリンピースを乗せたわけです。

グリンピースを選んだ理由は、その当時、輸入グリンピースが出始め、それまでの在来種の味わいとは異なり甘くやわらかい食感だったので、それをシュウマイに乗せればショートケーキのイチゴの代わりを提供できる!と思ったようです。

と、書いている私も半信半疑ですが、年月が経ちすぎてしまい、当時の関係者に確認も取れない状態らしく、こうした「シュウマイ伝説」が今日にも生きているのです。

文・写真/シュウマイ潤

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