歯茎の下がりや食いしばり、ドライマウスで口腔トラブルが。虫歯や歯周病が全身に悪影響を与える恐れも

イラスト:小林マキ

6月4~10日は「歯と口の健康週間」でした。年を重ねてもしっかり食べていきいきとした毎日を送るためには、歯と口の健康維持が不可欠です。ところが、日頃のお手入れは歯磨きだけ、という人がまだ多いよう。歯垢対策やマッサージなど、習慣にしたいケアを紹介します(イラスト/小林マキ 取材・文・構成/岩田正恵《インパクト》 デザイン/米山和子《プッシュ》)

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歯ぐきが下がって露出した根元が虫歯に

厚生労働省の「令和4年歯科疾患実態調査」によると、毎日2回以上歯を磨く人が以前より増えています。人生100年時代、歯を大切にしようという意識が社会に浸透してきている証といえるでしょう。

「それに伴って、高齢になっても歯が多く保たれている人が増えています。とてもよいことですが、その歯がトラブルを抱えているケースが多いのです。まず気をつけたいのが、歯の根元の虫歯。加齢によって歯ぐきが下がってくると、歯の根元がむき出しになります。根元の組織は軟らかく抵抗力も弱いため、虫歯の進行も速い。根元をぐるりと囲む環状虫歯ができると、治療がより難しくなり、最悪の場合、抜くしかないという事態にもなりかねません。患部が小さいうちにしっかり治療しておくことが肝心です」と話すのは、歯科医の田沼敦子先生です。

加齢によって唾液の量が減るドライマウスも、歯に悪影響を及ぼす、と田沼先生。

「唾液には口内の細菌の増殖を抑えたり、酸性の飲食物で溶けた歯の表面を修復したりする働きがあります。ところが、ドライマウスになると、溶けた歯の表面が修復されず、歯が細く薄くなるになりやすくなるのです。進行すると、知覚過敏を起こしたり、しゃべりづらくなったり、味覚がわからなくなったりします」(田沼先生。以下同)

虫歯や歯周病が悪化で全身に悪影響を与える恐れも

歯ぎしりや食いしばりといった長年のクセが歯にダメージを与えていることも多いそう。

「歯ぎしりすると、自分の体重ほどの力が毎日のように歯にかかることから、歯ぐきの組織に炎症が起きて、歯周病が進行しやすくなります。また、歯のすり減りや欠け・割れなどにより噛み合わせが悪くなり、あごの痛みや肩こり、腰痛を招くこともあるのです」

こうしたさまざまなトラブルが重なって、中高年以降の口腔環境は悪化していきます。

「虫歯や歯周病が悪化すると、虫歯菌や歯周病菌が炎症を起こした歯ぐきから血管に入り、全身に悪影響を与える恐れがある。動脈硬化や心臓病などの原因になりますし、肺に入ると高齢者の死亡率が高い誤嚥性肺炎を引き起こすこともわかっています」

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