露領空侵犯機、中露演習の一環か 相次ぐ侵犯、中国機は九州の自衛隊基地調査の可能性も

ロシア軍の哨戒機による23日の領空侵犯が、中露合同軍事演習の一環だった可能性が浮上した。一方、8月に初めて領空侵犯した中国軍機は九州東部の自衛隊基地を調査していたとの見方がある。中露両国は日本周辺での軍事行動を活発化させており、両軍機の領空侵犯はいずれも日本に対する示威行為とみられる。

「こうした事案が短期間に立て続けに起きていることに強い危機感を有している」

木原稔防衛相は23日の記者会見で、中露両軍の最近の動向に強い懸念を示した。

23日に領空侵犯した露軍哨戒機は碁盤目状に東西南北へ往復を繰り返した。領空侵犯への対処として初めてフレア(火炎)発射を判断した空自機は、無線や機体を揺らしての警告に従わず、領空の外に出ても露機の再侵入が推測され、「より強度の高いレベルでの警告」(空自関係者)を迫られたとみられる。

22~23日に中露の駆逐艦やフリゲートなど艦艇計9隻が宗谷海峡をオホーツク海へ東進し、哨戒機は中国政府の言う「合同パトロール」の一環だった可能性がある。海自OBは「中国艦も哨戒機の動きを把握していた可能性がある」と指摘。斎藤聡海上幕僚長も「何らか関連している可能性はある」との見解を示す。

8月26日には長崎県男女群島沖で中国軍の情報収集機が軍用機として初めて領空を侵犯した。これまで南西方面に現れることはあったが、九州沿岸へ接近するのは珍しい。九州中央部の山岳東側がレーダー覆域に入る可能性があり、ある自衛隊幹部は「九州東部の基地を調べる目的もあったのではないか」と推測する。

この1カ月、中露軍は動きを活発化させてきた。中国海軍の空母「遼寧」が与那国島と西表島の間で初めて領海外側の接続水域に入ったほか、露軍の哨戒機2機が列島を周回した。

なぜ今なのか。今夏は欧州の海空戦力がインド太平洋へ集結した。7月にはフランス、ドイツ、スペインの戦闘機部隊が日本へ飛来。8月下旬にはイタリアの空母「カブール」が寄港し、北大西洋条約機構(NATO)の欧州主要国海軍が参加する合同訓練が行われた。

ウクライナ侵略で欧州各国と敵対する露とインド太平洋への海洋進出を強める中国の思惑は、日本周辺で軍事的存在感を強めることで一致する。「中露二正面に対応できるのか」と会見で質問され、木原防衛相は「北朝鮮の弾道ミサイル対応と合わせて三正面に対応しなければいけない。全力で臨む」と答えた。(市岡豊大)

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