東海道でも東北でも山陽でもなく…新幹線で初めての自動運転が「上越新幹線」だった“納得の理由”とは

 2024年9月10日、JR東日本は上越新幹線の「ドライバレス運転」と「無人運転」の導入スケジュールを発表した。2021年にE7系車両を使って、新潟駅~新潟新幹線車両センターの回送列車で自動運転の試験を実施しており、2030年までに東京駅~新潟駅間の「ドライバレス運転」を目指すと発表していた。

【写真】JR東日本は新幹線の自動運転をここまで綿密に計画している。「乗った新幹線が無人だった」という日も遠くないかも?

 北陸新幹線と上越新幹線で運行されているE7系電車(写真AC)

「自動運転」の導入が上越新幹線だった理由は

 ドライバレス運転は「運転士が乗務しない」運転という意味で、「車掌を含めて乗務員がゼロ」の無人運転とは違う。

 たとえば、舞浜駅と東京ディズニーリゾートを結ぶモノレール「ディズニーリゾートライン」は案内係が乗務するから「ドライバレス運転」だ。新交通ゆりかもめは乗務員がいないから「無人運転」となる。

 簡単に整理すると次の通り。

「半自動運転」……運転士が乗務するけれども、発車ボタンを押すだけで、次の駅の停止まで自動化。国土交通省が分類する鉄道の自動化レベル、GOA2。

 

「ドライバレス運転」……運転士も車掌も乗務しない。乗客案内係員が乗務する。GOA3。

 

「無人運転」……乗務員が一切不在。GOA4。

 JR東日本は新幹線で段階的に「自動運転」と「ドライバレス運転」を導入する。ただし、今すぐにではない。自動でダイヤ通りに列車を運行する装置や、異常を自動で検知する装置などの研究開発を進め、地上の設備や車両側の改造をした上で段階的に導入する。

 第1段階は2028年度実施目標だ。上越新幹線の長岡駅~新潟駅~新潟新幹線車両センター間で「自動運転」を実施する。つまり運転士が乗務し、発車ボタンを押すほか、異常時の非常ブレーキ操作を行う。

 この区間が選ばれた理由は明かされていないけれども、いくつか要素は考えられる。

「JR東日本の中でも列車の運行本数が少ない」、「車両基地となる新潟車両センターは営業線の延長にあり、本線の途中から分岐していない」、「実施区間と新潟車両センターが近いため、車両側の調査やメンテナンスを実施しやすい」などの要素は検討されていたはずだ。

 東京側は上越新幹線、北陸新幹線、東北新幹線の各方面から新幹線が合流して過密状態になるため、万が一自動運転システムに不具合があった場合にすべての路線に影響してしまう。

 東北新幹線の新青森駅、北陸新幹線の上越妙高駅は終着駅ではなく、北海道新幹線や北陸新幹線へ直通するから、不具合があるとJR北海道やJR西日本に迷惑をかけてしまう。そもそも車両の運用が他社と共通だから、貴重な改造車両が他社に行ってしまうと試験ができない。

 上越新幹線は、それらの問題をクリアしているのだ。

新幹線試験車両「ALFA-X」でも自動運転のテストが予定

 上記区間のうち、新潟駅~新潟新幹線車両センター間で「無人運転」を実施する第2段階は、2029年度に実施を目指す。車両基地から入出庫する回送列車だから、乗客を不安がらせることなく、通常のダイヤに組み込んで経験を積める。

 ここで十分な実績を積んだのち、次の段階として上越新幹線の東京駅~長岡駅間で「自動運転」を実施する。これで上越新幹線の全列車が自動運転となる。2030年代中頃には上越新幹線全体が「ドライバレス運転」になり、本線上でも乗客を載せない回送列車は「無人運転」とする。

 将来は北陸新幹線や東北新幹線も自動運転の導入を目指すことになる。JR西日本も北陸新幹線の自動運転について技術開発に取り組んでおり、2023年5月9日にJR東日本とJR西日本は相互の技術協力を発表している。

 JR北海道の北海道新幹線はJR東日本の技術開発に追随する形で導入されるだろう。次世代新幹線車両開発のために製造された新幹線試験車両「ALFA-X(アルファエックス)」で自動運転試験を盛り込んでいる。

新幹線の運転士は「数字を合わせるだけ」? 自動運転の導入で注目が集まる超高度な“運転士のワザ”と、自動運転の乗り心地のリアル〉へ続く

(杉山 淳一)

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