要介護の原因の1つが「フレイル」。「平均寿命」と「健康寿命」の差は、女性で12・06歳も

『養生学』イラスト:小林マキ

イラスト:小林マキ

加齢により心身が衰えた状態を「フレイル」といいます。いくつになっても元気でいきいきと過ごすには、フレイルを少しでも進行させないことが大切。まずは、食事の改善から始めてみませんか?(イラスト/小林マキ 取材・文・構成/葛西由恵《インパクト》 デザイン/米山和子《プッシュ》)

* * * * * * *

要介護状態になる原因「フレイル」

日本人の「平均寿命」と「健康寿命」の差は、男性で8・73歳、女性で12・06歳。この数字は、人生終盤のおよそ10年は要介護生活になる可能性が高いことを示しています。要介護の状態になる大きな原因の1つが「フレイル」です。

「歩くスピードが落ちる、握力が低下する、滑舌が悪くなる、体重が減少するなどは、フレイルの典型的な症状といえます。肉体的な衰えだけでなく、疲れやすくなる、何をするのも面倒だと感じる、といった気力の低下をともなうのもフレイルの特徴。その状態が進むと、外出や人と会うことを避けるようになり、認知症が悪化してしまうケースも」と話すのは、栗原クリニック東京・日本橋院長の栗原毅先生。

多くの場合、60代からその兆候が出はじめ、70代、80代と高齢になるほど進行していきます。予防には、「運動で筋力をつける」「低栄養にならない」「外出や人との交流をする」ことが大切です。

たんぱく質を取り入れた食事を

栗原先生が特に重要だと考えるのが、筋肉の減少を食い止めること。そのためにはたんぱく質不足に注意して、と話します。

「加齢にともない筋肉の減少スピードが加速するにもかかわらず、食べる量は減っていく。つまり、自然にまかせていては、筋肉の減少を食い止められないのです。60歳を過ぎたら、意識的にたんぱく質を取り入れた食事に切り替えましょう」(栗原先生。以下同)

厚生労働省が推奨する一日の食事の三大栄養素の配分は、たんぱく質が15~20%、脂質20~30%、炭水化物50~65%ですが、栗原先生は、さらにたんぱく質を増やしたほうがよい、とアドバイスします。「たんぱく質30%、脂質20%、炭水化物50%ぐらいが理想的。一日の必要量は、体重60kgの人ならたんぱく質60gを目安にしましょう」

ジャンルで探す