トム・ブラウン布川ひろきのエッセイ連載「おもしろおかしくとんかつ駅伝」/第9回「竹原ピストル」

現在のゆとりとの板挟みに耐えれなくなった。
あの頃の曲をあの頃の情熱で歌えなくなってしまった。

竹原ピストルさんが十数年前にやっていたグループ野狐禅の解散理由です。
野狐禅がすごい好きだった全く誰にも知られていない芸人の僕は衝撃的でした。

「ゆとりも少し出たらより楽に唄えるもんじゃないのかなぁ。」
あまり聞いたことのない解散理由で当時そんな風に思っていました。

野狐禅の曲を初めて聴いたのは「カモメ」という曲で
聴いたことのない熱い歌詞と情熱のある歌声、それとは逆の優しいメロディに一瞬でもってかれました。

野狐禅の中でも好きな曲で「東京紅葉」という曲があります。

「気でも違ったか己に往復ビンタ 秋でもないのに頬に赤い紅葉。」
という歌詞が好きすぎて札幌でのコンビニの夜勤バイト中に何度も何度も聴きました。
でも解散後に聴いた後に確かに思いました。
この熱量をご飯が食べれるようになってからやるのはなかなか大変なのだろう。
そりゃああの頃と同じ情熱で唄うのは難しい。
合ってるかはわからないけども尾崎豊が自由を手にした時に歌詞を書くことに苦悩したのと同じようなことなのだろうか。

ピストルさんはその後ソロで再スタートを切るのですがやはり熱い歌詞と情熱のある歌声で僕の大好きなままでした。
僕はもうお笑いを辞めてしまいそうな状態の東京でのコンビニ夜勤中に寒いジュース補充の冷蔵庫の中で数時間ぶっ続けで熱い歌を聴いて寒さとお笑いを続ける気持ちを凌いでいました。

そんな風に聴いてる時に一つ思ったことがあります。

「このままやっていたら売れた時ピストルさんはまた野狐禅が解散した時と同じように情熱を持って唄えなくなって苦悩するのではないだろうか。」

野狐禅の頃と変わらず、むしろそれ以上のパワーでやっているのでさらに苦しいことになるのではないか。辞めてしまうのではないか。そうなったらピストルさん本人も大変だし僕も力をもらえる曲を聴けなくなって嫌だなぁと思っていました。

しかし、ソロデビューからもう約15年たちますが今も熱い歌詞情熱のある歌声は健在です。
もちろんご飯も食べれているでしょう。
じゃあ何でなんだろう?

と、思った時に一つのピストルさんが言った記事を見つけました。その記事のリンクを載せるので読んでみてください。

このインタビューでピストルさんは「自分は人前で歌うことが好きなのであって、歌う内容なんてどうでもいい」と話していました。

ハッとさせられるような言葉です。
だからこんなに熱い歌をずっとできるのだと。
恐らく全国のライブハウスでドサ回りをして気づいたこと。コツコツやって気が付いたら気付いたことなのかなと思います。
そして、どの仕事にもけっこう通ずるものなのではないのかなと思いました。
もちろんお笑いにも通ずると思います。

これを知りピストルさんをずっと好きなのだけどもさらに好きになりました。

よしっ!
もしも15年後くらいに僕らの漫才のキャラクター「中島MAX」を見たいという気持ちがなくなってしまった時同じ考え方でやらせてもらぉーーっと!

ジャンルで探す