急浮上した解雇規制の見直し 小泉進次郎氏は積極姿勢 求められる労働市場の活性化 自民党総裁選 政策比較(5)

深刻な人手不足が続く中、自民党総裁選で論点に浮上したのが解雇規制の見直しだ。小泉進次郎氏は労働市場の活性化へ向け、大企業に労働者の再就職やリスキリング(学び直し)の支援を義務付けると表明。河野太郎氏は不当解雇に対する金銭補償の導入を提案した。ただ、慎重論も根強く、労働市場を時代に即した形に導くための議論が求められている。

「解雇規制を見直す。人員整理が認められにくい状況を変える」

小泉氏は6日の立候補表明会見でこう述べ、企業が整理解雇を行うために満たす必要のある、裁判で確立された4つの要件(①人員整理の必要性②解雇回避の努力③対象者選定の合理性④解雇手続きの妥当性)の見直しに言及した。

特に、リスキリングや再就職支援を②の「解雇回避努力」の中身に追加することで、過剰な労働力を中小企業やスタートアップ(新興企業)へ円滑に移行させることを目指すのが小泉氏の考えだ。

背景には、労働市場が硬直化し労働力が成長産業へ移動しないことや、正規雇用と非正規雇用の格差が是正されないという問題意識がある。

一方、他の候補者は見直しに懸念を示す。高市早苗氏は13日の共同記者会見で「短い期間の議論で立法して(4要件を)覆すのは容易ではない」と指摘。石破茂氏も「よく精査する」と慎重な姿勢を見せた。

小泉氏はこうした意見を意識してか、13日の会見では「解雇の自由化を言っている人は私も含め誰もいない」と強調するなど発言をトーンダウンさせた。

とはいえ、労働市場の流動化が必要との考えは衆目の一致するところだ。成蹊大の原昌登教授(労働法)は「職業紹介事業や求人メディアなどをサポートし、労働移動を活性化していくことが王道だ」と指摘する。

早稲田大の水町勇一郎教授(労働法)は、解雇回避努力の中にリスキリングや再就職支援などを含めることを政府として明確にすることは「考えられる」と話す。労働市場の動向などを踏まえ「解雇規制の内容を法律で具体的に示すかどうかが、政治的に問われている」と述べた。

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