糖質制限すれば必しもず痩せるわけではない…人間が太るかどうかを決めるたった1つの要素

脂肪は「食べている時間が、食べていない時間より長くなると蓄積されるもの」肥満と糖尿が心配な人こそ知るべき「インスリン」の真実〉から続く

膵臓から出るインスリンというホルモンが十分に働かず、血液中のブドウ糖(血糖)が増えてしまう糖尿病。この病気の治療や改善においてカギを握るインスリンが、肥満を招いてしまうメカニズムとは? 全米シリーズ100万部、医学界の定説を覆したと評される『糖脂肪』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けする。

体重は「血中のインスリン量」しだいで変わっていく

血糖値を下げるために、1型糖尿病の患者にも2型糖尿病の患者にもインスリンの投与が行われている。

インスリン治療の副作用で体重が増えてしまうことは、インスリン治療をしている患者も、インスリンを処方している医者も、十分に知っている。

これは、「高インスリン血症」つまり血中のインスリン値が高い状態にあると体重が増えるということの明らかなエビデンスといえる。

ほかにも、このことを裏づけるエビデンスがある。

「インスリノーマ」というのは膵臓にできる希少な良性腫瘍で、つねに多量のインスリンを分泌してしまう疾患だ。患者には低血糖の症状があり体重も増加しつづける。このことからもインスリンの影響がみてとれる。手術で腫瘍を取り除くと、体重が減る。

また、「スルホニルウレア」(経口血糖降下薬)は糖尿病の治療薬で、インスリンの分泌を促す薬剤だ。インスリンの分泌が促されるため、体重が増えるという副作用がある。
 

これに対して、「チアゾリジンジオン」系の薬剤は2型糖尿病の治療に使われ、インスリン値は上げないがインスリンの効果を上げる。結果はどうなるかって? 血糖値は下がるが、体重は増える。

だが、糖尿病の治療をすると必ず体重が増えるというわけではない。

現在、2型糖尿病の治療に世界中で最も広く使われているのは「メトホルミン」という薬剤だ。この薬剤は、インスリンの量を増やすのではなく、肝臓がグルコースを生成(糖新生)するのを阻害することで血糖値を下げる薬剤だ。

この薬剤はインスリンの量を増やすことなく効果的に2型糖尿病の治療を行うことができるもので、体重が増えることはない。

インスリン値というのは高すぎると体重が増え、低すぎると体重が減る。

治療前の1型糖尿病患者は病的なまでにインスリン値が低く、どれだけ多くのカロリーを摂取しようと体重が増えない。
 

通常の量のインスリンがないと食物エネルギーをうまく使ったり蓄えたりすることができないので、治療をしないで放置しておくと、患者は衰弱して死んでしまう。インスリンを投与することで、こうした患者は再び体重を増やすことができるようになる。

インスリンの量が増えると体重が増える。インスリンの量が減ると体重が減る。

これは単なる相関関係ではなく、インスリンこそが体重を決定する要素であるということだ。体内で分泌されるホルモン、特にインスリンが、私たちの体重や体脂肪の量を最終的に決めている。

肥満になるのはホルモンのバランスが悪いからである。カロリーのバランスが悪いからではない。

160年近く前に行われていた「低炭水化物ダイエット」

「高インスリン血症」は肥満を招く。

これはとても大切なポイントで、つまりは肥満を解消しようと思ったら、インスリン値を低くすることが重要ということになる。

高度に精製され、加工された炭水化物──砂糖、小麦粉、パン、パスタ、マフィン、ドーナツ、米、ジャガイモなど──は血糖値とインスリン値を上げることでよく知られている。こうした高度に精製された炭水化物が高インスリン血症の主な原因なのだとしたら、体重が増える主な原因もそれだといえるだろう。
 

この肥満理論は「炭水化物-インスリン仮説」として知られている。「アトキンス・ダイエット」に代表されるような低炭水化物ダイエットの基本的な理論はここからきている。〝太るもと〟である炭水化物を食べなければ、インスリン値を低く保つことができ、体重が増えるのを防ぐことができる。

初めて低炭水化物ダイエットが実践されたのは、はるか昔の19世紀半ばのことだ。
 

1863年、イギリスで葬儀店を営んでいたウィリアム・バンティングが、世界初のダイエット本ともいわれる『市民に宛てた肥満についての手紙』という小冊子を発行した91・6キロだった彼は、体重を減らそうと食べる量を減らして運動量を増やしたがうまくいかなかった。今日の世界でダイエットに励んでいる人たちと同じように、彼も失敗したのだ。

そこで、外科医のアドバイスもあり、彼は新しい方法を試してみることにした。それまで彼がよく食べていたパン、牛乳、ビール、甘いもの、ジャガイモを厳しく制限してみたところ、彼の体重は減り、減った体重も維持することができたのだ。

20世紀になると、精製された炭水化物の量を減らした食事療法は、肥満の治療として標準的なものになった。

 「糖質」だけが原因ではない

低炭水化物ダイエットは広く成功しているものの、炭水化物――インスリン仮説はまだ不完全だといえる。たしかに精製された炭水化物は高インスリン血症の主な原因ではあるが、それだけが原因ではないからだ。

ほかにも大きな影響を与えるものがある。

そのなかでも特に重要なのが「インスリン抵抗性」だ。

インスリンとは細胞の中にグルコースを取りこむための扉を開ける鍵のようなものだ。だが、インスリン抵抗性のある状態になると、通常の量のインスリンでは扉を開けられなくなり、グルコースを細胞の中に取りこむことができなくなるため、血中にグルコースがたまってしまう。

すると、体は抵抗性を克服してなんとかグルコースを細胞の中に取りこもうと、インスリンの分泌量をさらに増やす。その結果、血糖値は通常の値に戻るが、つねに高インスリン血症の状態となってしまうわけだ。

私たちがインスリン抵抗性を問題視するのは、それに端を発した「高インスリン血症」が体重の増加を招くからだ。


文/ジェイソン・ファン 写真/shutterstock

糖脂肪

ジェイソン・ファン

糖脂肪

2024/4/5
1,870円(税込)
416ページ
ISBN: 978-4763141279

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「1か月で腎臓へのダメージを表す数値が3分の2減少。ヘモグロビンA1Cは5・4%に」
「7月Hba1c7.8だったのがファスティング6回で9月Hba1c6.3に低下。体重は、7.3キロ減り内臓脂肪もタニタの体組成計でレベル13から11まで下がった」(カスタマーレビューより)

【目次より】
日本のみなさんへ、特別序文
1章 「甘い尿」のパンデミック
――人類史上、考えられないほどの広がり
4章 「摂取カロリー減」でもやせない
――カロリー神話が生んだ勘違い
6章 インスリン・パラドックス
――「血糖値を下げるインスリン」が出すぎて糖尿病
8章 フルクトースは恐ろしい
――「果糖だから安心」は誤り
11章 製薬会社の思惑
――「ビッグビジネス」と化した糖尿病市場
12章 カロリー制限? 運動?
――どちらも効果はいまひとつ
14章 低炭水化物療法
――薬を飲むよりはるかにいい
15章 間欠的ファスティング
――胃を「空っぽ」にする時間を作る ほか

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