衆院選「職員手製のポスターです!」短期決戦で選管にしわ寄せ…投票所入場券の印刷間に合わず

 政権発足から26日後の投開票という戦後最短の日程で行われる今回の衆院選(15日公示、27日投開票)。準備期間の短さから、十分な普及啓発活動ができないなど、各地の選挙管理委員会にしわ寄せが広がっている。予定していたイベントの中止や延期も相次ぐ。

県庁のプリンターで印刷

 「わけあって、職員手製のポスターです!」。青森県選管の選挙啓発ポスターには、小さな文字でこう書かれている。

青森県選管の職員が手作りした啓発ポスター。「職員手製」と小さく断り書きが入っている(10日、青森県庁で)

 若者の関心を集めようと、国政選のポスターはこれまでご当地アイドルらを起用し、業者に作成を委託していた。だが、今回は撮影や印刷が間に合わないと判断。選管職員2人が、明るい選挙のイメージキャラクター「めいすいくん」を活用し、資料作成ソフトで自作した。印刷も県庁のプリンターで行った。

 「今までにない対応だが、できることをやりたい」。県選管の高橋昌広総括主幹はそう語り、「農作業などで忙しい時期だと思うが、ぜひ投票に行ってほしい」と呼びかけた。

 同県むつ市選管は、ワゴン車に投票箱を載せ、市内の高校を巡回する「移動期日前投票所」の開設を諦めざるを得なかった。

 若い世代に投票を促すため、2019年の市議選で導入し、21年の前回衆院選でも3校に派遣した。今回、日程が決まるまでは短大と大学も含めた5校への派遣を計画していたが、学校との日程調整など準備が間に合わなくなった。市選管の野坂武史事務局長は、「あまりにも短期間で残念だ」と肩を落とした。

開票所を変更

 選挙が行事の多いシーズンと重なったことによる混乱も生じている。

 兵庫3区に含まれる神戸市垂水区は長年、開票所として市立星陵台中学校の体育館を使ってきたが、中学生のバスケットボール大会の会場として押さえられていたため断念した。区内の体育館を探し回ったがどこも予約済みで、隣接する兵庫4区にある神戸市外国語大(神戸市西区)を確保した。

 垂水区によると、別の選挙区での開票作業は異例だ。担当者は「使い慣れた会場の方が作業はスムーズだったかもしれないが、場所を確保できて何より」と語った。

 一方、東京都港区では、区立障害保健福祉センターを投票所として使うため、27日にセンターで開催予定だった「ヒューマンぷらざまつり」が延期されることになった。

 障害への理解を広める交流イベントで、例年1000人ほどが参加していた。区は、規模を縮小して衆院選との同時開催も模索したが、イベントに参加する車いす利用者や視覚障害者らが安全に移動できる動線の確保が難しいと判断した。

 すでに完成していたチラシは廃棄し、新たに作り直す。宮本裕介・区障害者福祉課長は「楽しみにしていた人も多くいたと思うが、選挙ではどうしようもない」と残念がった。

 本人確認のため、有権者が投票所に持参する「投票所入場券」の配布が、16日の期日前投票の開始に間に合わないケースも相次ぐ。

投票用紙の記載台を点検する立川市選挙管理委員会の担当者(9日、東京都立川市で)

 東京都立川市では、全戸配布終了が17日になる見込みだ。全国の自治体から印刷業者への発注が集中し、入場券の印刷が間に合わないという。投票用紙の記載台や投票箱を扱う業者にも依頼が殺到しており、市選管は備品の新規購入を見送り、破損箇所などを修復して使うことにした。

 杉並区選管が印刷業者と契約できたのは、解散2日前の7日。有権者に届くのは21日以降になるという。

 入場券がなくても本人確認ができれば投票は可能だ。区選管は、14日に発送予定の広報紙で、入場券なしでも投票できることを知らせることにした。石田幸男事務局長(59)は「郵便局が週末の配達をやめたので、配布が間に合わない自治体が多いはず。入場券の配布が遅れることで期日前投票に行く人が減り、投票率が下がらないか心配だ」と語った。

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