ばね指や手のしびれ、痛みは、加齢や使いすぎではなく、更年期症状〈メノポハンド〉かも。放置せず受診も

イラスト:小林マキ

更年期以降の手指の痛みやしびれは、加齢のほかに、掃除・洗濯といった家事、縫い物・編み物などの手仕事による使いすぎが原因とされてきました。ところが、最近の研究で、女性ホルモンとの関係が明らかに。最新の対策法をお伝えします(イラスト/小林マキ 取材・文・構成/岩田正恵《インパクト》 デザイン/米山和子《プッシュ》)

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使いすぎが原因とは言い切れない

朝、起きると手指がしびれている。指の関節をスムーズに曲げ伸ばしできない。ボタン掛けや瓶のふたを開けるといった動作がスムーズにできなくなった……。多くの女性がこうした症状に悩んでいます。

「かつては、こうした症状は加齢や手指の使いすぎが主な原因とされてきました。しかし、利き手ではないほうの手にも発症します。また、女性ホルモンの一つであるエストロゲンの分泌量の変化との関連を指摘する説もあったため、改めて私たちのグループで手の変形関節症の疫学調査を行ったところ、エストロゲンが急減する更年期との関連が深いことが明らかになりました」と説明するのは、手外科専門医の下江隆司先生です。

エストロゲンには、関節の動きをサポートする働きがあり、減少すると関節が腫れて、痛みやしびれが起こったり、動かしにくくなったりするそう。

「特に手指の関節は小さく、細かく分かれているため、エストロゲン減少の影響が大きく、症状が表れやすいと考えられます。日本手外科学会では、更年期(メノポーズ)に起こる手指の不調を『メノポハンド』と名づけ、2024年4月から、症状や対策について広く周知する活動に取り組み始めたところです」(下江先生。以下同)

メノポハンド、3つのタイプ

メノポハンドには、大きく分けて三つのタイプがあります。

一つ目は、「腱鞘炎」。指が曲がったままの状態で動かせなくなり、無理に動かそうとするとバチンとばねをはじいたように動く“ばね指”や、手首の親指側が腫れて痛む“ドケルバン病”などがこれに当たります。

二つ目は、「末梢神経障害」。“手根管症候群”と呼ばれる症状で、親指から薬指の親指側半分にかけて強いしびれを感じます。

そして三つ目は、手指の関節が腫れたり変形したりする「変形性関節症」。第一関節に症状が出ると “へバーデン結節”、第二関節で起こると “ブシャール結節”と呼ばれます。

「痛みやしびれは、更年期症状の収束とともに治まっていくことがほとんど。しかし、動かしにくいからと、関節を曲げた状態のまま放置すると固まってしまい、ボタン掛けが難しくなるなど、生活に支障が出るようになります。違和感を抱いた時点で対策を講じることが大切です」

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