本郷和人「無礼講の大宴会」でアヤシイ関係が露呈した道長とまひろ。一方、史実では禁止令を出すほど<宴会嫌い>だった一条天皇に対して道長は…

(写真:stock.adobe.com)

大石静さんが脚本を手掛け、『源氏物語』の作者・紫式部(演:吉高由里子さん)の生涯を描くNHK大河ドラマ『光る君へ』(総合、日曜午後8時ほか)。9月22日の第36話「待ち望まれた日」では、一条天皇(塩野瑛久さん)の中宮・彰子(見上愛さん)がついに懐妊。宮中が色めきだつ中、まひろは彰子から、天皇に対する胸の内を明かされて――といった話が放送されました。一方、歴史研究者で東大史料編纂所教授・本郷和人先生が気になるシーンを解説するのが本連載。今回は「平安時代の宴会」について。この連載を読めばドラマがさらに楽しくなること間違いなし!

次回の『光る君へ』あらすじ。中宮・彰子の出産にまひろと道長は喜びを分かち合うが、二人の親密さは宮中の噂に…皇位継承を巡る不穏な気配の中、内裏では事件が<ネタバレあり>

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「無礼講」と宴を開催した道長だが…

さて前回、中宮彰子が敦成親王を出産しました。さらに誕生50日目を無事に迎えられたことから、お食い初めの祝いが開催されることに。

その晩に開催された宴にて、道長は集まった貴族たちへ「無礼講ゆえ、みなみな、心ゆくまで楽しんでくれ。いくらでも酔ってくれ」と伝えます。

そして貴族たちが飲んだり、女房へちょっかいを出したりするなか、道長はまひろに歌を詠むように命じます。

対して道長も息ピッタリの様子で歌を詠んだことから、二人に何かあるのでは、と周囲に感じさせたところでドラマは幕を閉じました。

しかも歌を詠みあったのはいろいろと鋭い正妻・倫子の前。

はたしてこの先、二人は無事でいられるのでしょうか…。

平安貴族は「焼尾荒鎮」が大好きだった

さて、話は変わって「焼尾荒鎮(しょうびこうちん)」という言葉をご存じでしょうか。

本郷和人先生が監修を務める大人気の平安クライム・サスペンス!『応天の門』(作:灰原薬/新潮社)

四字熟語というわけではなく、焼尾でも荒鎮でも焼尾荒鎮でも意味は同じ。「宴会」のことを指します。

ただしお行儀の良い食事会というより、飲めや歌えの大宴会を指すよう。

おじさん世代が大好きだった、杯盤狼藉というか、アルハラ系のやつですね。そして平安貴族たちはこれが大好きだったようです。

宴会嫌いの一条天皇

一方、ドラマ内で塩野瑛久さんが演じている一条天皇。

ドラマの印象もそうですが、実際に物静かなタイプで、こういう宴会が大嫌いだった。それで「焼尾荒鎮を控えるように」と、当時命令をしています。

さらには貴族二人の名まで出して、乱れ方がひどかったのかな、罰を与えようともしました。

これに対し、いかにも宴会好きだったと思われる藤原道長はどうしたか?

「はい、調査いたします」と帝に答えながら、事件のもみ消しを画策しています。

いつの時代も似たようなことはありますよね…。

イスとテーブルか、板敷に直座りか

あらためて当時の宴会というと、どんな感じで開催されていたのでしょうか。

気になるのは、たとえば「椅子とテーブルでの開催」だったのか、それとも「板敷きに直に座っていたか」というところでしょうか?

なお道長の時代にもなると、後者が正解となります。なので、ドラマでもそう描かれていたように、板敷きにあぐら、地位の高い人にはクッションとして畳、という感じだと思われます。

ただ、菅原道真の頃までちょっと遡れば「椅子とテーブル」かなあ。

この頃、宴会の形式はちょうど前者から後者への移行期だった、というのが正しいようです。

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