選管バタバタ、掲示板設置ギリギリ「入場券なしで期日前投票可」周知

奈良市は駅に設置する電子掲示板で、衆院選の投票所入場券の発送が遅れることを案内。「入場券がなくても投票できます」と呼びかけている=2024年10月10日、同市西大寺国見町1丁目、富岡万葉撮影

 石破茂首相が打ち出した衆院の早期解散により、衆院選は15日に公示される。選挙事務を担う奈良県内の自治体の選挙管理委員会や県内の業者は「短期決戦」となり、準備に大忙しだ。

 「かなりしんどい状況だ」。生駒市内で選挙ポスターの掲示場の設置を進める建設会社「SUNS」の荻本健志代表(43)は、こう漏らす。

 市内で掲示場を設置するのは270カ所。首相の解散表明を受け、市から委託された同社は、7日から設置を始めた。設置場所が正確か、板が安定しているか、字がかすれていないかなど確認事項も多い。

 公示日前日の14日までには、設置を終える必要があり、作業できるのは1週間。2~3人1班で、3班態勢で市内を駆け巡り、1日に各班25~30カ所に設置する目標だが、場所によって環境も異なり、20カ所程度にとどまることもある。朝から日暮れまで、ノンストップで作業を続ける。荻本さんは「余裕がない。何が何でも選挙までに間に合わせなくてはというプレッシャーがある」と話す。

 県選管や市町村選管も準備を急ぐ。

 県選管では10日、続々と寄せられる事前審査の確認作業に追われていた。事務所に掲げる標札や街頭演説用の旗など選挙に必要な「七つ道具」の確認や、街頭で配る啓発グッズの発注も急ピッチで進めている。担当者は「発注先のみなさんにも汗をかいてもらっている状況」と話した。

 期日前投票が始まる16日までに選挙通知書(投票所入場券)を届けられない自治体も出ている。約30万人の有権者がいる奈良市では、入場券を届けるのが16~22日になる見込みだ。市選管の担当者は「選挙の日程によるところで、印刷の工程を詰めても作成が間に合わなかった」と説明する。

 市は10日、入場券なしでも期日前投票ができるとホームページや市内12駅の電子掲示板で周知を始めた。担当者は「住所や氏名、生年月日を記入すれば投票できるので、身分証も原則はいりません」と呼びかけている。

 予定していた投票所を急きょ変更した自治体もある。宇陀市選管は、投票所として予定していた集会所など28カ所のうち5カ所ですでに、秋祭りなどの催しや個人の予約が入っていた。そこで、市選管職員らが予約者に調整をお願いし、4カ所で投票所として使用できるようになった。ただ、残りの1カ所は行事の予定や場所を変更することができず、投票所を別の集会所に設置することにしたという。

 一方、市長選と市議補選が13日に告示される御所市。期日前投票は市長選・市議補選が14~19日、衆院選は16~26日と期間が一部重なる。市選管は「有権者が混乱しないよう、限られたスペースの中で配置を工夫しないといけない」と頭を悩ます。投票所の職員を増員して対応にあたるという。(仙道洸、富岡万葉、向井光真)

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